サンマルクHD Research Memo(1):2024年3月期第2四半期は、4期ぶりの営業黒字を達成

配信元:フィスコ
投稿:2023/12/25 17:31
*17:31JST サンマルクHD Research Memo(1):2024年3月期第2四半期は、4期ぶりの営業黒字を達成 ■要約

サンマルクホールディングス<3395>は、創業来「私たちはお客様にとって最高のひとときを創造します」を経営理念に掲げ、「ベーカリーレストラン・サンマルク」「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」等の運営及び各種業態開発を行う大手外食チェーンである。1989年に岡山県で創業し、高級レストランの雰囲気でコース料理と焼き立てパンを味わえる業態のチェーン展開に成功した。1999年にはセルフサービス型カフェ「サンマルクカフェ」を開発し、同社最大の店舗数に成長させる。その後も新業態を次々に自社開発し、現在では20ブランド以上、全国に774店舗(直営750店舗、FC24店舗)を展開するまでに成長した。創業来、セントラルキッチンを持たずに店内で調理を行うことや、パンはお店で焼き立てを出すこと、直営店を中心に展開することなどにこだわりを持ち、同社の強みの源泉となっている。2006年3月には持株会社体制に完全移行し、現在では連結子会社4社、非連結子会社3社で構成される企業グループとなっている。2003年3月には東証一部に昇格、2022年4月にはプライム市場に移行した。

1. 業績動向
2024年3月期第2四半期の売上高は31,497百万円(前年同期比14.9%増)、営業利益948百万円(前期は495百万円の損失)、経常利益1,068百万円(同49.4%増)、親会社に帰属する四半期純利益518百万円(同32.0%増)と売上・各利益ともに業績の回復が顕著になった。売上高に関しては、既存店売上の回復が本格化しており、店舗当たりの売上高はコロナ前の約98%水準まで回復した。レストラン事業の売上高が前年同期比で16.6%増、喫茶事業で同12.6%増となっており、相対的に回復が遅れていた喫茶事業も勢いが戻ってきた。外部環境の改善とともに、既存業態及び派生業態のブラッシュアップ、店舗改装を含むメニューの見直しを実施したことが既存店売上の向上に寄与した。原材料・エネルギー価格の高騰の影響で、売上総利益率では同1.2ポイント低下した。一方で、コストコントロールの実施や一部回復の遅れている不採算店舗の閉店の実施等により販管費率は同6.0ポイント低下(改善)した。結果として収益性が大幅に改善し、営業利益額で前年同期から1,443百万円増と急回復し、4期ぶりの営業黒字を達成した。なお、特別損失を355百万円計上しており、結果として四半期純利益は518百万円となった。特別損失の要因は、主に不採算店舗ならびに閉店の意思決定を行った店舗の減損処理(16店舗、266百万円)である。

2. 業績見通し
2024年3月期通期の売上高は63,000百万円(前期比8.9%増)、営業利益2,000百万円(同734.6%増)、経常利益2,100百万円(同31.5%増)、親会社に帰属する当期純利益700百万円(同68.1%増)と増収増益を予想する。期初予想は売上高59,000百万円、営業利益1,500百万円だったが、上方修正された。売上高予想の上方修正の要因としては、2023年5月から新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に引き下げられたことに伴う経済活動の回復に加え、各業態の既存店売上回復に向けた取り組みが奏功していることが挙げられる。下半期は上半期の既存店売上高が継続する前提で計画された。利益面では、既存店売上の回復及び不採算店舗の閉店による固定費負担の減少、各種コストコントロールを徹底することで、上半期に各利益とも業績予想を大幅に上回る結果となった。下半期においては、各コスト増は長期化し先行き不透明な状況が想定されるものの、引き続き各業態の既存店売上回復に向けた取り組みや不採算店への対応を行う。なお、売上原価率は通期で0.8ポイント上昇(上半期は1.2ポイント上昇)する想定で計画された。下半期単独での売上高前期比予想が3.6%増であるのに対し、2023年10月単独で全店売上高前期比6.5%増、既存店売上高前期比10.3%増と好調に推移しており、弊社では売上高で計画を上回ってくると想定している。営業利益面でも、増収効果に加え、下半期も不採算店舗の閉店等による収益性の回復が見込まれるため、利益計画を超えてくる可能性が高いと考えている。

3. 成長戦略・トピック
同社は2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を2021年5月に発表し推進してきた。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の最中の計画であり、外部環境の変化も激しかったため2年半経過した現在では、経営目標数値や出退店の計画は現実的ではなくなっている。一方で当時整理をした経営課題やその対応策に関しては現在でも進めているものが多く、同社の基本戦略がわかる。経営課題としては、(1)出退店精度の低下、(2)店舗あたり売上の低下(ニアリーイコール慢性的な既存店売上前年比100%割れ)、(3)生産性の低下、(4)業態の新陳代謝の不存在、が挙げられた。コロナ禍で外部環境が激変した中で、より厳しく自社の事業モデルを見直す内容になっている。「(1)出退店精度の低下」に関しては、合理的な基準による出退店が可能となっており、2024年3月期上期の収益性の回復の一因となった。「(2)店舗あたり売上の低下」に関しては、マーケティングやQSC(クオリティ・サービス・クレンリネス)の徹底や改装などの様々な努力により2019年3月期比で98%前後まで回復している。「(3)生産性の低下」に関しては、人件費のコントロールやDXの推進がテーマとなるが、継続的な取り組み課題と言えるだろう。「(4)業態の新陳代謝の不存在」に関しては、2022年12月の老舗名店の味を受け継いだ京都の人気喫茶のM&Aや派生業態・実験業態を含め育成中の業態が複数あり、次世代の成長業態の登場に期待が持てる。全般的に経営課題への対応は着実に行われ、その成果が顕在化していると評価できるだろう。

4. 株主優待策
同社は、株主還元策として配当を実施している。経営成績の動向及び配当性向等を総合的に勘案した上で、株主に対し利益成長に応じた安定的な配当を継続しつつ、今後のグループ内における事業拡充による将来の利益貢献を図るため内部留保の充実に努めることを基本方針とする。配当性向の水準として35%を目標としつつ、DOE(純資産配当率)等の要素も加味しながら決定する。2024年3月期は第2四半期末25円、期末25円(予想)の計50円を予想する。さらに、中期的には業績の回復を背景に増配が期待できるだろう。同社の株主優待制度は、グループ店舗で使える優待食事割引カード(20%割引、※すし処函館市場は10%割引)であり、数ある外食業界の優待制度の中でも人気が高い。有効期間中何度でも利用可能な点や同伴者も一括払いにて同じ扱いとなる点なども人気の要因であろう。

■Key Points
・主力のサンマルクカフェ、鎌倉パスタをはじめ魅力ある業態の開発力が強み
・2024年3月期第2四半期は、4期ぶりの営業黒字を達成
既存店売上高はコロナ前の約98%水準まで回復
・自己資本比率62.9%
健全な財務基盤を維持しつつコロナ禍を乗り切る
・2024年3月期は売上高63,000百万円、営業利益2,000百万円を予想(上方修正)
・合理的な基準による出退店が加速、M&Aによる新ブランド・新業態の開発に着手
・2024年3月期は配当金年50円(前期比6円増)を予想
・グループ店舗で使える優待食事割引カードが人気

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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