*15:21JST 日新 Research Memo(1):国際総合物流のパイオニアとして物流全般にかかわる事業を幅広く展開
■要約
1. 会社概要
日新<9066>は1938年に創業し、優れた海外ネットワークが強みの独立系総合物流企業である。国際総合物流のパイオニアとして海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送、倉庫、引越、通関など物流全般にかかわる事業を幅広く展開している。強みである海外ネットワークと国際物流を生かし、海外事業展開及び顧客ニーズに合致した新たなビジネスモデルをグループ一体となって創出することで、顧客から信頼され評価される「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」を目指している。
2. 業績動向
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.8%増の194,165百万円、営業利益が同39.0%増の12,643百万円となった。
物流事業では、2023年3月期の上期から続いた緊急貨物輸送の取り扱いや運賃の高騰は、下期に入り徐々に収束傾向となったが、海上、航空貨物ともに取り扱いは総じて堅調に推移した。旅行事業では、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で2期連続損失を計上していたが、業務渡航の取り扱いは回復基調(コロナ禍前の8割回復)で推移し、収益改善が図れた。なお、業務渡航等の取り扱いが回復したことに加え、社内体制整備による合理化により損失幅が大幅に縮小し、第2四半期と第3四半期は一時的ではあるが黒字転換を達成したことを付記しておきたい。
2024年3月期の連結業績は、売上高190,000百万円(前期比2.1%減)、営業利益で8,500百万円(同32.8%減)、と見込んでいる。2020年の秋ごろから表面化してきた「国際物流の混乱」、「海上輸送の運賃高騰」問題とそれに連動した同社にとっての特需(2022年第3四半期~2023年第2四半期)は既にピークを越えたと見ている。2024年3月期下期中は、特需のあとの反動で受注がしばらく下落するも、緩やかに歯止めがかかる。物流事業は2024年3月期には、平常時の物流受注活動に戻り、今後3年間で徐々に回復し、再成長していくと予想している。一方、旅行事業では、主力の業務渡航の取り扱いで引き続き回復基調が見込まれることから、コロナ禍前以来の4期ぶりの黒字回復(2024年3月期営業利益200百万円)を見込む。
3. 中期経営計画
第7次中期経営計画(2023年3月期~2027年3月期)では、これまでの物流事業の「規模の経済」から脱却して、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指している。
数値目標としては、フェーズ1(2023年3月期~2024年3月期)では、2024年3月期に売上高1,900億円、営業利益85億円を目指す。しかしながら、2023年3月期の営業利益は12,643百万円となり、フェーズ1の営業利益目標を1年前倒しで達成することとなる。同社では、2023年3月期を物流の混乱による特需に起因したイレギュラー要素が強い期とみなしており、コロナ禍前の業績(2019年3月期の営業利益56億円)を起点にフェーズ1で85億円まで引き上げる計画としている。一方、フェーズ2(2025年3月期~2027年3月期)では、2027年3月期に売上高2,750億円、営業利益110億円を目指す。
4. DXの推進とさらなる深化
同社は第7次中期経営計画の重点施策としてDXの推進を掲げ、全社的に取り組んでいる。汎用的な物流サービスのDX分野では、デジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」を全面リニューアルし、2023年3月にサービス提供を開始した。また、個別サービスのDX分野では、同社並びに薬品卸大手スズケン<9987>グループとパナソニックホールディングス<6752>の3社共同で、パナソニックの真空断熱保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」を活用し、高品質な輸送品質が求められる医薬品の国際輸送を想定した輸送実験を実施した。
同社が世界の競合他社に対して優位になるためには、DX推進体制の強化が必須であると弊社では考えており、さらなる成長に期待したい。
■Key Points
・2023年3月期の営業利益は、物流事業で増益継続、旅行事業も収益改善
・2024年3月期業績予想は国際物流の特需の反動で減収減益。中長期では緩やかに回復と再成長へ
・物流の混乱による特需があったがそれに一喜一憂せず、第7次中期経営計画では経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指す
・また、中期経営計画の重要課題として「PBR(株価純資産倍率) 1倍超の早期実現」に取り組んでいる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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1. 会社概要
日新<9066>は1938年に創業し、優れた海外ネットワークが強みの独立系総合物流企業である。国際総合物流のパイオニアとして海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送、倉庫、引越、通関など物流全般にかかわる事業を幅広く展開している。強みである海外ネットワークと国際物流を生かし、海外事業展開及び顧客ニーズに合致した新たなビジネスモデルをグループ一体となって創出することで、顧客から信頼され評価される「グローバル・ロジスティクス・プロバイダー」を目指している。
2. 業績動向
2023年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.8%増の194,165百万円、営業利益が同39.0%増の12,643百万円となった。
物流事業では、2023年3月期の上期から続いた緊急貨物輸送の取り扱いや運賃の高騰は、下期に入り徐々に収束傾向となったが、海上、航空貨物ともに取り扱いは総じて堅調に推移した。旅行事業では、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で2期連続損失を計上していたが、業務渡航の取り扱いは回復基調(コロナ禍前の8割回復)で推移し、収益改善が図れた。なお、業務渡航等の取り扱いが回復したことに加え、社内体制整備による合理化により損失幅が大幅に縮小し、第2四半期と第3四半期は一時的ではあるが黒字転換を達成したことを付記しておきたい。
2024年3月期の連結業績は、売上高190,000百万円(前期比2.1%減)、営業利益で8,500百万円(同32.8%減)、と見込んでいる。2020年の秋ごろから表面化してきた「国際物流の混乱」、「海上輸送の運賃高騰」問題とそれに連動した同社にとっての特需(2022年第3四半期~2023年第2四半期)は既にピークを越えたと見ている。2024年3月期下期中は、特需のあとの反動で受注がしばらく下落するも、緩やかに歯止めがかかる。物流事業は2024年3月期には、平常時の物流受注活動に戻り、今後3年間で徐々に回復し、再成長していくと予想している。一方、旅行事業では、主力の業務渡航の取り扱いで引き続き回復基調が見込まれることから、コロナ禍前以来の4期ぶりの黒字回復(2024年3月期営業利益200百万円)を見込む。
3. 中期経営計画
第7次中期経営計画(2023年3月期~2027年3月期)では、これまでの物流事業の「規模の経済」から脱却して、経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指している。
数値目標としては、フェーズ1(2023年3月期~2024年3月期)では、2024年3月期に売上高1,900億円、営業利益85億円を目指す。しかしながら、2023年3月期の営業利益は12,643百万円となり、フェーズ1の営業利益目標を1年前倒しで達成することとなる。同社では、2023年3月期を物流の混乱による特需に起因したイレギュラー要素が強い期とみなしており、コロナ禍前の業績(2019年3月期の営業利益56億円)を起点にフェーズ1で85億円まで引き上げる計画としている。一方、フェーズ2(2025年3月期~2027年3月期)では、2027年3月期に売上高2,750億円、営業利益110億円を目指す。
4. DXの推進とさらなる深化
同社は第7次中期経営計画の重点施策としてDXの推進を掲げ、全社的に取り組んでいる。汎用的な物流サービスのDX分野では、デジタルフォワーディングサービス「Forward ONE」を全面リニューアルし、2023年3月にサービス提供を開始した。また、個別サービスのDX分野では、同社並びに薬品卸大手スズケン<9987>グループとパナソニックホールディングス<6752>の3社共同で、パナソニックの真空断熱保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」を活用し、高品質な輸送品質が求められる医薬品の国際輸送を想定した輸送実験を実施した。
同社が世界の競合他社に対して優位になるためには、DX推進体制の強化が必須であると弊社では考えており、さらなる成長に期待したい。
■Key Points
・2023年3月期の営業利益は、物流事業で増益継続、旅行事業も収益改善
・2024年3月期業績予想は国際物流の特需の反動で減収減益。中長期では緩やかに回復と再成長へ
・物流の混乱による特需があったがそれに一喜一憂せず、第7次中期経営計画では経営の効率化と安定的高収益体質の確立を目指す
・また、中期経営計画の重要課題として「PBR(株価純資産倍率) 1倍超の早期実現」に取り組んでいる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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