Jトラスト Research Memo(1):2023年12月期業績予想を上方修正したが、極めて保守的な計画

配信元:フィスコ
投稿:2023/09/05 12:31
*12:31JST Jトラスト Research Memo(1):2023年12月期業績予想を上方修正したが、極めて保守的な計画 ■要約

Jトラスト<8508>は、東京証券取引所(以下、東証)スタンダード市場に上場しており、傘下に国内外の金融事業を有するホールディングカンパニーである。現 代表取締役社長の藤澤信義(ふじさわのぶよし)氏の下、国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業を中心に資産規模を拡大してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による世界的な経済環境悪化に直面し、抜本的な事業ポートフォリオの再編に着手した。ただ、事業環境の落ち着きに伴い、利益拡大に向けて、成長性が高いJT親愛貯蓄銀行(株)及びNexus Card(株)(ネクサスカード)を再グループ化するとともに、エイチ・エス証券(株)(2022年10月1日付でJトラストグローバル証券(株)に商号変更)を子会社化した。さらに、2023年2月には、不動産事業を行う(株)ミライノベートを吸収合併した。今後は主力の金融3事業に一層注力するとともに不動産事業を拡大することで、成長を図る計画だ。

1. 2023年12月期第2四半期の業績概要
2023年12月期第2四半期累計の営業収益は53,649百万円(前年同期比59.3%増)、営業利益は8,605百万円(同34.7%減)、税引前利益は10,284百万円(同35.5%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は16,031百万円(同22.7%増)となった。営業収益は過去最大を記録し、営業利益はNexus Bank(株)(ネクサスバンク)の取得に伴う負ののれん発生益を計上した前年同期に比べて減少したものの、過去2番目の高水準であった。また、親会社の所有者に帰属する四半期利益は、Nexus Bankの吸収合併に伴い繰延税金負債6,548百万円を取崩したことなどにより増益となり、同社グループが2018年3月期に国際財務報告基準(IFRS)に移行して以来、過去最大となった。事業セグメント別営業損益(全社費用控除前の損益、以下同)では、東南アジア金融事業は620百万円の利益となるなど計画を19億円上回り、期待どおりに収益の柱になりつつある。また、韓国及びモンゴル金融事業の損失額は、計画の23億円を12億円上回る1,196百万円にとどまった。安定した業績を続ける日本金融事業でも、2,271百万円の利益を計上した。以上から、コア事業である金融3事業の営業利益は、16億円と順調である。加えて、不動産事業では、ミライノベートを吸収合併したことによる負ののれん益により9,308百万円の営業利益となり、会社全体の好業績をけん引した。

2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績については、各事業セグメントの業績が順調に推移していることから期初予想を上方修正し、営業収益118,000百万円(前期比43.2%増)、営業利益10,500百万円(同27.1%減)、税引前利益12,500百万円(同26.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益16,500百万円(同30.6%増)を見込んでいる。営業収益は過去最高の更新を計画しているものの、営業利益は韓国の金利上昇等の影響から減益を予想する。事業セグメント別営業利益予想については、東南アジア金融事業は銀行業での優良な貸出金の積み上げにより、また日本金融事業は保証事業と債権回収事業における安定的な収益計上から利益拡大を見込む。さらに不動産事業では負ののれん益の計上に加え、不動産事業会社の事業規模拡大に伴い大幅増益を計画する。一方、韓国及びモンゴル金融事業は、金利上昇等の影響から損失計上するものの、損失額は期初予想から大幅減少を見込む。投資事業は、2,213百万円の損失から2,066百万円の損失に修正した。ただ、第2四半期決算の各利益項目の進捗率は、修正後の通期計画に対して80%以上の高水準に達しており、業績予想は従来と同様に極めて保守的であると弊社では見ている。配当は前期比4.0円増配の通期14.0円(中間1.0円、期末13.0円)を予定していることに加えて、優待利回りが高い株主優待を復活させており、株主還元の充実にも取り組む経営姿勢は評価できよう。

3. 中長期の成長戦略
同社は、2020年12月期より抜本的な事業ポートフォリオの再編を進めてきた結果、成長フェーズに転換している。2021年12月期は黒字化を実現し、2022年12月期~2024年12月期の中期業績予想の下、増収増益計画を推進していたが、経営環境の変化を踏まえて新たに3か年計画(2023年12月期~2025年12月期)を発表した。最終年度となる2025年12月期に営業収益1,587億円、営業利益191億円を目指すが、韓国の金利上昇等の影響を受け、2023年12月期の営業利益は減益を予想する。事業セグメント別では、韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は、高金利預金の剥落に伴い、2024年12月期には正常化すると見られる。東南アジア金融事業はJ トラスト銀行インドネシアを中心に利益拡大が見込まれ、成長ドライバーとして期待される。日本金融事業は安定的な利益を計上する見通しだ。これらにM&Aによるプラス要因が加われば、さらなる増収増益も期待される。事実、2022年3月に傘下に収めたJトラストグローバル証券は新たな金融商品の提供を開始し、(株)日本保証の保証残高の拡大を目指している。また、2023年2月にはミライノベートを吸収合併するなど、今後も不動産事業を一層拡大することで、同社グループの成長に寄与すると見られる。

■Key Points
・日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業など、アジアの金融事業を中心に発展を目指す金融グループ。新たに不動産事業にも注力
・2023年12月期第2四半期は、東南アジア金融事業の増益に、不動産事業の負ののれん益が加わり、計画を大きく上回る利益を計上
・2023年12月期は期初予想を上方修正したが、第2四半期決算の実績からは極めて保守的な予想。増配及び株主優待制度復活など株主還元を充実
・日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業での安定的利益計上、東南アジア金融事業の利益拡大、不動産事業の利益貢献などにより、グループの持続的な成長を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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配信元: フィスコ

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