*18:00JST 来週の相場で注目すべき3つのポイント:米CPI・PPI、景気ウォッチャー調査、米銀決算
■株式相場見通し
予想レンジ:上限33200円-下限31700円
来週の東京株式市場は一進一退か。国内では月次売上動向で既に警戒感が高まっているファーストリテイリング<9983>をはじめ3-5月期決算の発表が終盤に入る。個別株物色の活発化が全体を下支えすることに期待したい。また7日引け後に発表された安川電機<6506>の第1四半期決算で四半期受注の底入れ感が確認されており、今後の主力製造業決算に対する期待も全体相場を支えそうだ。
一方、米6月雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったが、依然としてコロナ前の水準を上回っており、また失業率は低下、平均賃金の伸びは予想に反して加速した。予想を2倍以上も上回ったADP雇用リポートと合わせて総じて逼迫した労働市場が続いていることが示唆され、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測が高まっている。米10年債利回りは6日に4%を超え、3月2日以来の高水準にまで上昇。米10年債利回りから期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年実質金利は6日に1.77%と、2009年8月以来の高水準にまで上昇した。金利高がハイテク・グロース(成長)株の調整を招くようであれば、今週末に25日移動平均線を割り込んだ日経平均の調整色が濃くなる可能性がある。
12日に米6月消費者物価指数(CPI)、13日には米6月卸売物価指数(PPI)が発表される。CPIは前年比+3.1%と5月(+4.0%)から鈍化する見込みだが、前月比では+0.3%と5月(+0.1%)から加速する見込み。一方、食品・エネルギーを除いたコア指数では前年比+5.0%、前月比+0.3%とそれぞれ5月(+5.3%、+0.4%)から鈍化する予想。PPIも総合およびコア指数はともに前年比では鈍化する見込みだが、前月比はプラスが予想されている。
CPIおよびPPIの前年比での伸び鈍化は強い雇用関連の指標を受けてから強まっているFRBの追加利上げ観測を緩和させるほどの影響があるかは微妙なところだ。むしろ、下振れた場合は想定線、上振れた場合はネガティブに捉えられる展開に注意を払っておく必要があろう。
週末には米国でJPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループなど銀行の決算発表が始まる。預金や貸出、貸倒引当金の動向から経営陣の先行きの景気見通しなどが注目され、結果を見極めたいとの思惑から、週末まで市場の方向感は出にくいかもしれない。
国内では週明けに発表される景気ウォッチャー調査に注目したい。国内景況感の改善が続いてきたが、前月分から現状判断DIおよび先行き判断DIともに低下に転じており、今回も揃って前月から低下が予想されている。連続しての低下は景況感の改善基調の一服感をより強く示唆することになり、海外投資家が日本株を買う理由の一つとして挙げてきた相対的な景況感の強さが弱まることになろう。
また、米金利が上昇するなかでも為替が円高気味にあることも短期的には日本株の上値抑制要因となりそうだ。日本銀行の内田副総裁が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正について「バランスをとって判断していきたい」と言及したことなどから、今月27-28日に開催される日銀金融政策決定会合での政策修正が意識されていることが背景にあるようだ。金融政策決定会合で改めて政策の現状維持が決まれば円安進行は再開するだろうが、それまではしばらく為替が株価をサポートする展開は期待しにくいだろう。
小売企業に加えて、Sansan<4443>やSHIFT<3697>、ベイカレント・コンサルティング<6532>などグロース株の筆頭格とされる企業決算も多く予定されている。足元では、FRBの追加利上げ観測の高まりなどから、グロース株の株価チャートでトレンドが崩れているものが散見される。チャートから窺える投資家心理からみて決算のハードルは高そうで、今後の物色動向を占ううえでも株価反応に注目したい。また、中国貿易収支や工作機械受注が発表される予定で、弱い結果となった場合、関連株の下落につながる可能性があり注意したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は伸び悩みか。日米金利差がさらに拡大する可能性は高いものの、日本政府・日本銀行による円買い介入が行われる可能性が残されている。6月13-14日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合では政策金利の据え置きが決まったが、一部の当局者が追加利上げを提案していたことが公表されたFOMCの議事要旨で明らかになった。しかしながら、米国のインフレ沈静化が確認された場合、年内2回の追加利上げ観測は後退し、リスク回避のドル売り・円買いが強まる可能性がある。7月12日発表の6月消費者物価指数(CPI)と13日発表の6月卸売物価指数(PPI)が市場予想を下回った場合、年内2回の追加利上げ観測は後退し、一部で早期利下げ観測も浮上する可能性があるため、金利安・ドル安に振れやすい。
なお、イエレン米財務長官は6月30日、ドル高・円安の進行を阻止するための為替介入の可能性について、「日本の当局者と連絡を取り合っている」と発言している。これが日本政府による円安けん制を後押しする材料となっている。米長期金利が一段と上昇した場合、ドル買い・円売りが再び強まる展開はあり得るが、1ドル=145円に接近する局面ではドル売り・円買いの為替介入が実施されるとの見方は残されており、ドル上昇を抑える要因となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
7月10日(月):日・国際収支(経常収支)(5月)、日・景気ウォッチャー調査(6月)、地域経済報告(さくらリポート)(7月、日本銀行)、中・消費者物価指数(6月)、米・消費者信用残高(5月)、米・バー連邦準備制度理事会(FRB)副議長が討論会に参加、米・サンフランシスコ連銀総裁が講演、米・クリーブランド連銀総裁が講演、米・アトランタ連銀総裁が講演、など
7月11日(火):日・工作機械受注(6月)、独・ZEW期待指数(7月)、など
7月12日(水):日・国内企業物価指数(6月)、日・コア機械受注(5月)、NZ・ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、米・消費者物価コア指数(6月)、加・カナダ銀行(中央銀行)が政策金利発表、米・リッチモンド連銀総裁が講演、米・ミネアポリス連銀総裁がパネル討論会に参加、米・アトランタ連銀総裁が討論会に参加、米・クリーブランド連銀総裁が講演、米・地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、など
7月13日(木):日・決算発表→ファストリ、東宝、7&iHD、欧・ユーロ圏鉱工業生産指数(5月)、米・生産者物価コア指数(6月)、中・貿易収支(6月)、など
7月14日(金):日・鉱工業生産(5月)、米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報(7月)、など
7月15日(土):中・新築住宅価格(6月)
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予想レンジ:上限33200円-下限31700円
来週の東京株式市場は一進一退か。国内では月次売上動向で既に警戒感が高まっているファーストリテイリング<9983>をはじめ3-5月期決算の発表が終盤に入る。個別株物色の活発化が全体を下支えすることに期待したい。また7日引け後に発表された安川電機<6506>の第1四半期決算で四半期受注の底入れ感が確認されており、今後の主力製造業決算に対する期待も全体相場を支えそうだ。
一方、米6月雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったが、依然としてコロナ前の水準を上回っており、また失業率は低下、平均賃金の伸びは予想に反して加速した。予想を2倍以上も上回ったADP雇用リポートと合わせて総じて逼迫した労働市場が続いていることが示唆され、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測が高まっている。米10年債利回りは6日に4%を超え、3月2日以来の高水準にまで上昇。米10年債利回りから期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた米10年実質金利は6日に1.77%と、2009年8月以来の高水準にまで上昇した。金利高がハイテク・グロース(成長)株の調整を招くようであれば、今週末に25日移動平均線を割り込んだ日経平均の調整色が濃くなる可能性がある。
12日に米6月消費者物価指数(CPI)、13日には米6月卸売物価指数(PPI)が発表される。CPIは前年比+3.1%と5月(+4.0%)から鈍化する見込みだが、前月比では+0.3%と5月(+0.1%)から加速する見込み。一方、食品・エネルギーを除いたコア指数では前年比+5.0%、前月比+0.3%とそれぞれ5月(+5.3%、+0.4%)から鈍化する予想。PPIも総合およびコア指数はともに前年比では鈍化する見込みだが、前月比はプラスが予想されている。
CPIおよびPPIの前年比での伸び鈍化は強い雇用関連の指標を受けてから強まっているFRBの追加利上げ観測を緩和させるほどの影響があるかは微妙なところだ。むしろ、下振れた場合は想定線、上振れた場合はネガティブに捉えられる展開に注意を払っておく必要があろう。
週末には米国でJPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループなど銀行の決算発表が始まる。預金や貸出、貸倒引当金の動向から経営陣の先行きの景気見通しなどが注目され、結果を見極めたいとの思惑から、週末まで市場の方向感は出にくいかもしれない。
国内では週明けに発表される景気ウォッチャー調査に注目したい。国内景況感の改善が続いてきたが、前月分から現状判断DIおよび先行き判断DIともに低下に転じており、今回も揃って前月から低下が予想されている。連続しての低下は景況感の改善基調の一服感をより強く示唆することになり、海外投資家が日本株を買う理由の一つとして挙げてきた相対的な景況感の強さが弱まることになろう。
また、米金利が上昇するなかでも為替が円高気味にあることも短期的には日本株の上値抑制要因となりそうだ。日本銀行の内田副総裁が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正について「バランスをとって判断していきたい」と言及したことなどから、今月27-28日に開催される日銀金融政策決定会合での政策修正が意識されていることが背景にあるようだ。金融政策決定会合で改めて政策の現状維持が決まれば円安進行は再開するだろうが、それまではしばらく為替が株価をサポートする展開は期待しにくいだろう。
小売企業に加えて、Sansan<4443>やSHIFT<3697>、ベイカレント・コンサルティング<6532>などグロース株の筆頭格とされる企業決算も多く予定されている。足元では、FRBの追加利上げ観測の高まりなどから、グロース株の株価チャートでトレンドが崩れているものが散見される。チャートから窺える投資家心理からみて決算のハードルは高そうで、今後の物色動向を占ううえでも株価反応に注目したい。また、中国貿易収支や工作機械受注が発表される予定で、弱い結果となった場合、関連株の下落につながる可能性があり注意したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は伸び悩みか。日米金利差がさらに拡大する可能性は高いものの、日本政府・日本銀行による円買い介入が行われる可能性が残されている。6月13-14日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合では政策金利の据え置きが決まったが、一部の当局者が追加利上げを提案していたことが公表されたFOMCの議事要旨で明らかになった。しかしながら、米国のインフレ沈静化が確認された場合、年内2回の追加利上げ観測は後退し、リスク回避のドル売り・円買いが強まる可能性がある。7月12日発表の6月消費者物価指数(CPI)と13日発表の6月卸売物価指数(PPI)が市場予想を下回った場合、年内2回の追加利上げ観測は後退し、一部で早期利下げ観測も浮上する可能性があるため、金利安・ドル安に振れやすい。
なお、イエレン米財務長官は6月30日、ドル高・円安の進行を阻止するための為替介入の可能性について、「日本の当局者と連絡を取り合っている」と発言している。これが日本政府による円安けん制を後押しする材料となっている。米長期金利が一段と上昇した場合、ドル買い・円売りが再び強まる展開はあり得るが、1ドル=145円に接近する局面ではドル売り・円買いの為替介入が実施されるとの見方は残されており、ドル上昇を抑える要因となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
7月10日(月):日・国際収支(経常収支)(5月)、日・景気ウォッチャー調査(6月)、地域経済報告(さくらリポート)(7月、日本銀行)、中・消費者物価指数(6月)、米・消費者信用残高(5月)、米・バー連邦準備制度理事会(FRB)副議長が討論会に参加、米・サンフランシスコ連銀総裁が講演、米・クリーブランド連銀総裁が講演、米・アトランタ連銀総裁が講演、など
7月11日(火):日・工作機械受注(6月)、独・ZEW期待指数(7月)、など
7月12日(水):日・国内企業物価指数(6月)、日・コア機械受注(5月)、NZ・ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、米・消費者物価コア指数(6月)、加・カナダ銀行(中央銀行)が政策金利発表、米・リッチモンド連銀総裁が講演、米・ミネアポリス連銀総裁がパネル討論会に参加、米・アトランタ連銀総裁が討論会に参加、米・クリーブランド連銀総裁が講演、米・地区連銀経済報告(ベージュブック)公表、など
7月13日(木):日・決算発表→ファストリ、東宝、7&iHD、欧・ユーロ圏鉱工業生産指数(5月)、米・生産者物価コア指数(6月)、中・貿易収支(6月)、など
7月14日(金):日・鉱工業生産(5月)、米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報(7月)、など
7月15日(土):中・新築住宅価格(6月)
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関連銘柄
銘柄 | 株価 | 前日比 |
---|---|---|
3697
|
17,735.0
(12/25)
|
+630.0
(+3.68%)
|
4443
|
2,289.0
(12/25)
|
-56.0
(-2.38%)
|
6506
|
3,936.0
(12/25)
|
-14.0
(-0.35%)
|
6532
|
5,183.0
(12/25)
|
-62.0
(-1.18%)
|
9983
|
53,010.0
(12/25)
|
+140.0
(+0.26%)
|
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