豪ドル
RBA(豪中銀)は22年5月に利上げを開始し、12月まで8会合連続で利上げを実施。政策金利は22年12月26日時点で3.10%です。
RBAは22年12月会合時の声明で「今後さらに金利を引き上げると予想している」との見通しを維持したものの、政策金利を据え置くことも検討されました。RBAは早ければ23年1-3月期に利上げを停止して政策金利のピーク水準は3.60%になるとの見方が市場では有力。RBAが実際に利上げを停止すれば、豪ドル/円や豪ドル/米ドルの上値を抑える要因になりそうです。
豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。豪ドル/円と豪ドル/米ドルのいずれも、米国など主要国の株価動向には注意が必要です。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)の動きが強まれば、豪ドルの下落要因になる可能性があります。
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【豪ドル/NZドル】
RBAは23年1-3月期に利上げを停止する可能性があり、また今後の利上げ幅はRBAよりもRBNZ(NZ中銀)の方が大きくなりそうです。これらを考えれば、豪ドル/NZドルには下押し圧力が加わりやすいとみられます。ただし、いずれはRBNZの利上げ停止観測が市場で強まると考えられます。その場合にはNZドル高要因が減退することになり、豪ドル/NZドルへの下押し圧力は緩和するとみられます。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)は利上げを停止するか否か。
・資源(主に鉄鉱石)価格の動向(資源価格の下落は豪ドルの下落要因)。
・中国経済の動向。中国経済の減速は豪ドルにとってマイナス材料。
・投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)。リスクオンは豪ドルの上昇要因。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は21年10月に利上げを開始し、22年11月まで9会合連続で利上げを実施。RBNZの政策金利は22年12月26日時点で4.25%です。
RBNZは23年も利上げを続ける意向を表明。22年11月の金融政策報告では、政策金利は23年7-9月期に5.50%でピークに達し、その後24年4-6月期までその水準に据え置かれるとの見通しが示されました。RBNZの見通し通りに利上げが行われれば、政策金利はあと1.25%上昇します。こうしたRBNZのタカ派的な姿勢は、NZドルにとってプラス材料になると考えられ、NZドル/円やNZドル/米ドルは底堅く推移しそうです。
ただ、23年半ばにかけてRBNZの利上げ停止観測が市場で強まっていくとみられます。その場合にはNZドル高要因が減退することになり、NZドル/円やNZドル/米ドルは上値が重くなる可能性があります。
NZドルは豪ドルと同様に、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)にも影響を受けやすいという特徴があります。主要国の株価が下落を続けるなどしてリスクオフ(リスク回避)の動きが強まる場合、NZドルの下落要因になる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は利上げを停止するか否か。
・中国経済の動向。中国経済の減速はNZドルにとってマイナス材料。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格の動向(乳製品価格の上昇はNZドルの上昇要因)。
・投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)。リスクオンはNZドルの上昇要因。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は22年3月に利上げを開始し、12月まで7会合連続で利上げを実施しました。
22年12月会合時の声明では、今後の金融政策について、10月会合時まであった「政策金利はさらに引き上げる必要があると予想している」との文言を削除。「需給のバランスを回復し、インフレ率を目標へと戻すために、政策金利をさらに引き上げる必要があるかどうかを検討する」とし、利上げを停止する可能性もあることを示しました。
利上げが実際に停止されれば、カナダドル高要因が減退することになります。また、日銀が金融政策を修正する(長期金利の変動幅のさらなる拡大など)との観測が市場で強まれば、カナダドル/円は上値が重い展開になると予想されます。
米ドル/カナダドルについては、23年はFRBが利上げを継続するとみられる一方、BOCは政策金利を据え置く可能性があります。FRBとBOCの金融政策スタンスの差をみれば、米ドル/カナダドルは堅調に推移しそうです。
ただ、FRBは23年中に利上げを停止すると考えられます。その観測が市場で強まる場合には米ドル安が全般的に進んで米ドル/カナダドルは下落傾向へと転じるとみられます。
カナダドル/円と米ドル/カナダドルのいずれも、原油価格の動向には注意が必要です。世界的な景気減速への懸念が強まれば、原油価格(米WTI原油先物が代表的な指標)には下押し圧力が加わりやすいと考えられます。原油価格の下落が続く場合、カナダドル安材料になるかもしれません。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)は利上げを停止するか否か。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の下落はカナダドルの下落要因)。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は12月22日に政策会合を開き、政策金利を9.00%に据え置きました。TCMBは11月の会合時に「利下げサイクルは終了した」と表明しており、その言葉通りの決定が今回下されました。
TCMBの声明では、金融政策の先行きについてのヒントは示されませんでした。ただ、トルコでは23年6月までに大統領選・議会選が実施される予定であり、大統領選を控えてエルドアン大統領がTCMBに対して再び利下げ圧力を強める可能性があります。TCMBが利下げを再開すれば、トルコリラが下押ししそうです。
大統領選については、エルドアン大統領が再選すればTCMBの金融政策に大統領が介入する状況は変わらないとみられ、TCMBが利上げするのは引き続き困難と考えられます。一方、野党候補が勝利すれば、利上げがしやすくなりそうです。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)は利下げを再開するか否か。
・23年6月にトルコ大統領選、エルドアン大統領が再選するか否か。
・トルコの外貨準備は枯渇しないか。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢など地政学リスクには要注意。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は21年11月に利上げを開始し、22年11月まで7会合連続で利上げを実施。22年12月26日時点で政策金利は7.00%です。
南アフリカのCPI(消費者物価指数)上昇率は、SARBのインフレ目標である3~6%を上回っているものの、22年7月の7.8%(前年比)をピークに頭打ち感があります。上昇率は8月が7.6%、9月が7.5%、10月が7.6%、11月が7.4%でした。
原油などエネルギー価格の下落やSARBのこれまでの利上げの影響により、CPI上昇率は23年にSARBのインフレ目標に向かって鈍化していくとみられます。SARBは23年1-3月期に利上げを停止するとの観測が市場にはあり、実際に利上げが停止されれば、南アフリカランド/円は上値が重くなりそうです。
南アフリカでは発電設備の老朽化などによって慢性的な電力不足に陥っており、計画停電が度々実施されています。停電は景気の下押し要因のため、計画停電が長期間行われるようであれば、南アフリカ景気をめぐる懸念が強まる可能性もあります。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)は利上げを停止するか否か。
・たびたび実施される計画停電、停電が長期化すれば南アフリカ経済の下押し要因になりそう。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は22年12月15日に政策会合を開き、0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を10.00%から10.50%へと引き上げました。利上げは13会合連続で、利上げ幅は直近4会合の0.75%から縮小されました。
BOMは12月会合時の声明で、「次回(23/2/9)の政策会合では、政策金利をなお引き上げる必要があると考えている」とし、追加利上げを示唆。一方で、次回以降の会合について「政策金利の水準をさらに調整するその必要性とペースについて、その時の状況に基づいて評価していく」とも表明。利上げを近く停止する可能性も示しました。
BOMが実際に利上げを停止すれば、メキシコペソ高要因が減退することになり、メキシコペソ/円の上値を抑える材料になる可能性があります。また、日銀が金融政策を修正すれば、メキシコペソ/円は軟調に推移するかもしれません。
カナダドルと同様に原油価格の株価動向には要注意。原油価格の下落はメキシコペソにとってマイナス材料です。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)は利上げを停止するか否か。
・資源(特に原油)価格の動向(資源価格の下落はメキシコペソの下落要因)。
・メキシコ最大の輸出先である米国経済の動向。
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