■業績動向
3. 財務状況と経営指標
Branding Engineer<7352>の2022年8月期の財務状況を見ると、資産合計は2,511百万円(前期末比1,186百万円増)となった。主な変動要因は、現金及び預金393百万円、売掛金356百万円、建物43百万円、のれん261百万円、投資有価証券66百万円の増加が挙げられる。売掛金356百万円の増加は売上高の増加に伴うもので、建物43百万円の増加はオフィス移転に伴う増加である。また、投資有価証券66百万円の増加は、BEファンド※のプロダクトによる企業への出資分である。負債合計は1,774百万円(同1,031百万円増)となった。主な変動要因は、買掛金250百万円、1年内返済予定の長期借入金108百万円、長期借入金542百万円の増加が挙げられる。長期借入金542百万円の増加は、TSRソリューションズ(株)のM&A費用及びオフィス移転費用が主な要因である。純資産合計については736百万円(同155百万円増)となった。
※BEファンドとは、2021年1月に同社が設立した、スタートアップへの出資から事業開発支援までを行う出資プロジェクトである。
自己資本比率は29.2%(同14.5pt減)となったが、上述のとおりM&A等の積極投資により借入金が増加したことが主な要因である。同社は飛躍的成長のための投資フェーズであること、流動比率が172.7%を確保していることを勘案すれば、安全性に特段問題はないものと弊社は分析する。
2022年8月期のキャッシュ・フローは、現金及び現金同等物の当期末残高は874百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の増加244百万円、税金等調整前当期純利益213百万円、未払金の増加42百万円の影響により215百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出120百万円、投資有価証券の取得による支出76百万円、有形固定資産の取得による支出60百万円の影響により、259百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは436百万円の収入となった。主な要因は長期借入金の返済による支出182百万円があった一方、長期借入れによる収入600百万円があったことによる。
4. 市場動向
国内人材市場は「一般職業紹介状況(令和4年9月分)について」(厚生労働省)によると、2022年9月の有効求人倍率が前月比1.34倍、新規求人倍率は2.27倍を記録するなど人材需要は回復傾向にあり、これは同社にとっても追い風となると考えられる。またIT市場においても、同資料によれば、主要産業別に見た場合に情報通信業の新規求人が2022年9月は前年同月比7.2%の増加であった。また、2021年10月から見ると、月(時期)によって変動はあるものの、1年のうち4分の3は前年同月比で2ケタの新規求人が発生している状態となった。このように、IT人材の不足は企業のDX推進の加速と比例して急速に高まっており、各企業にとってもIT人材を集めることが急務となっている。DX投資案件の増加基調やITエンジニアに対する企業の高い採用意欲から今後の同社の市場環境は良好なものと弊社は分析する。IT人材の不足に関して「IT人材需給に関する調査(2019年3月)」(経済産業省)によれば、2030年には最大78.7万人の供給不足が想定されている。同社でもエンジニアプラットフォームサービス、特にMidworks事業においては社会の急激なDXの流れもあり、クライアントの需要に対してIT人材の供給が追い付いていない状態である。こうしたことから、ITエンジニアの有効求人倍率は一般職業の有効求人倍率と比較して高い状態となっていると考えられる。このエンジニア不足の流れから同社事業及びITエンジニアデータベースに関わるニーズは今後も堅調に推移していくだろう。また、IT人材の不足の背景には、日本企業の賃金が欧米のように職種の市場価値に応じて決まらず、年功序列の要素が根強い点も背景に挙げられる。同社のサービスはフリーランスエンジニアと企業とを、適正な市場価格によってマッチングさせるサービスであり、IT人材不足という市場環境を追い風に、既存の雇用契約によらない新しい働き方として今後一層拡大していくものと弊社では見ている。
マーケティングプラットフォームサービスについても、毎年電通グループ<4324>が公表している「2021年日本の広告費」によると、2021年はコロナ禍の影響が緩和したことで広告市場は大きく回復しており、広告業界全体では前年比10.4%増となった。2011年から右肩上がりであった成長がストップしたものの、インターネット広告費は前年比21.4%増で推移しており、継続的に高い成長率を維持している。今後もインターネット広告の重要性は高まっていくと予想され、市場の堅調な推移に合わせて同社も成長していくものと弊社は考える。
5. DePropのM&A
同社はクロスセルによる売上機会の創出を目的に、2022年9月14日にDePropの株式を100%取得し、完全子会社化した。DePropでは、PM人材・PMO人材のみでクライアント支援を行っていたが、今後は同社のエンジニア・プログラマーを交えたプロジェクト単位での支援を行うことが可能となる。また、DePropのノウハウを活用することで、PM・PMO業務を担うことができる人材を同社内で育成することが可能となる。既存顧客に対して、PM・PMO人材を提案できるようにすることで、各顧客のより複雑なニーズに対応できる体制を目指す。
DePropの顧客にはエンタープライズ企業も含まれている。エンタープライズ企業開拓の課題には、フリーランスのITエンジニアを利用する抵抗感への対策が挙げられるが、DePropではプロジェクトを適切に管理できる人材を社員ベースで有している。エンタープライズ企業を含む顧客網と、プロジェクトの手綱を握り管理するノウハウを有したDePropと、確かなスキルを持ったフリーランスのITエンジニアを有する同社が組むことで、シナジー発揮による売上拡大が期待できると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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3. 財務状況と経営指標
Branding Engineer<7352>の2022年8月期の財務状況を見ると、資産合計は2,511百万円(前期末比1,186百万円増)となった。主な変動要因は、現金及び預金393百万円、売掛金356百万円、建物43百万円、のれん261百万円、投資有価証券66百万円の増加が挙げられる。売掛金356百万円の増加は売上高の増加に伴うもので、建物43百万円の増加はオフィス移転に伴う増加である。また、投資有価証券66百万円の増加は、BEファンド※のプロダクトによる企業への出資分である。負債合計は1,774百万円(同1,031百万円増)となった。主な変動要因は、買掛金250百万円、1年内返済予定の長期借入金108百万円、長期借入金542百万円の増加が挙げられる。長期借入金542百万円の増加は、TSRソリューションズ(株)のM&A費用及びオフィス移転費用が主な要因である。純資産合計については736百万円(同155百万円増)となった。
※BEファンドとは、2021年1月に同社が設立した、スタートアップへの出資から事業開発支援までを行う出資プロジェクトである。
自己資本比率は29.2%(同14.5pt減)となったが、上述のとおりM&A等の積極投資により借入金が増加したことが主な要因である。同社は飛躍的成長のための投資フェーズであること、流動比率が172.7%を確保していることを勘案すれば、安全性に特段問題はないものと弊社は分析する。
2022年8月期のキャッシュ・フローは、現金及び現金同等物の当期末残高は874百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の増加244百万円、税金等調整前当期純利益213百万円、未払金の増加42百万円の影響により215百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出120百万円、投資有価証券の取得による支出76百万円、有形固定資産の取得による支出60百万円の影響により、259百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは436百万円の収入となった。主な要因は長期借入金の返済による支出182百万円があった一方、長期借入れによる収入600百万円があったことによる。
4. 市場動向
国内人材市場は「一般職業紹介状況(令和4年9月分)について」(厚生労働省)によると、2022年9月の有効求人倍率が前月比1.34倍、新規求人倍率は2.27倍を記録するなど人材需要は回復傾向にあり、これは同社にとっても追い風となると考えられる。またIT市場においても、同資料によれば、主要産業別に見た場合に情報通信業の新規求人が2022年9月は前年同月比7.2%の増加であった。また、2021年10月から見ると、月(時期)によって変動はあるものの、1年のうち4分の3は前年同月比で2ケタの新規求人が発生している状態となった。このように、IT人材の不足は企業のDX推進の加速と比例して急速に高まっており、各企業にとってもIT人材を集めることが急務となっている。DX投資案件の増加基調やITエンジニアに対する企業の高い採用意欲から今後の同社の市場環境は良好なものと弊社は分析する。IT人材の不足に関して「IT人材需給に関する調査(2019年3月)」(経済産業省)によれば、2030年には最大78.7万人の供給不足が想定されている。同社でもエンジニアプラットフォームサービス、特にMidworks事業においては社会の急激なDXの流れもあり、クライアントの需要に対してIT人材の供給が追い付いていない状態である。こうしたことから、ITエンジニアの有効求人倍率は一般職業の有効求人倍率と比較して高い状態となっていると考えられる。このエンジニア不足の流れから同社事業及びITエンジニアデータベースに関わるニーズは今後も堅調に推移していくだろう。また、IT人材の不足の背景には、日本企業の賃金が欧米のように職種の市場価値に応じて決まらず、年功序列の要素が根強い点も背景に挙げられる。同社のサービスはフリーランスエンジニアと企業とを、適正な市場価格によってマッチングさせるサービスであり、IT人材不足という市場環境を追い風に、既存の雇用契約によらない新しい働き方として今後一層拡大していくものと弊社では見ている。
マーケティングプラットフォームサービスについても、毎年電通グループ<4324>が公表している「2021年日本の広告費」によると、2021年はコロナ禍の影響が緩和したことで広告市場は大きく回復しており、広告業界全体では前年比10.4%増となった。2011年から右肩上がりであった成長がストップしたものの、インターネット広告費は前年比21.4%増で推移しており、継続的に高い成長率を維持している。今後もインターネット広告の重要性は高まっていくと予想され、市場の堅調な推移に合わせて同社も成長していくものと弊社は考える。
5. DePropのM&A
同社はクロスセルによる売上機会の創出を目的に、2022年9月14日にDePropの株式を100%取得し、完全子会社化した。DePropでは、PM人材・PMO人材のみでクライアント支援を行っていたが、今後は同社のエンジニア・プログラマーを交えたプロジェクト単位での支援を行うことが可能となる。また、DePropのノウハウを活用することで、PM・PMO業務を担うことができる人材を同社内で育成することが可能となる。既存顧客に対して、PM・PMO人材を提案できるようにすることで、各顧客のより複雑なニーズに対応できる体制を目指す。
DePropの顧客にはエンタープライズ企業も含まれている。エンタープライズ企業開拓の課題には、フリーランスのITエンジニアを利用する抵抗感への対策が挙げられるが、DePropではプロジェクトを適切に管理できる人材を社員ベースで有している。エンタープライズ企業を含む顧客網と、プロジェクトの手綱を握り管理するノウハウを有したDePropと、確かなスキルを持ったフリーランスのITエンジニアを有する同社が組むことで、シナジー発揮による売上拡大が期待できると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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