*11:05JST タキロンCI Research Memo(5):2024年3月期に入っても厳しい事業環境
■業績動向
1. 事業環境
日本経済は、社会経済活動の正常化が進み、内需を中心に緩やかな持ち直しの動きが見られた。一方、エネルギーや原材料の価格上昇、世界的な金融引締め、ウクライナ情勢の長期化や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがリスクとなっており、先行きは依然として不透明な状況が続いている。タキロンシーアイ<4215>の事業環境も、一部の事業で関連業界に改善の兆しは見えてきたものの、2024年3月期に入っても、全体としては依然厳しい事業環境が続いていると言える。
建築資材事業では、新設住宅着工戸数が住宅価格の高騰や物価の上昇などの影響により減少しているが、分譲マンション改修工事は、コロナ禍後の延期案件の着工が落ち着いて想定線の需要で推移しており、マンションストック数も引き続き増加傾向であることから今後も堅調な推移が期待できる。環境資材事業は、肥料や種苗の購入が資材に優先するため、原材料価格などの高止まりによって価格が上昇した農業資材の更新需要が減退している。一方土木関連資材は、依然として工事の中断や延期はあるとはいえ、コロナ禍明けの公共工事の復調が期待できる状況となってきた。高機能材事業は、半導体需要が活況から一転、1年近く世界的な低迷が続いている状況である。ただし、底打ちの兆しが見られるうえ、半導体製造の国内シフトもあって明るい兆しもある。機能フィルム事業は、北南米においてペットボトル・食品向けシュリンクフィルムが物価高の影響で回復が遅れており、安値製品との競合が多い南米での生産から撤退し北米に経営資源を集中して巻き返しを図る。
特に海外事業環境の好転に想定以上の時間
2. 2024年3月期第2四半期の業績動向
2024年3月期第2四半期の業績は、売上高が67,943百万円(前年同期比6.3%減)、営業利益が2,393百万円(同22.5%減)、経常利益が2,588百万円(同22.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益が1,888百万円(同1.4%増)となった。内外とも厳しい事業環境が続くが、特に海外の事業環境の好転に想定以上に時間がかかっているようで、業績の進捗がやや鈍く、公表されていないが同社の期初の社内見通しに対してビハインドした状況だと思われる。なお、特別利益で持合株の解消等による有価証券売却益が発生したため、親会社株主に帰属する四半期純利益のみ増益となった。
厳しい事業環境ながら、期初に策定した単年度経営計画に基づき、定量計画の必達と定性計画の確実な実行に向けて事業活動を推進した。この結果、売上高は、ハウエル管の復調や土木シートの回復によりインフラ事業が好転し、床材も引き続き堅調となった。しかし、シュリンクフィルムの北米市場での低迷、新設住宅着工戸数の減少などによる住設建材の低調や採光建材の不調、半導体市況の回復遅れによる高機能材の伸び悩みなどにより減収となった。利益面では、世界的な金融引き締めや景気低迷の長期化により、北南米子会社の機能フィルム、欧州子会社の建装資材の販売数量が減少、特に機能フィルムは、流通在庫の調整や廉価品との競合が大きく足を引っ張ったもようである。このため、国内でサイネージの収益改善やインフラ事業の黒字化、販管費抑制など業況は好転したものの、営業減益となった。なお、第2四半期業績が社内見通しに対してビハインドした要因は、国内の新設住宅着工戸数の減少や半導体関連需要の回復遅れ、海外子会社の市況回復の遅れによる収益悪化が想定以上だったことにあると思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 事業環境
日本経済は、社会経済活動の正常化が進み、内需を中心に緩やかな持ち直しの動きが見られた。一方、エネルギーや原材料の価格上昇、世界的な金融引締め、ウクライナ情勢の長期化や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがリスクとなっており、先行きは依然として不透明な状況が続いている。タキロンシーアイ<4215>の事業環境も、一部の事業で関連業界に改善の兆しは見えてきたものの、2024年3月期に入っても、全体としては依然厳しい事業環境が続いていると言える。
建築資材事業では、新設住宅着工戸数が住宅価格の高騰や物価の上昇などの影響により減少しているが、分譲マンション改修工事は、コロナ禍後の延期案件の着工が落ち着いて想定線の需要で推移しており、マンションストック数も引き続き増加傾向であることから今後も堅調な推移が期待できる。環境資材事業は、肥料や種苗の購入が資材に優先するため、原材料価格などの高止まりによって価格が上昇した農業資材の更新需要が減退している。一方土木関連資材は、依然として工事の中断や延期はあるとはいえ、コロナ禍明けの公共工事の復調が期待できる状況となってきた。高機能材事業は、半導体需要が活況から一転、1年近く世界的な低迷が続いている状況である。ただし、底打ちの兆しが見られるうえ、半導体製造の国内シフトもあって明るい兆しもある。機能フィルム事業は、北南米においてペットボトル・食品向けシュリンクフィルムが物価高の影響で回復が遅れており、安値製品との競合が多い南米での生産から撤退し北米に経営資源を集中して巻き返しを図る。
特に海外事業環境の好転に想定以上の時間
2. 2024年3月期第2四半期の業績動向
2024年3月期第2四半期の業績は、売上高が67,943百万円(前年同期比6.3%減)、営業利益が2,393百万円(同22.5%減)、経常利益が2,588百万円(同22.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益が1,888百万円(同1.4%増)となった。内外とも厳しい事業環境が続くが、特に海外の事業環境の好転に想定以上に時間がかかっているようで、業績の進捗がやや鈍く、公表されていないが同社の期初の社内見通しに対してビハインドした状況だと思われる。なお、特別利益で持合株の解消等による有価証券売却益が発生したため、親会社株主に帰属する四半期純利益のみ増益となった。
厳しい事業環境ながら、期初に策定した単年度経営計画に基づき、定量計画の必達と定性計画の確実な実行に向けて事業活動を推進した。この結果、売上高は、ハウエル管の復調や土木シートの回復によりインフラ事業が好転し、床材も引き続き堅調となった。しかし、シュリンクフィルムの北米市場での低迷、新設住宅着工戸数の減少などによる住設建材の低調や採光建材の不調、半導体市況の回復遅れによる高機能材の伸び悩みなどにより減収となった。利益面では、世界的な金融引き締めや景気低迷の長期化により、北南米子会社の機能フィルム、欧州子会社の建装資材の販売数量が減少、特に機能フィルムは、流通在庫の調整や廉価品との競合が大きく足を引っ張ったもようである。このため、国内でサイネージの収益改善やインフラ事業の黒字化、販管費抑制など業況は好転したものの、営業減益となった。なお、第2四半期業績が社内見通しに対してビハインドした要因は、国内の新設住宅着工戸数の減少や半導体関連需要の回復遅れ、海外子会社の市況回復の遅れによる収益悪化が想定以上だったことにあると思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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