[資源・新興国通貨3/20~24のポイント&注目通貨] 銀行関連の報道や主要国の株価動向に要注意

著者:八代和也
投稿:2023/03/20 13:06

今週のポイント

3月10日の米シリコンバレーバンクの破たんをきっかけに、金融不安から外為市場は不安定な値動きになっています。欧州や米国の銀行関連の報道、主要国の株価動向には要注意。金融不安がさらに高まる、あるいは主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)の動きが強まる場合、豪ドル/円やカナダドル/円などのクロス円は下押しする可能性があります。

豪ドル/米ドルやNZドル/米ドル、米ドル/カナダドルは、21-22日のFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果を受けての米ドルの動向に影響を受けそうです。米ドルが全般的に強含む場合には、豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは軟調に推移し、一方で米ドル/カナダドルは堅調に推移するとみられます。

TCMB(トルコ中銀)は23日に政策会合を開きます。TCMBは前回2月の会合で、0.50%の利下げを行うことを決定。政策金利を9.00%から8.50%へと引き下げました。23日の会合については、2月会合時の声明で「利下げ後の金融政策スタンスは、地震後の必要な回復を支えるのに適切だ」との認識が示されたこともあり、現行の8.50%に据え置かれそうです。TCMBが利下げすれば、サプライズとなってトルコリラが下落しそうです。

今週の注目通貨ペア(1):<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.06000NZドル~1.08000NZドル>

RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)の金融政策スタンスや市場の金融政策見通しからみれば、豪ドル/NZドルは上値が重い展開になりそうです。

ロウRBA総裁は3月8日の講演で、「インフレを目標に戻すため、金融政策のさらなる引き締めが必要になる可能性がある」としつつも、「利上げの停止が適切なポイントに近づいている」と発言。「次回会合(4/4)までのデータが利上げの停止が適切なことを示唆すれば、それを行う(利上げを停止する)」と語りました。

一方でRBNZは2月22日の政策会合でタカ派的な姿勢を示しました。会合では、より大幅な0.75%の利上げも検討されたうえ、政策金利は 5.50%でピークに達するとの見通しもRBNZは据え置きました(現在の政策金利は4.75%)。

その後、米シリコンバレーバンクの破たん(10日)をきっかけに金融不安が高まりました。これを受けて市場ではRBAの利上げ観測が後退し、RBAは4月に利上げを停止するとの見方が大勢となりました。RBNZについては、市場では政策金利のピーク水準に関する有力な見方が5.50%から5.25%へと低下したものの、それでも4月と5月にいずれも0.25%の利上げが行われるとの見方が優勢です。

豪ドル/NZドルは上値が重い展開になりそう。目先の下値メドとして、1.06205NZドル(22/12/29安値)が挙げられます。

今週の注目通貨ペア(2):<カナダドル/円 予想レンジ:95.000円~99.000円>

BOC(カナダ中銀)は3月8日の政策会合で、政策金利を4.50%に据え置くことを決定。22年3月に開始した利上げを停止しました。

3月会合時の声明では、「経済がBOCの見通しにおおむね沿って推移することを条件に、政策金利を現在の水準に維持する」との方針を改めて表明。声明は一方で、「インフレ率を2%の目標に戻すために必要であれば、政策金利をさらに引き上げる用意がある」とし、利上げ再開の可能性は残しました。

BOC会合後、米シリコンバレーバンクが破たんし、それをきっかけに金融不安が高まりました。これを受けて「BOCの次の一手は、利上げではなく利下げ」との観測が市場で浮上しており、このことはカナダドルにとってマイナス材料と考えられます。

金融不安が一段と高まる場合、カナダドル/円には下押し圧力が加わりそうです。BOCの利下げ観測がさらに強まると考えられるうえ、リスクオフ(リスク回避)の動きによって円高圧力が強まる可能性があるからです。

原油価格の動向にも要注意です。原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は17日に一時1バレル=65.17ドルへと下落し、21年12月以来の安値をつけました。原油価格の下落が続く場合、カナダドル安材料になる可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想