*15:34JST オンコリス Research Memo(4):テロメライシンは2023年10月に国内臨床試験結果を発表予定(1)
■開発パイプラインの動向
1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、5型のアデノウイルスを遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスの一種で、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に対して特異的に増殖することで、がん細胞を破壊する特徴を持つ。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るケースもあるが、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため副作用も少なく、人体への安全性には問題のないことが確認された。また、用法としては局所療法が中心となるため、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤等との併用により、患者のQOL並びに治療効果の向上が期待されている。なお、テロメライシンの国際的な一般名称は、「suratadenoturev(スラタデノツレブ)」である。
(2) 2025年の上市に向けた製造販売体制の進捗状況
国内で実施していた食道がんを対象とした放射線併用による第2相臨床試験のトップラインデータが、2023年10月に発表される見込みとなっており、良好なデータが確認されれば2023年内に国内のオーファンドラッグ※1指定の申請を行い、2024年内に販売承認申請を行う予定である。先駆け審査指定制度※2の対象品目に指定されているため、早期審査により2025年に承認され上市する可能性がある。
※1 オーファンドラッグとは希少疾患用医薬品のことで、日本では対象患者数が5万人未満で医療ニーズが高いものなどが指定条件となっている。オーファンドラッグに指定されると、10年間の独占販売期間が得られる。
※2 先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、PMDAが薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。
現在は、販売承認申請に向けた体制を構築している段階にある。具体的には、商用製剤の製造法確立と製造販売体制の構築、国内販売パートナーとの提携交渉を進めている。商用製造については、委託先のHenogen SA(以下、ヘノジェン)にて商用規模の原薬のGMP※1製造が完了し、2023年11月よりプロセスバリデーション※2を開始する予定だ。テロメライシンの製造工程は、拡大培養した細胞にウイルスを加え、その後ウイルスを回収して余分な細胞成分を除去し、液体クロマトグラフィーでウイルスを精製してフィルタによって無菌化し、最終的にバイアルに充填する流れとなる。プロセスバリデ―ションの品質試験結果は2024年2月~3月に取得予定であり、問題がなければ本格的な商用製造が開始される。
※1 GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造及び品質管理に関する基準のこと。GMP認定のためには、製造工場ごとに構造や設備の運用・管理、製品の品質・衛生・製造管理などの細部にわたる審査・査察を受け、基準を満たすことが必要となる。創薬においては、GMP準拠施設で製造されたGMP製剤でないとヒトを対象とする治験に適用できない。
※2 プロセスバリデーションとは、設定した製造プロセス条件下で、基準に適合した薬剤が製造できているかを検証する作業。
また、ヘノジェンで製造してバイアルに充填した原薬を、国内に輸入して最終的に箱詰めし出荷する国内製造所の役割を担う委託先企業が必要となるため、現在複数社と協議を進め、2024年3月までの契約を目指している。販売提携会社との条件交渉にも関わってくるため、委託先が決定するのは販売提携会社との契約が決まってからとなりそうだ。なお、最終製剤の出荷試験についてはユーロフィン分析科学研究所(株)及びオンコリスバイオファーマ<4588>の神戸リサーチラボで行う考えだ。販売提携会社については国内外の製薬企業と交渉を進めているが、同社はテロメライシンの事業価値を最大化できるようなパートナーを希望している。例えば、今後適応拡大を進めるために必要となる臨床試験を共同で実施できる企業などが想定される。いずれにしても、販売契約締結の時期に関しては10月のトップラインデータで良好な結果が確認されてからとなりそうだ。
なお、国内で製造販売を開始するためには、社内の組織体制(製造販売、品質保証、安全管理に係る人材の採用)を整備し、規制当局から「製造販売業許可」を取得する必要がある。組織管理体制として、総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者を配置し、市販後でも安全性を管理できる体制を整備する必要があるが、現在はこのうち品質保証責任者、安全管理責任者を採用済みで、2023年内に総括製造販売責任者も採用する予定である。
販売承認申請は、プロセスバリデ―ションと、国内で製造販売するための組織体制の構築が完了したタイミングで行うものと予想される。順調に進めば2025年内の上市が見込まれるが、販売開始当初は市販後調査を行う必要があるため、治験を実施した医療施設(17施設)を中心に販売を開始し、徐々に対象医療施設を拡大すると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、5型のアデノウイルスを遺伝子改変した腫瘍溶解ウイルスの一種で、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に対して特異的に増殖することで、がん細胞を破壊する特徴を持つ。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るケースもあるが、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため副作用も少なく、人体への安全性には問題のないことが確認された。また、用法としては局所療法が中心となるため、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤等との併用により、患者のQOL並びに治療効果の向上が期待されている。なお、テロメライシンの国際的な一般名称は、「suratadenoturev(スラタデノツレブ)」である。
(2) 2025年の上市に向けた製造販売体制の進捗状況
国内で実施していた食道がんを対象とした放射線併用による第2相臨床試験のトップラインデータが、2023年10月に発表される見込みとなっており、良好なデータが確認されれば2023年内に国内のオーファンドラッグ※1指定の申請を行い、2024年内に販売承認申請を行う予定である。先駆け審査指定制度※2の対象品目に指定されているため、早期審査により2025年に承認され上市する可能性がある。
※1 オーファンドラッグとは希少疾患用医薬品のことで、日本では対象患者数が5万人未満で医療ニーズが高いものなどが指定条件となっている。オーファンドラッグに指定されると、10年間の独占販売期間が得られる。
※2 先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、PMDAが薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。
現在は、販売承認申請に向けた体制を構築している段階にある。具体的には、商用製剤の製造法確立と製造販売体制の構築、国内販売パートナーとの提携交渉を進めている。商用製造については、委託先のHenogen SA(以下、ヘノジェン)にて商用規模の原薬のGMP※1製造が完了し、2023年11月よりプロセスバリデーション※2を開始する予定だ。テロメライシンの製造工程は、拡大培養した細胞にウイルスを加え、その後ウイルスを回収して余分な細胞成分を除去し、液体クロマトグラフィーでウイルスを精製してフィルタによって無菌化し、最終的にバイアルに充填する流れとなる。プロセスバリデ―ションの品質試験結果は2024年2月~3月に取得予定であり、問題がなければ本格的な商用製造が開始される。
※1 GMP(Good Manufacturing Practice):医薬品の製造及び品質管理に関する基準のこと。GMP認定のためには、製造工場ごとに構造や設備の運用・管理、製品の品質・衛生・製造管理などの細部にわたる審査・査察を受け、基準を満たすことが必要となる。創薬においては、GMP準拠施設で製造されたGMP製剤でないとヒトを対象とする治験に適用できない。
※2 プロセスバリデーションとは、設定した製造プロセス条件下で、基準に適合した薬剤が製造できているかを検証する作業。
また、ヘノジェンで製造してバイアルに充填した原薬を、国内に輸入して最終的に箱詰めし出荷する国内製造所の役割を担う委託先企業が必要となるため、現在複数社と協議を進め、2024年3月までの契約を目指している。販売提携会社との条件交渉にも関わってくるため、委託先が決定するのは販売提携会社との契約が決まってからとなりそうだ。なお、最終製剤の出荷試験についてはユーロフィン分析科学研究所(株)及びオンコリスバイオファーマ<4588>の神戸リサーチラボで行う考えだ。販売提携会社については国内外の製薬企業と交渉を進めているが、同社はテロメライシンの事業価値を最大化できるようなパートナーを希望している。例えば、今後適応拡大を進めるために必要となる臨床試験を共同で実施できる企業などが想定される。いずれにしても、販売契約締結の時期に関しては10月のトップラインデータで良好な結果が確認されてからとなりそうだ。
なお、国内で製造販売を開始するためには、社内の組織体制(製造販売、品質保証、安全管理に係る人材の採用)を整備し、規制当局から「製造販売業許可」を取得する必要がある。組織管理体制として、総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者を配置し、市販後でも安全性を管理できる体制を整備する必要があるが、現在はこのうち品質保証責任者、安全管理責任者を採用済みで、2023年内に総括製造販売責任者も採用する予定である。
販売承認申請は、プロセスバリデ―ションと、国内で製造販売するための組織体制の構築が完了したタイミングで行うものと予想される。順調に進めば2025年内の上市が見込まれるが、販売開始当初は市販後調査を行う必要があるため、治験を実施した医療施設(17施設)を中心に販売を開始し、徐々に対象医療施設を拡大すると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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