[資源・新興国通貨3/22~25のポイント&注目通貨]メキシコペソ:メキシコ中銀は利上げか

著者:八代和也
投稿:2022/03/22 11:01

今週のポイント

米FRBやBOE(英中銀)、BOC(カナダ中銀)と日銀との金融政策の方向性の違いが市場で意識されて、足もとで円安が進んでいます。ウクライナ情勢や日本当局からの円安けん制発言には注意が必要なものの、引き続き円安圧力が加わりやすいと考えられます。豪ドル/円やNZドル/円、カナダドル/円は堅調に推移しそうです。

24日には、SARB(南アフリカ中銀)の政策会合があります。SARBは21年11月と22年1月の2会合連続で利上げを実施。24日の会合では、過去2会合と同じく0.25%の利上げを行うことを決定しそうです。その通りの結果となり、さらに0.25%の利上げが全会一致で決定されれば、南アフリカランド/円の支援材料となりそうです。前回会合では、5人の政策メンバーのうち4人が0.25%の利上げを支持し、1人は政策金利の据え置きを主張しました。

BOM(メキシコ中銀)は政策会合を24日に開きます。会合では、利上げを行うことを決定しそうです(後述)。

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TCMB(トルコ中銀)は17日の会合で、政策金利を14.00%に据え置くことを決定。据え置きは3会合連続です。声明では、据え置いた理由を「ベース効果やウクライナでの紛争解決のほか、持続可能な物価と金融の安定のためにとられた措置を背景に、ディスインフレ(インフレ率の鈍化)のプロセスが始まると予想されるため」と説明しました。

トルコの2月CPI(消費者物価指数)は前年比54.44%と、約20年ぶりの高い伸びを記録。これまでのトルコリラ安や原油など資源価格高騰の影響もあり、CPI上昇率は今後加速する可能性があります。こうした状況にもかかわらず、TCMBは利上げをしませんでした(低金利を志向するエルドアン大統領の圧力によって利上げできなかった?)。さらに声明では、「最近の政策決定の累積効果を監視する」と表明し、政策金利は当面据え置くことを示唆しました。これらはトルコリラにとってマイナス材料と考えられ、トルコリラ/円には下押し圧力が加わりやすいとみられます。

今週の注目通貨ペア①:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.05500~1.08000NZドル>

豪州の2月雇用統計(17日発表)は、失業率が4.0%、雇用者数は前月比7.74万人増、労働参加率は66.4%でした。失業率は08年2月以来の低水準となり、労働参加率は過去最高を記録。また、雇用者数の内訳をみると、フルタイム雇用者が大幅に増加(前月比12.19万人増)しました。

2月の雇用統計は、総じて強い結果と言えます。とりわけ、労働参加率が過去最高を記録する中で失業率が4.0%へと低下したことは、インパクトが大きいかもしれません。RBA(豪中銀)は以前から、インフレ率が目標範囲内に持続的に収まる要因になるものとして賃金上昇率の加速を挙げており、そして賃金上昇率が加速するためには失業率が4.0%へと低下する必要があるとの見方を示してきたからです。

雇用統計の結果を受けて、RBAは6月に利上げを開始するとの観測が市場で一段と強まりました。一方で、RBNZ(NZ中銀)は今後も利上げを続けるとみられます。豪ドルとNZドルのいずれもプラス材料があるため、豪ドル/NZドルは方向感が出にくいと考えられます。豪ドル/NZドルのメドとして、下値が200日移動平均線(21日時点で1.05605NZドル)、上値は1.08163NZドル(21/5/4高値)が挙げられます。

今週の注目通貨ペア②:<メキシコペソ/円 予想レンジ:5.500円~6.000円>

メキシコ中銀の政策金利とメキシコのCPI
メキシコ中銀の政策金利とメキシコのCPI出所:リフィニティブより作成

BOM(メキシコ中銀)は、前回2月の会合まで6会合連続で利上げを実施。現在の政策金利は6.00%です。

メキシコの2月CPI(消費者物価指数)は、総合指数が前年比7.28%、食品やエネルギーを除いたコア指数は同6.59%。総合指数とコア指数のいずれも前月(7.07%、6.21%)から上昇率が加速し、特にコアCPIは01年6月以来の高い伸びを記録しました。BOMのインフレ目標は3%(その上下1%が許容レンジ)です。

インフレ圧力の強さが再確認されたことを受け、BOMは24日の会合で追加利上げを行いそうです。利上げ幅は過去2会合と同じく0.50%との見方が市場では有力。その通りの結果になれば、声明で明らかになる5人の政策メンバーの投票行動に注目です。2月の前回会合では、4人が0.50%の利上げを支持し、エスキベル副総裁が0.25%の利上げを主張しました。24日の会合で0.50%の利上げが全会一致で決定される、あるいは0.75%の利上げを主張したメンバーがいれば、メキシコペソ/円は上値を試す可能性があります。

メキシコペソは、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。原油価格が堅調に推移すれば、メキシコペソ高材料になりそうです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想