■今後の見通し
4. プライム市場の上場基準適合に向けた取り組み
(1) 上場維持基準の適合に向けた基本方針
2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しにおいて、インテリックス<8940>はプライム市場に移行した。ただ、移行基準日(2021年6月30日)におけるプライム市場の上場基準に対する適合状況では、流通株式数、流通株式比率、1日平均売買代金でクリアしたものの、流通株式時価総額が35.93億円と基準の100億円を下回る状況となっていた。このため、同社は上場維持基準を充足するための計画書(2027年5月期までを計画期間と定める)を2021年12月に東証に提出している。
流通株式時価総額100億円に向けた基本方針として、同社は以下の3点を掲げている。
a) 新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書及び中期経営計画に沿った業績向上
「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」及び「中期経営計画」において、同社は省エネリノベーション「ECOCUBE」の普及拡大とプラットフォーム事業の育成、並びにソリューション事業の着実な成長に取り組むことで、安定した事業ポートフォリオを構築し、収益の持続的成長を目指していく方針を打ち出した。定量的な数値目標として、2027年5月に経常利益32億円、親会社株主に帰属する当期純利益22億円、純資産175億円、ROE13%を設定した。2021年5月期実績と比較すると、経常利益で1.7倍、当期純利益と純資産でおおよそ2倍の水準となる。
収益目標が達成されれば、流通株式時価総額で100億円をクリアする可能性も高くなる。同社の2021年5月期までの過去5期間の平均予想PER9.0倍を前提とすれば、2027年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益で換算した流通株式時価総額は102億円となるためだ※。また、PBR(1株当たり純資産倍率)で見た場合、現状は0.4倍と解散価値を下回る評価となっている。東証プライム市場の不動産セクター平均が1.1倍、リノベーションマンションの競合で売上高もほぼ同規模水準であるスター・マイカ・ホールディングス<2975>が1.3倍の水準で評価されていることを考えると評価不足は否めない。
※9.0倍×22億円×51.6%=102億円。2022年7月時点の東証プライム市場の不動産セクター平均PER11倍まで評価されれば125億円となる。
この要因として、リノベーションマンション市場の競争激化によって同社の業績がここ数年伸び悩んだことで、成長期待が剥がれてしまったことにあると弊社では考えている。逆に言えば、業績が成長軌道に復帰する道筋が確認されれば、PBRも1倍以上に評価される可能性が高まることになる。2027年5月期に純資産が175億円まで拡大し、PBRで1.1倍程度に評価されれば流通株式時価総額で99億円となる※。2023年5月期の業績は先行投資負担により減益となるが、2024年5月期以降の利益成長の蓋然性が高まってくれば、現在割安に評価されているPBRの水準訂正が進むものと弊社では予想している。ちなみに、2022年5月期末における収益不動産物件の保有残高は長期・短期合わせて331億円となっており、これら物件の平均粗利益率が16%とすると53億円分の利益を内包していることになり、現在の時価総額(約50億円)を上回る水準となっている。
※1.1倍×175億円×51.6%=99億円。
b) コーポレートガバナンスの充実
同社は持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、コーポレートガバナンスの強化を経営の重要課題として位置付けている。特に、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に適用される原則を中心に、適用に向けて積極的に取り組んでいく方針だ。
c) IR活動の強化
同社は2023年5月期からスタートする5ヶ年の中期経営計画発表を皮切りに、積極的なIR情報の発信及び中長期的視点での投資家とのコミュニケーションを図ることで、同社に対する認知・理解・賛同・投資機会を促していく。また、機関投資家向けだけでなく、個人投資家向け説明会の開催やメディア露出等の各種IR施策を積極展開していくほか、サステナブルな社会づくりに貢献する企業としての認知度を高めることでESG投資家へも訴求していく考えだ。特に、「ECOCUBE」の拡大によって環境ソリューションカンパニーとしての認知度が高まれば、株価バリュエーション面でも水準訂正が期待できることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
4. プライム市場の上場基準適合に向けた取り組み
(1) 上場維持基準の適合に向けた基本方針
2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しにおいて、インテリックス<8940>はプライム市場に移行した。ただ、移行基準日(2021年6月30日)におけるプライム市場の上場基準に対する適合状況では、流通株式数、流通株式比率、1日平均売買代金でクリアしたものの、流通株式時価総額が35.93億円と基準の100億円を下回る状況となっていた。このため、同社は上場維持基準を充足するための計画書(2027年5月期までを計画期間と定める)を2021年12月に東証に提出している。
流通株式時価総額100億円に向けた基本方針として、同社は以下の3点を掲げている。
a) 新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書及び中期経営計画に沿った業績向上
「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」及び「中期経営計画」において、同社は省エネリノベーション「ECOCUBE」の普及拡大とプラットフォーム事業の育成、並びにソリューション事業の着実な成長に取り組むことで、安定した事業ポートフォリオを構築し、収益の持続的成長を目指していく方針を打ち出した。定量的な数値目標として、2027年5月に経常利益32億円、親会社株主に帰属する当期純利益22億円、純資産175億円、ROE13%を設定した。2021年5月期実績と比較すると、経常利益で1.7倍、当期純利益と純資産でおおよそ2倍の水準となる。
収益目標が達成されれば、流通株式時価総額で100億円をクリアする可能性も高くなる。同社の2021年5月期までの過去5期間の平均予想PER9.0倍を前提とすれば、2027年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益で換算した流通株式時価総額は102億円となるためだ※。また、PBR(1株当たり純資産倍率)で見た場合、現状は0.4倍と解散価値を下回る評価となっている。東証プライム市場の不動産セクター平均が1.1倍、リノベーションマンションの競合で売上高もほぼ同規模水準であるスター・マイカ・ホールディングス<2975>が1.3倍の水準で評価されていることを考えると評価不足は否めない。
※9.0倍×22億円×51.6%=102億円。2022年7月時点の東証プライム市場の不動産セクター平均PER11倍まで評価されれば125億円となる。
この要因として、リノベーションマンション市場の競争激化によって同社の業績がここ数年伸び悩んだことで、成長期待が剥がれてしまったことにあると弊社では考えている。逆に言えば、業績が成長軌道に復帰する道筋が確認されれば、PBRも1倍以上に評価される可能性が高まることになる。2027年5月期に純資産が175億円まで拡大し、PBRで1.1倍程度に評価されれば流通株式時価総額で99億円となる※。2023年5月期の業績は先行投資負担により減益となるが、2024年5月期以降の利益成長の蓋然性が高まってくれば、現在割安に評価されているPBRの水準訂正が進むものと弊社では予想している。ちなみに、2022年5月期末における収益不動産物件の保有残高は長期・短期合わせて331億円となっており、これら物件の平均粗利益率が16%とすると53億円分の利益を内包していることになり、現在の時価総額(約50億円)を上回る水準となっている。
※1.1倍×175億円×51.6%=99億円。
b) コーポレートガバナンスの充実
同社は持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、コーポレートガバナンスの強化を経営の重要課題として位置付けている。特に、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に適用される原則を中心に、適用に向けて積極的に取り組んでいく方針だ。
c) IR活動の強化
同社は2023年5月期からスタートする5ヶ年の中期経営計画発表を皮切りに、積極的なIR情報の発信及び中長期的視点での投資家とのコミュニケーションを図ることで、同社に対する認知・理解・賛同・投資機会を促していく。また、機関投資家向けだけでなく、個人投資家向け説明会の開催やメディア露出等の各種IR施策を積極展開していくほか、サステナブルな社会づくりに貢献する企業としての認知度を高めることでESG投資家へも訴求していく考えだ。特に、「ECOCUBE」の拡大によって環境ソリューションカンパニーとしての認知度が高まれば、株価バリュエーション面でも水準訂正が期待できることになる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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