[資源・新興国通貨6/12~16のポイント&注目通貨]豪中銀とカナダ中銀が利上げ決定

著者:八代和也
投稿:2023/06/12 13:12

今週のポイント

今週(6/12- )は、FOMC(米連邦公開市場委員会)が15-16日に開催されます。豪ドル/米ドルやNZドル/米ドル、米ドル/カナダドルはこの結果に大きく影響を受けそうです。FOMCで政策金利が据え置かれたとしても、その次の7月25-26日のFOMCで利上げするとの観測が市場で高まれば、米ドルが全般的に堅調に推移してその裏返しで豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは下値を試し、一方で米ドル/カナダドルは上値を試す可能性があります。

クロス円は、日銀の金融政策決定会合(15-16日)や主要国の株価動向に注目です。日銀が現在の大規模な金融緩和策を今後も続ける姿勢を示す、あるいは主要国の株価が上昇すれば、円安が進んでクロス円が堅調に推移しそうです。

***
トルコリラは先週(6/5- )、対米ドルや対円で史上最安値をつけました。トルコのシムシェキ財務相(6/3就任)は4日に「(トルコは)合理的な根拠に戻る以外に選択肢はない」と述べました。これを受けて、市場ではエルドアン大統領による非正統的な政策が修正されてトルコ当局の通貨管理も緩和されるとの観測が強まっており、これが足もとのトルコリラ安の主な要因と考えられます。

9日には、TCMB(トルコ中銀)総裁がカブジュオール氏からエルカン氏へと交代しました。カブジュオール氏は21年3月にTCMB総裁に就任し、低金利を求めるエルドアン大統領の意向に沿って高インフレにもかかわらず利下げを推進。就任時に19.00%だった政策金利は、現在8.50%まで引き下げられました。TCMB総裁の交代は、金融政策の転換を示唆するものと言えそうです。

TCMBの次回定例会合は22日です。臨時会合の開催の可能性を含め、実際に利上げするのかどうか、TCMBに利上げを催促する動き(さらなるトルコリラ売り)になる可能性があります。

今週の注目通貨ペア(1):<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.09000NZドル~1.11000NZドル>

現在、RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)の金融政策スタンスには差があります。

【RBA】
RBAは6月6日の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を3.85%から4.10%へと引き上げました。

RBAは声明で、「最近のデータは、インフレ見通しに対する上振れリスクが高まっていることを示している」と指摘。(豪州)経済とインフレがどのように推移するか次第としつつも、「妥当な期間内にインフレ率が目標に戻ることを確実にするためには、ある程度のさらなる金融政策の引き締めが必要になるかもしれない」とし、今後さらに利上げする可能性を示しました。

【RBNZ】
RBNZは5月24日の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を5.25%から5.50%へと引き上げました。RBNZは一方で、声明で「政策金利は当面制約的な水準にとどまる必要がある」と表明し、また金融政策報告では「政策金利は5.50%でピーク」との見通しを示し、21年10月に開始した利上げサイクルの終了を示唆しました。

RBAとRBNZの金融政策スタンスの差(RBA:利上げ、RBNZ:据え置き)を考えると、豪ドル/NZドルは堅調に推移しそうです。15日に発表されるNZの1-3月期GDP(国内総生産)と豪州の5月雇用統計の結果によっては、豪ドル/NZドルは2月20日高値の1.08222NZドルに向かって上昇する可能性があります。

今週の注目通貨ペア(2): <カナダドル/円 予想レンジ:103.000円~106.000円>

BOC(カナダ中銀)は6月7日の政策会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を4.50%から4.75%へと引き上げました。利上げは1月以来3会合ぶりです。

BOCの声明では、4月の会合時にあった「政策金利をさらに引き上げる用意がある」が削除されました。「インフレの動向と見通しを引き続き評価する」とし、「特に過剰な需要やインフレ期待、賃金の伸び、企業の価格設定行動が、インフレ目標の達成と一致しているかどうかを評価していく」にとどめ、今後の金融政策については言及しませんでした。

しかし、声明は全般にタカ派的と判断でき、BOCは今後さらに利上げする可能性があります。声明は、経済における需要超過は想定以上に持続しており、「CPI(消費者物価指数)が(BOCの)目標の2%を大きく上回る水準で推移するとの懸念が強まった」と指摘。また、「CPI上昇率は23年夏に3%程度に低下する」との見通しを維持したものの、4月会合時の「その後はより緩やかに低下し、24年末までに目標の2%に達すると予想している」が削除されました。

市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込む次回7月12日会合の確率は0.25%幅の利上げが約7割、据え置きが約3割。BOCの追加利上げ観測は、カナダドルにとってプラスと考えられます。15-16日の日銀金融政策決定会合の結果によっては、カナダドル/円は105.862円(22/11/14高値)に接近するかもしれません。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想