■今後の見通し
1. 2023年3月期の業績見通し
ソフト99コーポレーション<4464>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比2.0%増の29,000百万円、営業利益で同14.9%減の3,200百万円、経常利益で同14.2%減の3,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同18.3%減の2,250百万円と増収減益を見込む。地政学リスクの高まりを背景とした原油価格の上昇や中国における景気減速懸念など、外部環境の先行き不透明感が高まるなかで、すべての事業セグメントで増収を目指していく。一方、利益面ではファインケミカル事業における営業経費の増加、また2022年秋に稼働予定となっているポーラスマテリアル事業の新工場に係る減価償却費の発生(1.2億円)などが減益要因となる。例年、同社は保守的に計画を策定する傾向にあり、今回も同様に保守的な印象を受けるが、原油価格や国内自動車販売の動向などの先行きが見通しにくい状況でもあり、同計画を必達目標としている。
ポーラスマテリアル事業で新工場が2022年秋に稼働を開始、医療製品分野の拡大に向けた布石を打つ
2.事業セグメント別見通し
(1)ファインケミカル事業
ファインケミカル事業の売上高は前期比1.0%増の14,240百万円、営業利益は同11.4%減の1,960百万円と増収減益を見込んでいる。既述のとおり、減益要因は主に営業経費の増加による。売上高については前期の前半まではコロナ特需が一部残っていた影響もあり、微増収にとどまる見通しだ。
国内一般消費者向け販売(自動車分野)については、車外美装に加え、安全・安心・快適を新たな製品カテゴリーとして育成するとともに、自動車美装の簡略化ニーズに応える製品・サービスの開発に取り組むことで、顧客の獲得を図り増収を目指していく。業務用製品については、新車販売の回復が遅れるなかで、輸入車及び中古車ディーラー向けの拡大に注力していくほか、自動車分野以外の需要取り込みにも注力し増収を目指す。海外事業については、前期に前倒しで出荷したロシア向けの落ち込みをその他地域の拡大でカバーしきれず、前期比で6%程度の減少を見込んでいる。
また、家庭用品等については、メガネケア製品の販売が上期に前年同期比で若干減少すると見ている。マスク離れがどの程度進むかによって今後の落ち込み度合も変わってくる可能性はあるが、OEMでの展開や新規販路の開拓などでカバーしていく考えだ。一方で、新規市場を開拓すべくスポーツ競技者等をターゲットとしたアイウェア用超撥水スプレー「スポルファ レインホッパー」を2022年3月より発売した。同スプレーでレンズ部分をコーティングすることにより、ランニングやマリンスポーツ中の降雨や汗をかいたときなどにアイウェアのレンズにつく水滴を瞬時に弾き飛ばし、水滴で視界が妨げられないようにすることができる。これまでカー用品で培ってきた機能性薄膜技術を活用して開発した。現在、スポーツ量販店での販売を開始したところで、初動としてはまずまずのようだ。今後、時期を見てプロモーション活動を展開していくことにしている。
TPMS事業については、新規顧客の開拓に取り組むことで増収を目指すが、上期についてはトラック大手の日野自動車<7205>の生産が一部停止している影響で、苦戦する可能性がある。また、電子機器・ソフトウェア開発事業についても半導体等の部材不足が続くなかで上期は弱含む可能性があるが、受注残は豊富にあるだけに、部材不足が解消されれば増収に転じる可能性がある。
(2)ポーラスマテリアル事業
ポーラスマテリアル事業の売上高は前期比3.6%増の7,930百万円、営業利益は同24.0%減の840百万円となる見通しだ。売上高については産業資材で2.2億円の増収(うち、1億円は病院向けの医療廃棄物炭化焼却装置)、生活資材で0.5億円の増収を見込んでいる。一方、利益面では、既述のとおり新工場稼働に伴い、減価償却費が下期に1.2億円増えることや立ち上げに伴う一時的な費用増などが減益要因となるが、やや保守的な印象が強く上振れする可能性もあると弊社では見ている。
新工場については医療用製品や生活資材の製造拠点となり、従来よりも生産効率を高めた製造ラインを段階的に導入していく。このため、稼働率が上昇していけば収益性の向上が期待できることになる。また、同社は医療分野で事業拡大を図るため、クラス1※の医療製品の開発・製造を進めていく計画であり、認証に必要となる品質管理基準にも適合した工場となっている。今後アイオンの独自技術である高吸水性、高気孔率といった特長を持つPVA(ポリビニルアルコール)スポンジの製品力と、アズテックの企画開発力を融合することで新たな医療用製品の開発を進めていく。医療分野では衛生管理が厳しく求められる環境であり、アイオンのPVAスポンジの利用価値は大きいと弊社では見ている。また、アズテックは大規模医療施設など多くの顧客基盤を有していることから、新製品を販売していく際にもシナジー効果が期待できると弊社では見ている。一方、既存工場で空いたスペースには、半導体やハードディスク、電解銅箔など今後も需要の拡大が見込まれるハイテク分野向け産業資材の生産能力を増強していく予定となっている。
※クラス1は不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いと考えられる製品(一般医療機器)を指す。
(3)サービス事業、不動産関連事業
サービス、不動産関連事業の合計は、売上高で前期比2.3%増の6,830百万円、営業利益で同7.8%減の400百万円となる見通し。増収を見込んでいる事業としては、自動車教習所事業、温浴事業、生活用品企画販売事業等が挙げられる。自動車教習所については、70歳以上の高齢者ドライバーについて免許更新の際に高齢者講習の受講※が必須となったことで、受講者数の増加による売上増が見込まれる。生活用品企画販売事業については、展示会などへの出展も積極的に行いながら新商品の販売増を目指していく。一方、利益面では営業経費や物流費の増加が減益要因となる。
※普通免許更新の場合、座学、運転適性検査による指導、実車指導を含めた2時間の講習(6,450円)を運転免許センターまたは自動車教習所で受講することが義務付けられた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2023年3月期の業績見通し
ソフト99コーポレーション<4464>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比2.0%増の29,000百万円、営業利益で同14.9%減の3,200百万円、経常利益で同14.2%減の3,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同18.3%減の2,250百万円と増収減益を見込む。地政学リスクの高まりを背景とした原油価格の上昇や中国における景気減速懸念など、外部環境の先行き不透明感が高まるなかで、すべての事業セグメントで増収を目指していく。一方、利益面ではファインケミカル事業における営業経費の増加、また2022年秋に稼働予定となっているポーラスマテリアル事業の新工場に係る減価償却費の発生(1.2億円)などが減益要因となる。例年、同社は保守的に計画を策定する傾向にあり、今回も同様に保守的な印象を受けるが、原油価格や国内自動車販売の動向などの先行きが見通しにくい状況でもあり、同計画を必達目標としている。
ポーラスマテリアル事業で新工場が2022年秋に稼働を開始、医療製品分野の拡大に向けた布石を打つ
2.事業セグメント別見通し
(1)ファインケミカル事業
ファインケミカル事業の売上高は前期比1.0%増の14,240百万円、営業利益は同11.4%減の1,960百万円と増収減益を見込んでいる。既述のとおり、減益要因は主に営業経費の増加による。売上高については前期の前半まではコロナ特需が一部残っていた影響もあり、微増収にとどまる見通しだ。
国内一般消費者向け販売(自動車分野)については、車外美装に加え、安全・安心・快適を新たな製品カテゴリーとして育成するとともに、自動車美装の簡略化ニーズに応える製品・サービスの開発に取り組むことで、顧客の獲得を図り増収を目指していく。業務用製品については、新車販売の回復が遅れるなかで、輸入車及び中古車ディーラー向けの拡大に注力していくほか、自動車分野以外の需要取り込みにも注力し増収を目指す。海外事業については、前期に前倒しで出荷したロシア向けの落ち込みをその他地域の拡大でカバーしきれず、前期比で6%程度の減少を見込んでいる。
また、家庭用品等については、メガネケア製品の販売が上期に前年同期比で若干減少すると見ている。マスク離れがどの程度進むかによって今後の落ち込み度合も変わってくる可能性はあるが、OEMでの展開や新規販路の開拓などでカバーしていく考えだ。一方で、新規市場を開拓すべくスポーツ競技者等をターゲットとしたアイウェア用超撥水スプレー「スポルファ レインホッパー」を2022年3月より発売した。同スプレーでレンズ部分をコーティングすることにより、ランニングやマリンスポーツ中の降雨や汗をかいたときなどにアイウェアのレンズにつく水滴を瞬時に弾き飛ばし、水滴で視界が妨げられないようにすることができる。これまでカー用品で培ってきた機能性薄膜技術を活用して開発した。現在、スポーツ量販店での販売を開始したところで、初動としてはまずまずのようだ。今後、時期を見てプロモーション活動を展開していくことにしている。
TPMS事業については、新規顧客の開拓に取り組むことで増収を目指すが、上期についてはトラック大手の日野自動車<7205>の生産が一部停止している影響で、苦戦する可能性がある。また、電子機器・ソフトウェア開発事業についても半導体等の部材不足が続くなかで上期は弱含む可能性があるが、受注残は豊富にあるだけに、部材不足が解消されれば増収に転じる可能性がある。
(2)ポーラスマテリアル事業
ポーラスマテリアル事業の売上高は前期比3.6%増の7,930百万円、営業利益は同24.0%減の840百万円となる見通しだ。売上高については産業資材で2.2億円の増収(うち、1億円は病院向けの医療廃棄物炭化焼却装置)、生活資材で0.5億円の増収を見込んでいる。一方、利益面では、既述のとおり新工場稼働に伴い、減価償却費が下期に1.2億円増えることや立ち上げに伴う一時的な費用増などが減益要因となるが、やや保守的な印象が強く上振れする可能性もあると弊社では見ている。
新工場については医療用製品や生活資材の製造拠点となり、従来よりも生産効率を高めた製造ラインを段階的に導入していく。このため、稼働率が上昇していけば収益性の向上が期待できることになる。また、同社は医療分野で事業拡大を図るため、クラス1※の医療製品の開発・製造を進めていく計画であり、認証に必要となる品質管理基準にも適合した工場となっている。今後アイオンの独自技術である高吸水性、高気孔率といった特長を持つPVA(ポリビニルアルコール)スポンジの製品力と、アズテックの企画開発力を融合することで新たな医療用製品の開発を進めていく。医療分野では衛生管理が厳しく求められる環境であり、アイオンのPVAスポンジの利用価値は大きいと弊社では見ている。また、アズテックは大規模医療施設など多くの顧客基盤を有していることから、新製品を販売していく際にもシナジー効果が期待できると弊社では見ている。一方、既存工場で空いたスペースには、半導体やハードディスク、電解銅箔など今後も需要の拡大が見込まれるハイテク分野向け産業資材の生産能力を増強していく予定となっている。
※クラス1は不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低いと考えられる製品(一般医療機器)を指す。
(3)サービス事業、不動産関連事業
サービス、不動産関連事業の合計は、売上高で前期比2.3%増の6,830百万円、営業利益で同7.8%減の400百万円となる見通し。増収を見込んでいる事業としては、自動車教習所事業、温浴事業、生活用品企画販売事業等が挙げられる。自動車教習所については、70歳以上の高齢者ドライバーについて免許更新の際に高齢者講習の受講※が必須となったことで、受講者数の増加による売上増が見込まれる。生活用品企画販売事業については、展示会などへの出展も積極的に行いながら新商品の販売増を目指していく。一方、利益面では営業経費や物流費の増加が減益要因となる。
※普通免許更新の場合、座学、運転適性検査による指導、実車指導を含めた2時間の講習(6,450円)を運転免許センターまたは自動車教習所で受講することが義務付けられた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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