*14:48JST ランドコンピュ Research Memo(8):人的資本への戦略的投資が持続的企業価値の向上を生む
■今後の見通し
3. 成長戦略と人的資本への戦略投資
ITサービス会社にとって、人的資本が価値を創造する中核の経営資源となる。人的資本への戦略的投資が成長や持続的な企業価値向上の推進力となる。ランドコンピュータ<3924>は、顧客の要望に対応する人員配置を適材適所で行っている。今後のユーザニーズの変化と将来の競争優位性を築くため、アジャイル開発力の向上を図るため、従業員のリスキリングを活発化している。
従来型の開発では、大量のデータを正確かつ効率的に記録、蓄積、活用するシステムが求められ品質が重視される。既存システムは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化しており、経済産業省が危惧する「2025年の崖」を回避するためにモダナイゼーションが必要とされる。COBOL資産をJavaなどにマイグレーションする際に、長年システム開発に携わり、古いプログラミング言語の知識を有するエンジニアの存在が必要となる。コストを重視する顧客に対しては、パッケージとクラウドの組み合わせを提供する。開発スピードを重視する顧客には、DX型開発を提案する。
特定サービス産業動態統計調査による情報サービス業の2022年度売上高は前年度比6.1%増の16兆2,546億円であった。うちソフトウェア開発、プログラム作成からゲームソフトを差し引いた金額は、10兆7,425億円となる。その内訳は、受注ソフトウェアが90.1%(うち約3分の2弱がシステムインテグレーション)とソフトウェアプロダクツ(ゲームソフトを含まぬ)が9.9%であった。同統計は、2020年7月に調査対象の見直しを行ったため数値に不連続性が生じており、過去データとの正確な伸び率が算出できない。ただ、受注ソフトウェアとソフトウェアプロダクツの割合は、2012年度が90.4%:9.6%、2017年度が90.8%:9.2%であり、最新値と5年、10年前を比べても大きな変化はない。受注ソフトウェア開発により、「2025年の崖」の克服とDXによる経営変革を目指すユーザに対するソリューションとして、同社はアジャイル開発を推進する。
同社はアジャイル開発力を強化するため、2022年9月にジェネクサス・ジャパン(株)とソフトウェア開発パートナー契約を締結した。ローコード開発ツールである「GeneXus」は、世界50ヶ国以上、8,700社以上に導入され、技術者は13万人以上に及ぶ。業務要件を入力するだけでアプリケーションやデータベースを自動生成するため、開発期間を大幅に削減できる(最大で80%削減)。要件定義をすれば「動くかたち」で試作品を共有できるため、初期段階で問題を発見しやすい。また、要件定義後のアプリケーションが自動生成されるため、開発コスト及び工期を大幅に削減できるうえ、バグの発生率が低く、システムそのものが老朽化しない。保守性も高く、インフラに依存しないため、劣化しにくいシステムを提供できることが特長だ。
2023年3月期末の同社のローコード開発に関する資格取得者は16名であった。2024年3月期末に50名を目指す。DX推進本部は、ローコード開発、クラウドネイティブ開発によるアジャイル開発手法の標準確立を進めている。
同社は、手離れが良く収益性が高いパッケージベースSI・サービスを成長事業として注力している。同事業では、SAP業務において戦略的投資と社内教育による従業員の技能向上が対価(単金)の上昇と付加価値の増加という結果をもたらした。それが社員の報酬として還元され、学習意欲の高まりが社内に波及している。戦略的投資は、インフリーを買収・子会社化したことである。両社とも、社員教育に熱心なことと資格取得奨励という点で共通した企業文化を持つ。インフリーは専業だけあって、SAPに特化した社内教育システムを開発してる。その教育システムを同社のエンジニアが利用することで、より上位の資格取得に成功している。
グループ入りしたもう1社のテクニゲートは、SuperStream-NXパートナーとして、会計パッケージ「SuperStream」ビジネスに関する知見と高い技術力を有する。大手を中心とした直ユーザ取引を展開しており、これまで累計727社の導入実績を持つ。子会社の有する知見を共有化することで、同社が推進する直ユーザ取引拡大に活かす。また、テクニゲートの顧客に、同社のパッケージベースSI・サービスを融合することで、より付加価値の高い次世代サービスの提供を図る。
新しく「ServiceNow」の取り組みを開始した。2004年に創立された米国ServiceNow社は、SaaSによりクラウド型の労働生産性を高める業務プラットフォームを提供する。日本法人は、2013年に設立された。同クラウドサービスは、IT資産管理からセキュリティ、人事、カスタマーサービスなど企業の定型業務プロセスを簡素化、自動化し、従業員の働き方改革と生産性の向上を促す。
ITサービス業界のリスク要因として、社内SEの増加とChatGPTの導入が挙げられる。今のところ新しい技術、商品、サービスの導入では、「イノベータ」の段階と思われる。イノベータ理論では、市場全体を5つのグループに分け、新しい商品やサービスを早期に受け入れる「イノベータ」(革新者)は全体の2.5%と分類する。次に来る、流行に敏感で、自ら情報収集などを行い判断する「アーリーアダプタ」(初期採用者)の構成比は13.5%になる。前期追随者の「アーリーマジョリティ」が34%、後期追随者の「レイトマジョリティ」が34%、遅滞者の「ラガード」が16%である。
日本では、DXに関わるデータアナリストなどの高度人財に対し、高額な報酬と対価に見合う活躍の場を継続的に提供できる企業は限られる。また、ジョブ型雇用に移行し、従業員が納得する職種ごとの給与体系を明示している企業は少ない。社内SEの増員に動く企業も報道されている。社内SEになるデメリットは、当然のことながら活動の場が社内に限定されてしまうこと、また、場合によっては社内の評価者がITに精通していない、新しい技術を習得する機会が限定される、リスキリングと担当するプロジェクト及び報酬がリンクせずモチベーションの維持が難しいなどが挙げられる。
ChatGPTは、給与水準の高いメガバンクなどの企業が補助的な業務への利用を始めた。クラウドサービスを提供する大手のMicrosoftやGoogleが検索エンジンや業務ソフト「Microsoft365」への搭載を始めた。今後は、業種特化型の生成AIの研究開発が進むだろう。日本のIT大手も、生成AIがインターネットの登場と匹敵する影響力があるとコメントしている。そのため、ITサービス業界に限らず、教育分野を含め社会の仕組みに地殻変動をもたらすことから、今後の進展に注視することが必要だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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3. 成長戦略と人的資本への戦略投資
ITサービス会社にとって、人的資本が価値を創造する中核の経営資源となる。人的資本への戦略的投資が成長や持続的な企業価値向上の推進力となる。ランドコンピュータ<3924>は、顧客の要望に対応する人員配置を適材適所で行っている。今後のユーザニーズの変化と将来の競争優位性を築くため、アジャイル開発力の向上を図るため、従業員のリスキリングを活発化している。
従来型の開発では、大量のデータを正確かつ効率的に記録、蓄積、活用するシステムが求められ品質が重視される。既存システムは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化しており、経済産業省が危惧する「2025年の崖」を回避するためにモダナイゼーションが必要とされる。COBOL資産をJavaなどにマイグレーションする際に、長年システム開発に携わり、古いプログラミング言語の知識を有するエンジニアの存在が必要となる。コストを重視する顧客に対しては、パッケージとクラウドの組み合わせを提供する。開発スピードを重視する顧客には、DX型開発を提案する。
特定サービス産業動態統計調査による情報サービス業の2022年度売上高は前年度比6.1%増の16兆2,546億円であった。うちソフトウェア開発、プログラム作成からゲームソフトを差し引いた金額は、10兆7,425億円となる。その内訳は、受注ソフトウェアが90.1%(うち約3分の2弱がシステムインテグレーション)とソフトウェアプロダクツ(ゲームソフトを含まぬ)が9.9%であった。同統計は、2020年7月に調査対象の見直しを行ったため数値に不連続性が生じており、過去データとの正確な伸び率が算出できない。ただ、受注ソフトウェアとソフトウェアプロダクツの割合は、2012年度が90.4%:9.6%、2017年度が90.8%:9.2%であり、最新値と5年、10年前を比べても大きな変化はない。受注ソフトウェア開発により、「2025年の崖」の克服とDXによる経営変革を目指すユーザに対するソリューションとして、同社はアジャイル開発を推進する。
同社はアジャイル開発力を強化するため、2022年9月にジェネクサス・ジャパン(株)とソフトウェア開発パートナー契約を締結した。ローコード開発ツールである「GeneXus」は、世界50ヶ国以上、8,700社以上に導入され、技術者は13万人以上に及ぶ。業務要件を入力するだけでアプリケーションやデータベースを自動生成するため、開発期間を大幅に削減できる(最大で80%削減)。要件定義をすれば「動くかたち」で試作品を共有できるため、初期段階で問題を発見しやすい。また、要件定義後のアプリケーションが自動生成されるため、開発コスト及び工期を大幅に削減できるうえ、バグの発生率が低く、システムそのものが老朽化しない。保守性も高く、インフラに依存しないため、劣化しにくいシステムを提供できることが特長だ。
2023年3月期末の同社のローコード開発に関する資格取得者は16名であった。2024年3月期末に50名を目指す。DX推進本部は、ローコード開発、クラウドネイティブ開発によるアジャイル開発手法の標準確立を進めている。
同社は、手離れが良く収益性が高いパッケージベースSI・サービスを成長事業として注力している。同事業では、SAP業務において戦略的投資と社内教育による従業員の技能向上が対価(単金)の上昇と付加価値の増加という結果をもたらした。それが社員の報酬として還元され、学習意欲の高まりが社内に波及している。戦略的投資は、インフリーを買収・子会社化したことである。両社とも、社員教育に熱心なことと資格取得奨励という点で共通した企業文化を持つ。インフリーは専業だけあって、SAPに特化した社内教育システムを開発してる。その教育システムを同社のエンジニアが利用することで、より上位の資格取得に成功している。
グループ入りしたもう1社のテクニゲートは、SuperStream-NXパートナーとして、会計パッケージ「SuperStream」ビジネスに関する知見と高い技術力を有する。大手を中心とした直ユーザ取引を展開しており、これまで累計727社の導入実績を持つ。子会社の有する知見を共有化することで、同社が推進する直ユーザ取引拡大に活かす。また、テクニゲートの顧客に、同社のパッケージベースSI・サービスを融合することで、より付加価値の高い次世代サービスの提供を図る。
新しく「ServiceNow」の取り組みを開始した。2004年に創立された米国ServiceNow社は、SaaSによりクラウド型の労働生産性を高める業務プラットフォームを提供する。日本法人は、2013年に設立された。同クラウドサービスは、IT資産管理からセキュリティ、人事、カスタマーサービスなど企業の定型業務プロセスを簡素化、自動化し、従業員の働き方改革と生産性の向上を促す。
ITサービス業界のリスク要因として、社内SEの増加とChatGPTの導入が挙げられる。今のところ新しい技術、商品、サービスの導入では、「イノベータ」の段階と思われる。イノベータ理論では、市場全体を5つのグループに分け、新しい商品やサービスを早期に受け入れる「イノベータ」(革新者)は全体の2.5%と分類する。次に来る、流行に敏感で、自ら情報収集などを行い判断する「アーリーアダプタ」(初期採用者)の構成比は13.5%になる。前期追随者の「アーリーマジョリティ」が34%、後期追随者の「レイトマジョリティ」が34%、遅滞者の「ラガード」が16%である。
日本では、DXに関わるデータアナリストなどの高度人財に対し、高額な報酬と対価に見合う活躍の場を継続的に提供できる企業は限られる。また、ジョブ型雇用に移行し、従業員が納得する職種ごとの給与体系を明示している企業は少ない。社内SEの増員に動く企業も報道されている。社内SEになるデメリットは、当然のことながら活動の場が社内に限定されてしまうこと、また、場合によっては社内の評価者がITに精通していない、新しい技術を習得する機会が限定される、リスキリングと担当するプロジェクト及び報酬がリンクせずモチベーションの維持が難しいなどが挙げられる。
ChatGPTは、給与水準の高いメガバンクなどの企業が補助的な業務への利用を始めた。クラウドサービスを提供する大手のMicrosoftやGoogleが検索エンジンや業務ソフト「Microsoft365」への搭載を始めた。今後は、業種特化型の生成AIの研究開発が進むだろう。日本のIT大手も、生成AIがインターネットの登場と匹敵する影響力があるとコメントしている。そのため、ITサービス業界に限らず、教育分野を含め社会の仕組みに地殻変動をもたらすことから、今後の進展に注視することが必要だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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