*14:41JST Appier Research Memo(1):2022年12月期は1年前倒しで通期営業利益の黒字化を達成
■要約
Appier Group<4180>は、人工知能(以下、AI)を使って顧客のマーケティング投資に対して予測可能な売上に貢献するソリューションを提供するSaaS※1企業である。潜在的なユーザーの予測及び獲得からユーザーの維持及び関係構築、販売に至るマーケティングのすべてのプロセス(以下、フル・ファネル※2)をカバーする包括的なAIソリューションをワンストップで提供している。同社のソリューション間の連携により、分断された顧客データを簡単に統合し、データと行動を価値に変換することで、顧客にさらなるROI※3の向上をもたらしている。また、同社のソリューションは、AI導入に必要な開発期間とリソースを大幅に短縮することができる。マーケティング担当者にとっては、保有しているファーストパーティを活用し、コンシューマージャーニーの「フル・ファネル」に対応することで、日々の課題に合わせ、様々な手作業を自動化し、より戦略的な意思決定に集中できるようになる。また、経営層においては、CMO(Chief Marketing Officer)をはじめとする経営幹部が、将来のユーザー行動を予測し、そこから得られる知見を活用することで、マーケティングの意思決定を、過去のデータに基づく受動的な対応から、消費者の行動を予測した能動的な意思決定に変化させることができ、その結果、重要な場面でのより効果的な関与や機会損失の最小化を可能にする。同社のソリューションは、マーケティングとセールスの幅広い事例に対応し、顧客のマーケティング投資に対して測定可能なリターンを提供するため、効率的な新規顧客獲得と既存顧客の堅調な維持・拡大により、事業の成長を持続させている。
※1 Software as a Serviceの略。インターネット等の通信ネットワークを通じて、利用者が必要なものを必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアまたはその提供形態。
※2 「ファネル」は「じょうご」の意味。顧客の商品・サービスの購入における行動フローを表すマーケティング用語。
※3 マーケティングへの投資額に対して得た利益の比率。
1. 2022年12月期の業績概要
2022年12月期の連結業績※1は、売上収益が前期比53.4%増の19,427百万円、EBITDAが1,363百万円(前期は42百万円)、営業利益が50百万円(同1,117百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益が21百万円(同1,179百万円の損失)となった。過去最高業績を更新するとともに、各利益項目は1年前倒しで黒字化を達成した。売上収益では、既存顧客・新規顧客双方からのバランスのとれた増収により同53%増収となった。既存顧客については、ROI重視のソリューションによるアップセル・プロダクトシナジー推進によるクロスセル、新規顧客については、新たな地域及び新たな業種への拡大、大規模な顧客の獲得による効率的なマーケティングが増収要因となった。売上総利益は、アルゴリズムの精度向上による主力商品である「CrossX(クロスエックス)」の粗利率改善等により直近4年間で3倍超となった。事業規模の拡大に伴い営業費用は増加したものの、売上収益比は同5.4ポイント低下しており、コスト構造は改善している。トピックスとしては、複数の地域で多様な成長ドライバーを展開し、顧客業種の拡大に注力した結果、多様な収益基盤を構築し継続的な成長モメンタムを実現している。地域別では米国及びEMEAが伸長し、売上収益は前期比7倍超に急伸、業種別では新規業種となるデジタルコンテンツ※2の売上収益が同2倍超に拡大した。
※1 業績及び業績見通しについての各値は百万円未満四捨五入(以下、同様)。
※2 デジタルコンテンツにはゲーム、エンターテインメント、イーブック、オンラインストリーミングを含む。
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績ついては、売上収益が前期比31.0%増の25,454百万円、EBITDAが同71.9%増の2,342百万円、営業利益が同964.3%増の535百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が718百万円(前期は21百万円の利益)を見込んでいる。同社のコアバリューである革新的な技術力を強化し、成長と収益性を両立することで過去最高業績の更新を目指す。売上収益については、各地域でのさらなるシェア拡大及びバランスの取れた顧客業種拡大により新規顧客を拡大するとともに、ROI重視のソリューションによるアップセル・プロダクトシナジーによるクロスセルを推進することで成長する一方で、収益性についてはアルゴリズムの精度向上等による粗利益率改善、事業効率性と営業生産性の更なる向上等による営業利益率改善を目指す。新規ソリューションの認知度向上・新規顧客獲得や「CrossX」のアルゴリズム改善などにより、営業と研究開発の高い生産性を目指す。ファーストパーティデータの動向や生成AIの認知度など、業界の追い風は、同社の今後の成長に引き続き有利に働いている。データ利用に関する規制の強化やプライバシー意識の高まりは、ファーストパーティデータの重要性を際立たせている。また、最近では、生成AIを利用したChatGPTの採用により、AI技術の受容性が高まり、同社にとってより多くのビジネスチャンスが拡がっている。
3. 中長期的な経営戦略
事業活動におけるAIの導入状況を見てみると、AI利用の重要性に対する認識は高まっているものの、専門技術を有するスタッフの欠乏や分析対象となるデータの分断により、AIの導入を完了している企業は少ないのが現状だ。一方で、インターネットやモバイルデバイスの急速な普及とファーストパーティデータ活用ニーズの高まり、不確実な事業環境でのROI予測の重要性などを背景に、今後もAIの重要性が高まっていくことが予想される。このような事業環境で同社は、中長期的な経営戦略として(1) AI技術の継続的な強化と常に最先端の新たなソリューションの開発、(2) 顧客基盤の地域及び業種拡大、(3) アップセル(既利用ソリューションの増加)・クロスセル(他ソリューションの提供)による既存顧客との取引拡大、(4) TAM(Total Addressable Market=獲得可能な最大市場規模)の拡大、(5) M&A戦略、を掲げ、これらを推進することで事業拡大と企業価値向上を目指している。
■Key Points
・顧客のマーケティング投資に対し、AIを使って予測可能な売上に貢献するソリューションを提供するSaaS企業
・2022年12月期は1年前倒しで各利益の黒字化を達成、過去最高業績を達成
・同社のコアバリューである革新的な技術力を強化し、成長と収益性を両立することで過去最高業績の更新を目指す
・AI技術の強化や顧客拡大、M&A戦略などを推進することで、事業拡大と企業価値向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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Appier Group<4180>は、人工知能(以下、AI)を使って顧客のマーケティング投資に対して予測可能な売上に貢献するソリューションを提供するSaaS※1企業である。潜在的なユーザーの予測及び獲得からユーザーの維持及び関係構築、販売に至るマーケティングのすべてのプロセス(以下、フル・ファネル※2)をカバーする包括的なAIソリューションをワンストップで提供している。同社のソリューション間の連携により、分断された顧客データを簡単に統合し、データと行動を価値に変換することで、顧客にさらなるROI※3の向上をもたらしている。また、同社のソリューションは、AI導入に必要な開発期間とリソースを大幅に短縮することができる。マーケティング担当者にとっては、保有しているファーストパーティを活用し、コンシューマージャーニーの「フル・ファネル」に対応することで、日々の課題に合わせ、様々な手作業を自動化し、より戦略的な意思決定に集中できるようになる。また、経営層においては、CMO(Chief Marketing Officer)をはじめとする経営幹部が、将来のユーザー行動を予測し、そこから得られる知見を活用することで、マーケティングの意思決定を、過去のデータに基づく受動的な対応から、消費者の行動を予測した能動的な意思決定に変化させることができ、その結果、重要な場面でのより効果的な関与や機会損失の最小化を可能にする。同社のソリューションは、マーケティングとセールスの幅広い事例に対応し、顧客のマーケティング投資に対して測定可能なリターンを提供するため、効率的な新規顧客獲得と既存顧客の堅調な維持・拡大により、事業の成長を持続させている。
※1 Software as a Serviceの略。インターネット等の通信ネットワークを通じて、利用者が必要なものを必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェアまたはその提供形態。
※2 「ファネル」は「じょうご」の意味。顧客の商品・サービスの購入における行動フローを表すマーケティング用語。
※3 マーケティングへの投資額に対して得た利益の比率。
1. 2022年12月期の業績概要
2022年12月期の連結業績※1は、売上収益が前期比53.4%増の19,427百万円、EBITDAが1,363百万円(前期は42百万円)、営業利益が50百万円(同1,117百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益が21百万円(同1,179百万円の損失)となった。過去最高業績を更新するとともに、各利益項目は1年前倒しで黒字化を達成した。売上収益では、既存顧客・新規顧客双方からのバランスのとれた増収により同53%増収となった。既存顧客については、ROI重視のソリューションによるアップセル・プロダクトシナジー推進によるクロスセル、新規顧客については、新たな地域及び新たな業種への拡大、大規模な顧客の獲得による効率的なマーケティングが増収要因となった。売上総利益は、アルゴリズムの精度向上による主力商品である「CrossX(クロスエックス)」の粗利率改善等により直近4年間で3倍超となった。事業規模の拡大に伴い営業費用は増加したものの、売上収益比は同5.4ポイント低下しており、コスト構造は改善している。トピックスとしては、複数の地域で多様な成長ドライバーを展開し、顧客業種の拡大に注力した結果、多様な収益基盤を構築し継続的な成長モメンタムを実現している。地域別では米国及びEMEAが伸長し、売上収益は前期比7倍超に急伸、業種別では新規業種となるデジタルコンテンツ※2の売上収益が同2倍超に拡大した。
※1 業績及び業績見通しについての各値は百万円未満四捨五入(以下、同様)。
※2 デジタルコンテンツにはゲーム、エンターテインメント、イーブック、オンラインストリーミングを含む。
2. 2023年12月期の業績見通し
2023年12月期の連結業績ついては、売上収益が前期比31.0%増の25,454百万円、EBITDAが同71.9%増の2,342百万円、営業利益が同964.3%増の535百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が718百万円(前期は21百万円の利益)を見込んでいる。同社のコアバリューである革新的な技術力を強化し、成長と収益性を両立することで過去最高業績の更新を目指す。売上収益については、各地域でのさらなるシェア拡大及びバランスの取れた顧客業種拡大により新規顧客を拡大するとともに、ROI重視のソリューションによるアップセル・プロダクトシナジーによるクロスセルを推進することで成長する一方で、収益性についてはアルゴリズムの精度向上等による粗利益率改善、事業効率性と営業生産性の更なる向上等による営業利益率改善を目指す。新規ソリューションの認知度向上・新規顧客獲得や「CrossX」のアルゴリズム改善などにより、営業と研究開発の高い生産性を目指す。ファーストパーティデータの動向や生成AIの認知度など、業界の追い風は、同社の今後の成長に引き続き有利に働いている。データ利用に関する規制の強化やプライバシー意識の高まりは、ファーストパーティデータの重要性を際立たせている。また、最近では、生成AIを利用したChatGPTの採用により、AI技術の受容性が高まり、同社にとってより多くのビジネスチャンスが拡がっている。
3. 中長期的な経営戦略
事業活動におけるAIの導入状況を見てみると、AI利用の重要性に対する認識は高まっているものの、専門技術を有するスタッフの欠乏や分析対象となるデータの分断により、AIの導入を完了している企業は少ないのが現状だ。一方で、インターネットやモバイルデバイスの急速な普及とファーストパーティデータ活用ニーズの高まり、不確実な事業環境でのROI予測の重要性などを背景に、今後もAIの重要性が高まっていくことが予想される。このような事業環境で同社は、中長期的な経営戦略として(1) AI技術の継続的な強化と常に最先端の新たなソリューションの開発、(2) 顧客基盤の地域及び業種拡大、(3) アップセル(既利用ソリューションの増加)・クロスセル(他ソリューションの提供)による既存顧客との取引拡大、(4) TAM(Total Addressable Market=獲得可能な最大市場規模)の拡大、(5) M&A戦略、を掲げ、これらを推進することで事業拡大と企業価値向上を目指している。
■Key Points
・顧客のマーケティング投資に対し、AIを使って予測可能な売上に貢献するソリューションを提供するSaaS企業
・2022年12月期は1年前倒しで各利益の黒字化を達成、過去最高業績を達成
・同社のコアバリューである革新的な技術力を強化し、成長と収益性を両立することで過去最高業績の更新を目指す
・AI技術の強化や顧客拡大、M&A戦略などを推進することで、事業拡大と企業価値向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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