■今後の見通し
3. 中期経営計画
システムインテグレータ<3826>は、2022年2月期より中期経営計画「SDGs Mind 2021」をスタートしている。計画名にSDGsを取り入れた理由は、同社の2つの経営理念とSDGsの考え方が合致するためだ。1つは、コーポレート・スローガンとして「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」ことを掲げている点にあり、もう1つは、同社が存在する意味として、「存続することではなく、社会に価値を提供し続けること」を掲げている点にある。業績目標については、最終年度となる2024年2月期に売上高で5,700百万円、経常利益で803百万円を掲げ、4期ぶりの過去最高益更新を目指している。
事業セグメント別では、2023年2月期に一旦落ち込むE-Commerce事業も含めて2024年2月期は主力3事業で増収増益を見込んでいる。新規事業については年間2億円程度の損失を予定しているものの、集中と選択により損益改善が期待できる。一方、売上高経常利益率については、「OBPM Neo」のクラウドシフトの影響が一巡するObject Browser事業を中心に上昇が見込まれる。業績目標を達成するためには、E-Commerce事業の受注回復及びERP事業の開発体制強化、不採算案件の撲滅がカギを握ると弊社では見ている。
業績目標を達成するための重点施策として、同社は以下の5点に取り組んでいる。
(1) 既存事業
既存事業においては、ブランド力の向上による顧客数の拡大や、事業内の新事業化に取り組むことで、年率2ケタの売上成長を目指す。事業内の新事業化の一例としては、ERP事業における「GRANDIT」と他社製品である生産スケジューラ「Asprova(アスプローバ)」を組み合わせることでソリューション提案力を強化し、受注拡大につなげている。E-Commerce事業では、「Adobe Commerce」をラインナップに加えたことで多様な顧客ニーズを取り込み、高成長につなげていく。
また、安定した収益基盤を構築するため、「OBPM Neo」や「TOPSIC」などのストック売上比率を引き上げていく。2023年2月期第2四半期累計のストック売上比率は31.9%と前期の26.2%から上昇した。事業セグメント別で見ると、Object Browser事業は「OBPM Neo」の伸長により同59.5%から60.7%に上昇し、今後も拡大傾向が続く見通しだ。また、E-Commerce事業は新規導入案件が減少した影響で同14.5%から26.0%に、ERP事業は同22.2%から25.8%にそれぞれ上昇している。両事業ともにカスタム要求の高い製品を主力としているため、新規導入案件の増加がストック売上比率低下の要因となるが、ERP事業はサブスクリプションモデルの「GRANDIT SaaS」が伸長すれば中期的に上昇していくと予想される。
(2) 海外展開
海外展開については、既述のとおり2022年10月に、開発体制の強化を目的にベトナムに開発子会社を設立した。ベトナムはエンジニアの人件費が比較的安価であるため、ERP事業やE-Commerce事業のオフショア拠点としてコスト競争力の強化につながると期待される。ただ、ベトナムには現地企業だけでなく外資系IT企業も多く進出しており、採用が予定どおり進むかがカギを握る。一方、海外市場での販売については、ベトナム子会社を軌道に乗せてから開始する考えで、「OBPM Neo」などの製品・サービス展開を視野に入れている。
(3) 新規事業
AI事業の「AISI∀-AD」については、2023年2月期より生産ラインでの実用化が始まっており、今後はPoCを積み重ねながら導入実績の積み上げを図る。「AISI∀-AD」以外の新規事業のうち、今後も収益化が困難と判断したものは撤退または売却することを2023年2月期中に決定する方針だ。継続となった事業については、継続的な機能強化や認知度向上に向けたマーケティングにより収益化を目指す。
(4) 社員のスキル向上
ここ数年、案件の大規模化、複雑化が進むERP事業やE-Commerce事業では、受注処理能力の拡大や収益性向上を図るために、エンジニアの体制強化とスキル向上が重要な経営課題となっている。このため新卒社員も含めてエンジニアの研修・教育に注力すると同時に、プロジェクトマネージャーの育成にも取り組む方針だ。
(5) アジアTOPの合理化企業
エンジニアの生産性向上に貢献する様々なツールを開発・提供しているほか、社内でも全社横断的な業務改革ワーキンググループを組織して生産性の向上に取り組んでいる。長期的にはアジアTOPの「働きたい会社」になることを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 中期経営計画
システムインテグレータ<3826>は、2022年2月期より中期経営計画「SDGs Mind 2021」をスタートしている。計画名にSDGsを取り入れた理由は、同社の2つの経営理念とSDGsの考え方が合致するためだ。1つは、コーポレート・スローガンとして「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」ことを掲げている点にあり、もう1つは、同社が存在する意味として、「存続することではなく、社会に価値を提供し続けること」を掲げている点にある。業績目標については、最終年度となる2024年2月期に売上高で5,700百万円、経常利益で803百万円を掲げ、4期ぶりの過去最高益更新を目指している。
事業セグメント別では、2023年2月期に一旦落ち込むE-Commerce事業も含めて2024年2月期は主力3事業で増収増益を見込んでいる。新規事業については年間2億円程度の損失を予定しているものの、集中と選択により損益改善が期待できる。一方、売上高経常利益率については、「OBPM Neo」のクラウドシフトの影響が一巡するObject Browser事業を中心に上昇が見込まれる。業績目標を達成するためには、E-Commerce事業の受注回復及びERP事業の開発体制強化、不採算案件の撲滅がカギを握ると弊社では見ている。
業績目標を達成するための重点施策として、同社は以下の5点に取り組んでいる。
(1) 既存事業
既存事業においては、ブランド力の向上による顧客数の拡大や、事業内の新事業化に取り組むことで、年率2ケタの売上成長を目指す。事業内の新事業化の一例としては、ERP事業における「GRANDIT」と他社製品である生産スケジューラ「Asprova(アスプローバ)」を組み合わせることでソリューション提案力を強化し、受注拡大につなげている。E-Commerce事業では、「Adobe Commerce」をラインナップに加えたことで多様な顧客ニーズを取り込み、高成長につなげていく。
また、安定した収益基盤を構築するため、「OBPM Neo」や「TOPSIC」などのストック売上比率を引き上げていく。2023年2月期第2四半期累計のストック売上比率は31.9%と前期の26.2%から上昇した。事業セグメント別で見ると、Object Browser事業は「OBPM Neo」の伸長により同59.5%から60.7%に上昇し、今後も拡大傾向が続く見通しだ。また、E-Commerce事業は新規導入案件が減少した影響で同14.5%から26.0%に、ERP事業は同22.2%から25.8%にそれぞれ上昇している。両事業ともにカスタム要求の高い製品を主力としているため、新規導入案件の増加がストック売上比率低下の要因となるが、ERP事業はサブスクリプションモデルの「GRANDIT SaaS」が伸長すれば中期的に上昇していくと予想される。
(2) 海外展開
海外展開については、既述のとおり2022年10月に、開発体制の強化を目的にベトナムに開発子会社を設立した。ベトナムはエンジニアの人件費が比較的安価であるため、ERP事業やE-Commerce事業のオフショア拠点としてコスト競争力の強化につながると期待される。ただ、ベトナムには現地企業だけでなく外資系IT企業も多く進出しており、採用が予定どおり進むかがカギを握る。一方、海外市場での販売については、ベトナム子会社を軌道に乗せてから開始する考えで、「OBPM Neo」などの製品・サービス展開を視野に入れている。
(3) 新規事業
AI事業の「AISI∀-AD」については、2023年2月期より生産ラインでの実用化が始まっており、今後はPoCを積み重ねながら導入実績の積み上げを図る。「AISI∀-AD」以外の新規事業のうち、今後も収益化が困難と判断したものは撤退または売却することを2023年2月期中に決定する方針だ。継続となった事業については、継続的な機能強化や認知度向上に向けたマーケティングにより収益化を目指す。
(4) 社員のスキル向上
ここ数年、案件の大規模化、複雑化が進むERP事業やE-Commerce事業では、受注処理能力の拡大や収益性向上を図るために、エンジニアの体制強化とスキル向上が重要な経営課題となっている。このため新卒社員も含めてエンジニアの研修・教育に注力すると同時に、プロジェクトマネージャーの育成にも取り組む方針だ。
(5) アジアTOPの合理化企業
エンジニアの生産性向上に貢献する様々なツールを開発・提供しているほか、社内でも全社横断的な業務改革ワーキンググループを組織して生産性の向上に取り組んでいる。長期的にはアジアTOPの「働きたい会社」になることを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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