[資源・新興国通貨8/8~12のポイント&注目通貨] メキシコペソ:メキシコ中銀は利上げへ

著者:八代和也
投稿:2022/08/08 14:57

今週のポイント

米国の7月雇用統計の強い結果を受けて、市場では米FRBが9月に0.75%の利上げを行うとの観測が強まりました。10日発表の米CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回る結果になれば、0.75%の利上げ観測が一段と強まって米ドルが全般的に堅調に推移しそう。豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは下値を試し、一方で米ドル/カナダドルは上値を試す可能性があります。

BOM(メキシコ中銀)が11日に政策会合を開きます。会合では利上げを行うことが決定されるとみられ、会合の結果がメキシコペソの材料になりそうです。

世界経済の減速によって原油需要が減少するとの懸念から、原油価格が軟調に推移しています。原油価格が下落を続ける場合には、カナダドルやメキシコペソに対して下押し圧力が加わるかもしれません。

今週の注目通貨ペア(1): <豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.10000NZドル~1.11700NZドル>

RBA(豪中銀)は、8月2日の政策会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を1.35%から1.85%へと引き上げました。利上げは4会合連続です。

RBAは声明で、「今後数カ月の間に、(豪州の)金融情勢を正常化するプロセスにおいてさらなる措置を講じる見込みだ」とし、今後さらに利上げを行うとの意向を表明。一方で、「あらかじめ決まった(利上げの)道筋にあるわけではない」との一文が今回追加されました。これは、利上げペースが今後鈍化する可能性もあると考えることができそうです。

市場では、RBAが次回9月6日の会合で0.50%の利上げを行うとの観測が後退しました。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)によると、市場が織り込む9月会合での利上げ幅は0.25%幅が48.5%、0.50%幅は51.5%です(本稿執筆時点)。0.50%の利上げ観測の後退は豪ドルにとってマイナス材料であり、豪ドル/NZドルは上値が重い展開になりそうです。

今週の注目通貨ペア(2):<メキシコペソ/円 予想レンジ:6.300円~6.800円>

BOM(メキシコ中銀)は前回6月の政策会合で0.75%の利上げを行っており、BOMの現在の政策金利は7.75%です。

メキシコの6月CPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比7.99%、変動の大きいエネルギーや食品を除いたコア指数は同7.49%と、上昇率はいずれも前月(7.65%、7.28%)から加速。BOMのインフレ目標(3%。2~4%が許容レンジ)からさらにかけ離れました。

インフレ圧力の強さが再確認されたことで、BOMは8月11日の会合で一段の利上げを行うことを決定しそう。利上げ幅は前回と同じく0.75%になると考えられます。市場は0.75%の利上げを予想しているため、その通りの結果になれば、5人の政策メンバーの投票行動やBOMのインフレ(CPI上昇率)見通しに注目です。全会一致で0.75%の利上げが決定される、あるいは会合でより大幅な利上げ(1.00%など)を主張するメンバーがいる場合、そしてBOMがインフレ見通しを上方修正すれば、メキシコペソにとってプラス材料になりそうです。

前回6月の会合では、全会一致で0.75%の利上げが決定されました。CPI上昇率については、総合指数が22年10-12月期に7.5%、23年10-12月期に3.2%、24年4-6月期に3.1%、コア指数は22年10-12月期に6.8%、23年10-12月期に3.2%、24年4-6月期に3.1%との見通しが示されました。

原油価格の動向には注意が必要かもしれません。原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は5日に一時約6カ月ぶりの安値をつけました。メキシコは産油国のため、原油安はメキシコペソにとってマイナス材料です。原油価格が下落を続ける場合、メキシコペソ/円の上値を抑える要因になる可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想