いかに測るか、どう活用するか~デジタル化の中で

著者:鈴木 行生
投稿:2022/09/14 15:31

・情報をデジタル化して、その情報量を測るというのは情報理論として相当進んできた。しかし、情報の価値をどう測るのか。価値には主観的要素が入れるので数量化がしにくいし、バイアスも入りやすい。でも、価値の共有について一定の合意があるのであれば、客観化しやすくなる。

・デジタル化が進む中で、常に2つのことが問われている。デジタリゼーションとデジタライゼーションである。まずいかに数量化するか。次に、それを活用して、新しい価値を生む仕組みを作っていくか。数量化をデジタリゼーション、価値を生む仕組み作りをDX(デジタライゼーション)といっている。

・政策を立案する行政の世界では、EBPM(Evidence-based Policy Making:エビデンスに基づく政策立案)が求められており、それを盛んに実行しようとしている。

・一方で、どの世界でもKKOの人をみかける。“勘と経験と思い込み”で、強烈に自己主張するタイプである。政治家にもいるが、経営者にもいる。先を見通す特別の才能があるかもしれないので、蔑ろにはできない。しかし、何らかの思惑があって主張しているとすれば、それは誤った判断を誘導するので危うい。

・コロナパンデミックが発生した時、当初は十分なデータがなかった。データが集まってきても、それを分析して、次の予測に活かしていくモデルが十分でなかった。

・感染症防止と社会経済活動の確保、カギを握るワクチン接種や治療薬の開発、医療体制を確保するためのシステムなど、どれをみても新しい緊急事態に即応できず、後手後手となった。現在、次第にデータは整ってきたが、それを活かす仕組み(データを価値にかえるビジネスモデル)は依然として動きが鈍い。

・企業のリスクマネジメントと価値創造を改めて検討してみよう。6月に野村證券の張替一彰クォンツアナリスト(金融工学研究センター)の話をきく機会があった。投資家として、デジタル化のフレームワークをどのように身に付けておけばよいか。

・企業をとりまく社会経済環境をみると、①マクロリスク(市場リスク、環境リスク)、②セミマクロリスク(戦略リスク、信用リスク)、③プライベートリスク(オペレーショナルリスク、リーガルリスク)などがある。円安や原材料高といった市場リスク、気候変動などの環境リスク、技術革新や規制による戦略リスク、セキュリティに関わるオペレーショナルリスクなど、多様である。

・その企業にとって何が重要なリスクなのか。それを特定した上で、どのような手を打っているかを知りたい。

・それは自社にとって、管理可能なリスクなのか、あるいは管理不可能なリスクなのか。ESGを通して、どこまで管理可能かをみていく必要がある。管理できないリスクは、投資家(株主や債権者)自ら負う覚悟が必要である。

・次に、ESGを通して、リスクを低減させていくといっても、そのタイムスパンはいつまでに、その実効性はどのくらいあるのかが問われる。気候変動への対応、ダイバーシティやサプライチェーンへの対応、ガバナンスのグリップなどが、どの程度企業価値に結びつき、リスクを低減させるのかについて知りたい。

・リスクといっても常に二面性がある。リスクととらなければリターンはない、というように、プラスのリスクとマイナスのリスクがある。プラスのリスクは通常機会(オポチュニティ)と捉えられる。

・環境対応でいえば、CO2を減らすための手立てはリスク低減であるが、環境ビジネスを拡大して、企業価値を上げるとすれば、それは事業機会となる。実際、日立にとっては、豊富な事業機会が広がっている。

・また、CO2削減について、現在の状況、将来の目標、その移行期の進み方が問われる。現状の物理的リスク以上に、削減に向けての移行リスクが重要である。製鉄企業や化学企業では、移行リスクの低減に大きなイノベーションが必要とされる。

・こうした情報を的確に捉えて、データ化してほしい。そこには比較可能性を考慮する工夫も必要であろう。それを何らかのKPIとして開示してほしい。投資家としては、財務情報になる前の重要なESG情報として活用したい。

・では、財務情報とはどのように連携させていけばよいのか。PBR=ROE×PERという関係式において、PER=1/(資本コストWACC-期待利益成長率g)で示される。企業リスクの低減を図ればWACCが下がることになり、それはPERの上昇につながる。期待成長率gは、サステナビリティを表す持続的成長率とみなすことができる。このgが上がればPERが上昇することになる。

・計量モデルを得意とするクォンツ分析では、これらの要因をさらに個別のデータと結び付けて多変量解析を行い、一定のモデルを構築していく。

・そうすると、例えば、1)CO2を10%削減するとPBRが29%上昇する、3)女性取締役比率が10%上昇すると、PBRが4.7%上昇する、といったセンシティビティ分析ができる。張替氏はこのような分析を行っており、大変興味深い。

・ESGデータから、さまざまな要因(ファクター)をスコア化して、それが使えるようにしていく。こうしたスコアリング(データ化)とその分析モデルがいろいろ工夫されている。

・投資家としては、分析結果をそのまま利用するのではなく、1)どのようにデータ化されたのか、2)そのデータを分析モデルにどのように使っているのか、3)データに相関はあるとしても、それが本当に因果関係にまで結びつくのか、4)定量モデルの解釈が定性的な論理と合致しているのか、5)その上で新しい発見はどこにあるのか、を見出したい。

・まだデータ化できないものがいろいろある。DXで捉えきれない価値創造の仕組みもありそうだ。それを踏まえた上で、デジタル化時代の投資戦略に、新しい評価方式を加えていきたいと思う。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶ株式コラム

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