ヨコレイ Research Memo(3):「自然対流冷却方式」、庫内社員オペレーションに強み(2)

配信元:フィスコ
投稿:2023/01/17 15:13
■会社概要

c) 社会的ニーズに対応した冷蔵倉庫
横浜冷凍<2874>は地球温暖化やエネルギー問題など持続可能な社会に対する関心が高まるなかで、早くから自然環境にやさしい物流システムの構築に注力してきた。具体的には、オゾン層破壊の原因となるフロン冷媒の段階的廃止と自然冷媒の導入、太陽光発電パネルの冷蔵倉庫への設置などを挙げることができる。加えて、IT技術による入出庫の効率化、ペーパーレス化、トラック予約受付システムによる待機時間の削減などによっても環境負荷の軽減に取り組んでいる。これらの取り組みを着実に進めることによって、自然冷媒導入率は68.1%、太陽光発電量は6,710MWhとなった(2022年9月期末時点)。また、2015年と比べて収容能力当たりの温室効果ガス排出量は31.0%削減することに成功している(2022年9月期末時点)。今後は、「ヨコレイサステナビリティビジョン2030」の下、さらなる環境負荷の軽減に取り組む方針である。

同社は、「複合型マルチ物流サービス」施設の運営にも注力している。これは、冷凍食品消費の増加、ドライバー不足、環境問題などの外部環境の変化に率先して対応したものだ。複合型マルチ物流サービスとは、商品の保管・配送・仕分け・積み替えの複数機能を1つの物流センターに集約したものである。従来、複数の物流拠点で行われていたオペレーションを1つの物流センターに集約することによって、配送時の温室効果ガス排出抑制やトラックドライバー不足といった課題に対応している。今後は顧客のニーズや冷蔵倉庫の立地特性などを踏まえて、複合型マルチ物流サービス対応可能な倉庫を拡充する計画である。持続可能な社会の実現に貢献するために、事業活動を通じて排出する温室効果ガスを抑制することに対する関心が今後も高まっていくことが想定される。加えて、2024年にはトラックドライバーの長時間労働規制が強化されることが予定されており、より効率的な配送が求められる。これらの外部環境から同社の「複合型マルチ物流サービス」に対するニーズが高まっていくものと弊社は見ている。

(2) 食品販売事業
同社事業のもう1つの柱となるのが食品販売事業だ。食品の産地・消費地に営業所を構え、国内・海外の多様な産地から直接高品質な食品を調達している。そして、これらの食品を商社、仲卸業者、食品メーカー、外食産業、流通チェーンなどの各事業者に販売しているほか、海外への輸出も積極的に行っている。経験豊富な営業担当者が世界の生産地・生産者を選定し、仕入・販売まで一貫して手掛けるビジネススタイルを確立している。同社の消費地型営業所は国内の主要都市に設置しており、量販、外食チェーンや仲卸業者のニーズに応え、加工製品や製品原料をタイムリーに提供している。産地型営業所は国内外の漁港や農産地など水産物や農産物の産地に展開している。原料サプライヤーとして現地の担当者が自らの目で高品質な水産・畜産・農産品を見極め、調達を行っている。また産地に営業所を置くことによって、供給量などを適宜把握することができる。これにより、ある産地の供給力が少なくなりそうであればほかの産地から融通するなど柔軟な対応を行うことができ、環境変化に強い供給体制の構築にもつながっている。これら国内並びに世界各国に張り巡らされた調達ネットワークを生かして、エビ、サーモン、サバ、アジ、イカ、トビコ、ポーク、チキンなど多岐にわたる食材を調達している。

同社は、海外展開にも注力してきた。1989年にTHAI YOKOREI CO.,LTD.を設立し、バンコクの営業所を東南アジア地域のハブとして稼働させたことを皮切りに、2009年には海外に広域ネットワークを持つ水産物専門商社からの営業譲渡(のちに(株)アライアンスシーフーズとして子会社化)、2020年には同社グループの(株)クローバートレーディングとアライアンスシーフーズの完全合併と海外強化のための基盤づくりを確実に進めてきた。近年は、主要調達先である東南アジアや北欧をはじめ、ロシア、北米、南米にもネットワークを拡大している。加えて、国際的に評価の高い日本の水産物の海外輸出にも注力している。実際、海外展開強化の効果は業績に結実している。2022年9月期には水産品において産地事業所や海外パートナーとの連携が進み、国内量販店や外食等への販売が拡大した。そしてホタテ、ペルーイカ、トビコの取り扱いを拡大するなど、海外における販路拡大にも注力した。

パートナー企業であるHofseth International AS(ホフセス)の養殖場において、ITを活用した徹底した生育環境の管理、厳選された飼料などによって、健康的で質の良い脂の乗ったサーモンを育てている。特に同サーモンに対する顧客からの評価は高く、2022年9月期においては新規納入先が拡大している。

さらに食品を扱ううえで重要となる食品の安全・安心を確保している。各営業担当者が原料の調達から同社拠点での輸入、輸出、保管、仕分け、凍結、販売までを一元管理しており、これにより、各プロセスにおける食品のトレーサビリティ(複数段階における食品の移動を把握すること)を確保し、高品質の維持と外部からの異物の混入を防ぐシステムを構築している。

現在は、中期経営計画「創る力」の下で、収益性の向上や同社の強みを生かせる事業品(ノルウェーのサーモンなどのこと)の販売拡大などの重点施策に注力している。これにより、売上の拡大と収益性の向上を実現する計画だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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配信元: フィスコ

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