[資源・新興国通貨3/13~17のポイント&注目通貨] 豪中銀は近く利上げ停止も!?

著者:八代和也
投稿:2023/03/13 15:11

今週のポイント

米国の2月CPI(消費者物価指数)が14日に、2月PPI(生産者物価指数)が15日に発表されます。これら米経済指標の結果に豪ドル/米ドルやNZドル/米ドル、米ドル/カナダドルが反応しそうです。米FRBの利上げ観測が強まる場合には、米ドル/カナダドルは堅調に推移し、一方で豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは軟調に推移しそうです。

米国では、10日にシリコンバレーバンク、12日にはシグネチャーバンクが破綻しました。米金融システムへの不安が強まれば、米ドルが全般的に下落して米ドル/カナダドルは上値が重くなり、一方で豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは底堅く推移する可能性もあります。

主要国の株価動向には注意が必要です。株価が下落を続ければリスクオフ(リスク回避)の動きが強まり、クロス円(豪ドル/円やカナダドル/円など)は下押しする可能性があります。

16日には、NZの22年10-12月期GDP(国内総生産)と豪州の2月雇用統計が発表されます。これらの結果を受け、市場のRBNZ(NZ中銀)とRBA(豪中銀)の金融政策見通しが変化するかどうかに注目です。

今週の注目通貨ペア(1):<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.06000NZドル~1.09000NZドル>

豪ドル/NZドルは3月10日に一時1.07206NZドルへと下落し、22年12月30日以来の安値をつけました。豪ドル/NZドル下落の主な要因として、RBA(豪中銀)とRBNZ(NZ中銀)の政策スタンスの差が挙げられます。

RBAは3月7日の政策会合で利上げすることを決定したものの、声明におけるフォワードガイダンス(将来の金融政策の方針をあらかじめ示したもの)を修正しました。2月7日の会合時は「今後数カ月間で政策金利のさらなる上昇(further increases)が必要になると予想している」とし、複数回の利上げを示唆していました。それが3月は「金融政策のさらなる引き締め(further tightening)が必要になると予想している」へと変わり、「今後数カ月間」も削除されました。

さらにロウRBA総裁は8日の講演で、「インフレを目標に戻すため、金融政策のさらなる引き締めが必要になる可能性がある」としつつも、「利上げの停止が適切なポイントに近づいている」と発言。「次回会合(4/4)までのデータが利上げの停止が適切なことを示唆すれば、それを行う(利上げを停止する)」と述べ、早ければ4月にも利上げを停止する可能性があることを示しました。

一方で、RBNZ(NZ中銀)はタカ派的な姿勢を示しました。2月22日の政策会合(0.50%利上げすることを決定)では、「0.75%の利上げ」を行うことも検討されたほか、政策金利は 5.50%でピークに達するとの見通しもRBNZは据え置きました。

今週(3/13- )は、NZの22年10-12月期GDPや豪州の2月雇用統計が発表されます(いずれも16日)。これらがRBAとRBNZの金融政策スタンスの差を一段と強く意識させる結果になれば、豪ドル/NZドルはさらに下落しそうです。豪ドル/NZドルは、1.06205NZドル(22/12/26安値)が下値メドです。

今週の注目通貨ペア(2):<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.35000カナダドル~1.40000カナダドル>

BOC(カナダ中銀)は8日に政策会合を開き、政策金利を4.50%に据え置くことを決定。BOCが政策金利を据え置いたのは、22年3月に利上げを開始してから初めてです。

カナダの1月CPI(消費者物価指数)は前年比5.9%と、BOCのインフレ目標(2%を中心に1~3%のレンジ)を引き続き上回ったものの、上昇率は22年12月の6.3%から鈍化しました。BOCは声明で「最新のデータは、CPI上昇率が今年半ばに3%近辺に低下するとのBOCの見通しに沿っている」と評価しました。

声明はまた、経済がBOCの見通しにおおむね沿って推移することを条件に、政策金利を現在の水準(4.50%)に維持する方針を改めて示しました。一方で、「経済動向とこれまでの利上げの影響を引き続き検証し、インフレ率を2%の目標に戻すために必要であれば、政策金利をさらに引き上げる用意がある」とし、利上げ再開の可能性は残しました。

米FRBは利上げを続ける意向を表明しているうえ、データ次第では利上げペースを加速させることを示唆しました。FRBとBOCの金融政策は方向性に差があります。CPIやPPIなどの米経済指標でFRBの利上げ観測が強まれば、米ドル/カナダドルは上値を試す展開になりそう。米ドル/カナダドルは、1.39746カナダドル(22/10/13高値)が上値メドです。

米国ではシリコンバレーバンク(10日)とシグネチャーバンク(12日)が破綻しました。米金融システムへの不安が強まる可能性があり、その場合には米ドルが全般的に下落することも考えられます。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想