*15:04JST はてな Research Memo(4):2023年7月期は増収を維持したものの先行投資負担により減益に
■業績動向
1. 2023年7月期の業績概要
はてな<3930>の2023年7月期の業績は売上高が前期比2.8%増の3,150百万円、営業利益が同46.6%減の173百万円、経常利益が同46.9%減の182百万円、当期純利益が同58.5%減の99百万円と増収減益となった。
広告収入を中心に低迷が続いたコンテンツプラットフォームサービスと、大型顧客の運用停止等の影響を受けたコンテンツマーケティングサービスがそれぞれ減収となったが、「GigaViewer」や「Mackerel」を中心としたテクノロジーソリューションサービスの増収でカバーし、売上高は過去最高を連続更新した。事業費用は将来の成長基盤のさらなる強化に向けた先行投資期間と位置付け、積極的な人材採用等を進めた結果、人件費が前期比4.4%増の1,585百万円、DC利用料が同20.7%増の601百万円、その他費用が同9.3%増の790百万円とそれぞれ増加し、減益要因となった。
2023年7月期末の社員数は前期末比24名増の193名と期初想定を4名上回り、中途採用を中心に順調に採用が進んだ。IT業界では慢性的なエンジニア不足で採用が難しい状況が続いており、同社もここ数年は計画未達が続いていたが、採用・育成力強化施策として2022年5月に組織変更を実施し、体制強化を図ったことが奏功した。自社のエンジニア向け採用サイトのコンテンツを充実させたほか、開発者ブログやオンラインセミナーなど多チャンネルで積極的に情報発信した結果、オウンドメディアからの採用が増加し採用費の抑制にもつながった。なお、人員数の増加率14.2%に対して人件費の増加率が4.4%と低いのは、利益水準の低下で賞与が減少したことに加えて、第4四半期に採用数が偏重したことによる。
DC利用料の増加要因としては、円安による米ドル支払いのクラウドサービス利用料の増加に加え、「GigaViewer」の媒体数増加等によるクラウドサービス利用料そのものの増加がある。前期比で103百万円増加したが、このうち半分強は円安による影響だったと見られる。同社は一定のタイミングで為替予約等のヘッジを実施しているが、為替変動分をすべてカバーしきれなかった。DC利用料の対売上比率は同2.8ポイント上昇の19.1%となり、営業利益率低下(同5.1ポイント低下)の主因となった。その他費用の増加要因としては、テクノロジーソリューションサービスにおける広告運用売上の増加に伴って発生する広告運用原価の増加に加えて、サービス開発推進のための外注費や業務委託費の増加、自社サービスの広告宣伝費の増加による。なお、2022年7月期に京都本社を移転したほか、2023年3月末に東京オフィスの一部フロアを返却したことにより、賃借料が同29百万円減少した。
会社計画対比で見ると、期初計画に対しては売上高がほぼ同水準で着地したのに対して、事業費用が想定を下回ったことにより各利益は超過達成した。ただ、2023年5月に上方修正した数値に対しては売上高で37百万円、各利益で40~50百万円の未達となった。売上高の下振れは、マンガアプリの大型開発案件の想定納期を2024年7月期下期に変更したことが主因となっている。開発の全体像が見えてきた段階で、納品時期を遅らせてもアプリの品質を高めていくことが、リリース後の収益化まで含めてトータルで考えたときにプラスになると考え、顧客と相談のうえ先送りすることにした。同案件は他社アプリからのリプレイス案件で、新規案件よりも開発の難易度が高くなる。リプレイス案件としては第1号案件であり、当該案件を確実に成功事例として仕上げることで、今後の他社リプレイス案件の受注につなげていく考えだ。一方、利益面では売上高の減少に加えて、事業費用が想定よりも13百万円増加したことが下振れ要因となった。前述の通り、第4四半期に想定以上に中途人材の採用が進んだことで、採用費を含む人件費が見込みよりも増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<AS>
1. 2023年7月期の業績概要
はてな<3930>の2023年7月期の業績は売上高が前期比2.8%増の3,150百万円、営業利益が同46.6%減の173百万円、経常利益が同46.9%減の182百万円、当期純利益が同58.5%減の99百万円と増収減益となった。
広告収入を中心に低迷が続いたコンテンツプラットフォームサービスと、大型顧客の運用停止等の影響を受けたコンテンツマーケティングサービスがそれぞれ減収となったが、「GigaViewer」や「Mackerel」を中心としたテクノロジーソリューションサービスの増収でカバーし、売上高は過去最高を連続更新した。事業費用は将来の成長基盤のさらなる強化に向けた先行投資期間と位置付け、積極的な人材採用等を進めた結果、人件費が前期比4.4%増の1,585百万円、DC利用料が同20.7%増の601百万円、その他費用が同9.3%増の790百万円とそれぞれ増加し、減益要因となった。
2023年7月期末の社員数は前期末比24名増の193名と期初想定を4名上回り、中途採用を中心に順調に採用が進んだ。IT業界では慢性的なエンジニア不足で採用が難しい状況が続いており、同社もここ数年は計画未達が続いていたが、採用・育成力強化施策として2022年5月に組織変更を実施し、体制強化を図ったことが奏功した。自社のエンジニア向け採用サイトのコンテンツを充実させたほか、開発者ブログやオンラインセミナーなど多チャンネルで積極的に情報発信した結果、オウンドメディアからの採用が増加し採用費の抑制にもつながった。なお、人員数の増加率14.2%に対して人件費の増加率が4.4%と低いのは、利益水準の低下で賞与が減少したことに加えて、第4四半期に採用数が偏重したことによる。
DC利用料の増加要因としては、円安による米ドル支払いのクラウドサービス利用料の増加に加え、「GigaViewer」の媒体数増加等によるクラウドサービス利用料そのものの増加がある。前期比で103百万円増加したが、このうち半分強は円安による影響だったと見られる。同社は一定のタイミングで為替予約等のヘッジを実施しているが、為替変動分をすべてカバーしきれなかった。DC利用料の対売上比率は同2.8ポイント上昇の19.1%となり、営業利益率低下(同5.1ポイント低下)の主因となった。その他費用の増加要因としては、テクノロジーソリューションサービスにおける広告運用売上の増加に伴って発生する広告運用原価の増加に加えて、サービス開発推進のための外注費や業務委託費の増加、自社サービスの広告宣伝費の増加による。なお、2022年7月期に京都本社を移転したほか、2023年3月末に東京オフィスの一部フロアを返却したことにより、賃借料が同29百万円減少した。
会社計画対比で見ると、期初計画に対しては売上高がほぼ同水準で着地したのに対して、事業費用が想定を下回ったことにより各利益は超過達成した。ただ、2023年5月に上方修正した数値に対しては売上高で37百万円、各利益で40~50百万円の未達となった。売上高の下振れは、マンガアプリの大型開発案件の想定納期を2024年7月期下期に変更したことが主因となっている。開発の全体像が見えてきた段階で、納品時期を遅らせてもアプリの品質を高めていくことが、リリース後の収益化まで含めてトータルで考えたときにプラスになると考え、顧客と相談のうえ先送りすることにした。同案件は他社アプリからのリプレイス案件で、新規案件よりも開発の難易度が高くなる。リプレイス案件としては第1号案件であり、当該案件を確実に成功事例として仕上げることで、今後の他社リプレイス案件の受注につなげていく考えだ。一方、利益面では売上高の減少に加えて、事業費用が想定よりも13百万円増加したことが下振れ要因となった。前述の通り、第4四半期に想定以上に中途人材の採用が進んだことで、採用費を含む人件費が見込みよりも増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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