*15:01JST Jトラスト Research Memo(1):2023年12月期通期業績予想は保守的な計画を据え置き
■要約
Jトラスト<8508>は、国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業を中心に資産規模を拡大してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による世界的な経済環境悪化に直面し、抜本的な事業ポートフォリオの再編に着手した。ただ、事業環境の落ち着きに伴い、利益拡大に向けて、成長性が高いJT親愛貯蓄銀行(株)及びNexus Card(株)を再グループ化するとともに、エイチ・エス証券(株)(2022年10月1日付でJトラストグローバル証券(株)に商号変更)を子会社化した。さらに、2023年2月には、不動産事業を行う(株)ミライノベートを吸収合併した。今後は主力の金融3事業に一層注力するとともに不動産事業を拡大することで、成長を図る計画だ。
1. 2023年12月期第1四半期の業績概要
2023年12月期第1四半期の営業収益は26,136百万円(前年同期比111.6%増)、営業利益は9,293百万円(同365.2%増)、税引前利益は9,966百万円(同146.1%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は9,124百万円(同147.7%増)と大幅な増収増益決算となった。特に営業利益と税引前利益は、第1四半期時点で通期の計画を既に達成するなど、各利益は順調に推移している。セグメント別営業損益では、東南アジア金融事業は7億円の利益となるなど計画を23億円上回り、収益の柱になりつつある。また、韓国及びモンゴル金融事業の損失額は、計画15億円より10億円下回る5億円に留まった。安定した業績を続ける日本金融事業でも、8億円の利益を計上した。以上から、コア事業である金融3事業の営業利益は、2022年12月期第4四半期は3億円に減速したものの、当期は10億円に回復している。加えて、新設した不動産・再生可能エネルギー事業では、ミライノベートを吸収合併したことによる負ののれん益により92億円の営業利益となり、会社全体の好業績をけん引した。
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績については期初の予想を維持し、営業収益115,000百万円(前期比39.5%増)、営業利益8,500百万円(同41.0%減)、税引前利益9,000百万円(同47.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益13,000百万円(同2.9%増)を見込んでいる。営業収益は過去最高の更新を計画しているものの、営業利益は韓国の金利上昇等の影響から減益を予想する。セグメント別営業損益について、日本金融事業は利益拡大を見込み、不動産・再生可能エネルギー事業では負ののれん益計上に加え、不動産事業会社の事業規模拡大に伴う大幅な増益を計画する。一方、韓国及びモンゴル金融事業は金利上昇等の影響から、また東南アジア金融事業は企業の経営環境の悪化等に備えた貸倒引当金(損失評価引当金)の積み増しなどから、それぞれ損失計上を見込んでいる。ただ第1四半期決算は計画を上回る推移をしており、従来と同様に期初の業績予想は保守的であると弊社では見ている。配当は前期比4.0円増配の通期14.0円(中間1.0円、期末13.0円)を予定していることに加えて、優待利回りが高い株主優待を復活させており、株主還元の充実にも取り組む経営姿勢は評価できよう。
3. 成長戦略
同社は、2020年12月期より抜本的な事業ポートフォリオの再編を進めてきた結果、成長フェーズに転換している。2021年12月期は黒字化を実現し、2022年12月期~2024年12月期の中期業績予想の下、増収増益計画を推進していたが、経営環境の変化を踏まえて新たに3か年計画(2023年12月期~2025年12月期)を発表した。最終年度となる2025年12月期に営業収益1,587億円、営業利益191億円を目指すが、韓国の金利上昇等の影響を受け、2023年12月期の営業利益は減益を予想する。セグメント別では、韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は、高金利預金の剥落に伴い、2024年12月期には正常化すると見られる。東南アジア金融事業はJ トラスト銀行インドネシア(以下、BJI)を中心に利益拡大が見込まれ、成長ドライバーとして期待される。日本金融事業は安定的な利益を計上する見通しだ。これらにM&Aによるプラス要因が加われば、さらなる増収増益も期待される。事実、2022年4月に傘下に収めたJトラストグローバル証券は新たな金融商品の提供を開始し、(株)日本保証の保証残高の拡大を目指している。また、2023年2月にはミライノベートを吸収合併するなど、今後も不動産事業を一層拡大することで、同社グループの成長に寄与すると見られる。
■Key Points
・日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業など、アジアの金融事業を中心に発展を目指す金融グループ。新たに不動産・再生可能エネルギー事業にも注力
・2023年12月期第1四半期は、東南アジア金融事業の増益に、不動産・再生可能エネルギー事業の負ののれん益が加わり、計画を大きく上回る大幅増益
・2023年12月期は期初予想どおり韓国の金利上昇等の影響から減益を見込むが、保守的な予想。増配及び株主優待制度復活など株主還元を充実
・日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業での安定的利益計上、東南アジア金融事業の利益拡大、不動産事業の利益貢献などにより、グループの持続的な成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<AS>
Jトラスト<8508>は、国内外で数々のM&Aにより成長を続けてきた結果、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業を中心に資産規模を拡大してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による世界的な経済環境悪化に直面し、抜本的な事業ポートフォリオの再編に着手した。ただ、事業環境の落ち着きに伴い、利益拡大に向けて、成長性が高いJT親愛貯蓄銀行(株)及びNexus Card(株)を再グループ化するとともに、エイチ・エス証券(株)(2022年10月1日付でJトラストグローバル証券(株)に商号変更)を子会社化した。さらに、2023年2月には、不動産事業を行う(株)ミライノベートを吸収合併した。今後は主力の金融3事業に一層注力するとともに不動産事業を拡大することで、成長を図る計画だ。
1. 2023年12月期第1四半期の業績概要
2023年12月期第1四半期の営業収益は26,136百万円(前年同期比111.6%増)、営業利益は9,293百万円(同365.2%増)、税引前利益は9,966百万円(同146.1%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は9,124百万円(同147.7%増)と大幅な増収増益決算となった。特に営業利益と税引前利益は、第1四半期時点で通期の計画を既に達成するなど、各利益は順調に推移している。セグメント別営業損益では、東南アジア金融事業は7億円の利益となるなど計画を23億円上回り、収益の柱になりつつある。また、韓国及びモンゴル金融事業の損失額は、計画15億円より10億円下回る5億円に留まった。安定した業績を続ける日本金融事業でも、8億円の利益を計上した。以上から、コア事業である金融3事業の営業利益は、2022年12月期第4四半期は3億円に減速したものの、当期は10億円に回復している。加えて、新設した不動産・再生可能エネルギー事業では、ミライノベートを吸収合併したことによる負ののれん益により92億円の営業利益となり、会社全体の好業績をけん引した。
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績については期初の予想を維持し、営業収益115,000百万円(前期比39.5%増)、営業利益8,500百万円(同41.0%減)、税引前利益9,000百万円(同47.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益13,000百万円(同2.9%増)を見込んでいる。営業収益は過去最高の更新を計画しているものの、営業利益は韓国の金利上昇等の影響から減益を予想する。セグメント別営業損益について、日本金融事業は利益拡大を見込み、不動産・再生可能エネルギー事業では負ののれん益計上に加え、不動産事業会社の事業規模拡大に伴う大幅な増益を計画する。一方、韓国及びモンゴル金融事業は金利上昇等の影響から、また東南アジア金融事業は企業の経営環境の悪化等に備えた貸倒引当金(損失評価引当金)の積み増しなどから、それぞれ損失計上を見込んでいる。ただ第1四半期決算は計画を上回る推移をしており、従来と同様に期初の業績予想は保守的であると弊社では見ている。配当は前期比4.0円増配の通期14.0円(中間1.0円、期末13.0円)を予定していることに加えて、優待利回りが高い株主優待を復活させており、株主還元の充実にも取り組む経営姿勢は評価できよう。
3. 成長戦略
同社は、2020年12月期より抜本的な事業ポートフォリオの再編を進めてきた結果、成長フェーズに転換している。2021年12月期は黒字化を実現し、2022年12月期~2024年12月期の中期業績予想の下、増収増益計画を推進していたが、経営環境の変化を踏まえて新たに3か年計画(2023年12月期~2025年12月期)を発表した。最終年度となる2025年12月期に営業収益1,587億円、営業利益191億円を目指すが、韓国の金利上昇等の影響を受け、2023年12月期の営業利益は減益を予想する。セグメント別では、韓国及びモンゴル金融事業の営業利益は、高金利預金の剥落に伴い、2024年12月期には正常化すると見られる。東南アジア金融事業はJ トラスト銀行インドネシア(以下、BJI)を中心に利益拡大が見込まれ、成長ドライバーとして期待される。日本金融事業は安定的な利益を計上する見通しだ。これらにM&Aによるプラス要因が加われば、さらなる増収増益も期待される。事実、2022年4月に傘下に収めたJトラストグローバル証券は新たな金融商品の提供を開始し、(株)日本保証の保証残高の拡大を目指している。また、2023年2月にはミライノベートを吸収合併するなど、今後も不動産事業を一層拡大することで、同社グループの成長に寄与すると見られる。
■Key Points
・日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業など、アジアの金融事業を中心に発展を目指す金融グループ。新たに不動産・再生可能エネルギー事業にも注力
・2023年12月期第1四半期は、東南アジア金融事業の増益に、不動産・再生可能エネルギー事業の負ののれん益が加わり、計画を大きく上回る大幅増益
・2023年12月期は期初予想どおり韓国の金利上昇等の影響から減益を見込むが、保守的な予想。増配及び株主優待制度復活など株主還元を充実
・日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業での安定的利益計上、東南アジア金融事業の利益拡大、不動産事業の利益貢献などにより、グループの持続的な成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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