米ドル/円、上値トライ“虎視眈眈”の時間帯

著者:津田隆光
投稿:2022/04/08 12:21

『黒田ライン』突破成否がポイント

米ドル/円・日足・複合チャート
米ドル/円・日足・複合チャート出所:マネースクエアFXチャート

【注目ポイント】『黒田ライン』(=125.000円)を上抜け突破するか否か
【見通し①】上抜け突破なら、「125.860円」付近、ないしはそれ以上の水準までの上昇も視野に
【見通し②】再度上値抑制なら、「121.300円」付近までの下押しも想定
【基本姿勢】「Don’t fight the Fed」(中銀とは戦うな/国策には逆らうな)


先月28日、米ドル/円は直近高値となる「125.047円」を付けた後、いわゆる『黒田ライン』※と呼ばれる125円付近での心理的な売り圧力もあり、一旦修正安の動きに。同日のローソク足が上ヒゲの長い陽線である「上影(うわかげ)陽線」の形状となっていることからも、その上値抵抗圧力の強さがうかがえます。(※『黒田ライン』:15年6月、衆院での黒田総裁発言に基づく市場の憶測水準のこと。)

上図の各メルクマールを見ると、1) 21日MA(移動平均線)が右肩上がりであること、2) 遅行スパンがローソク足を上放れる“好転”となっていること、3) ローソク足の下方に厚い形状の青色雲(=サポート帯、先行スパン)があること、4) パラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)がローソク足の上部付近で点灯していること、そして5) DMI(方向性指数)で+DI>-DIとなり、ADXが右肩上がり推移となっている(上図赤色点線丸印)ことから、米ドル/円・日足チャートは、もう一段の上値トライを模索するチャート形状であると判断します。

その他メルクマールでは、BB(ボリンジャーバンド)・±2σラインが21日MAに向かって収縮する“スクイーズ”になりつつあることも合わせると、現時点の米ドル/円は、次のフェーズに向けて相場の力を溜め込む“虎視眈眈”の時間帯とも言えるでしょう。

今後注目すべきポイントは・・・上述した『黒田ライン』と呼ばれる心理的水準である「125.000円」(上図黄色矢印、黒色線)を再度上抜け突破するか否か。

筆者が予想する、今後の見通しは以下の通りです。(見通し①、②)


[見通し①]
これからの時間にかけて、「125.000円」を終値ベースで上抜け突破した場合は、「『黒田ライン』突破」→「心理的上値水準超え」→「もう一段の上値トライ」となりそうです。当該ケースでは、「上昇バンドウォークの継続」や「+DI>-DIの乖離拡大」、さらには「SARの買いサインへの転換」も伴いながら、15年6月時高値である「125.860円」付近、ないしはそれ以上の水準までの上昇も視野に入れるべきでしょう。

[見通し②]
一方で、「125.000円」付近で再度上値を抑制された場合は、「心理的売り圧力の増大」→「下押しフロー」となる可能性も。当該ケースでは、「上昇バンドウォーク崩れ」や「+DI>-DIの乖離縮小」も伴いながら、約1カ月間における市場参加者の平均コストを示す21日MA、ならびに青色雲の上辺である先行1スパンを基準とする「121.300円」(上図Ⓐ緑色線)付近までの下押しを想定すべきでしょう。ただし、現時点の雲は「厚い形状(=強い下値サポート帯)」となっていることから、下値余地は限定的と捉えて良さそうです。


上記見通し①および②を概括すると、今後の米ドル/円は引き続き下値しっかりの相場付きとなりそうです。特に、[見通し①]で記載した「『黒田ライン』突破」が示現したケースでは、売り方の“踏み”※も伴いながら、その上昇スピードが加速する可能性もありそうです。(※踏み:売り建てのポジションを損失覚悟で買い戻すこと。)

引き続き、米ドル/円の動きは日米金融政策スタンスの相違(乖離)がベースとなる中、安易かつ主観的な値頃感に基づくトレード(ex.逆張り・売りエントリー等)はできるだけ控え、基本姿勢は「Don’t fight the Fed」(中銀とは戦うな/国策には逆らうな)を主軸にすべきと考えます。

津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想