豪ドル
RBA(豪中銀)は3月1日の会合で政策金利を0.10%に据え置くことを決定。声明では「賃金の伸びは依然として緩やかであり、(賃金の伸びが)インフレ目標が持続的に達成されるのと合致する速度になるまでには、まだしばらく時間がかかる可能性がある」との見方を示し、「RBAは忍耐強く対応する用意がある」と表明。利上げに慎重な姿勢を示しました。
豪州でインフレ圧力が強まっていること、そして雇用情勢の改善を受け、市場ではRBAは7月にも利上げを開始するとの観測があります。豪州の21年10-12月期CPI(消費者物価指数)トリム平均値は前年比2.6%と、RBAのインフレ目標(2~3%)の中間値を約7年ぶりに上回りました。1月の失業率は4.2%と、21年12月(4.2%)に続いて08年8月以来の低い水準を維持しました。
今後発表される経済指標やロウ総裁らRBA当局者の発言によって利上げ観測が一段と強まれば、豪ドル高材料になりそうです。その場合、RBAと日銀の金融政策の方向性の違いが市場で意識されて豪ドル/円は堅調に推移するとみられる一方、豪ドル/米ドルは米FRBの利上げペース次第では伸び悩む可能性があります。
原油や鉄鉱石などの資源の価格上昇は、資源国通貨である豪ドルにとってプラスです。資源価格が堅調に推移すれば、豪ドル/円や豪ドル/米ドルの支援材料になりそうです。
豪ドルは、投資家のリスク意識(リスクオン/オフ)の影響を受けやすいという特徴もあります。主要国の株価が下落を続ける、あるいはウクライナ情勢をめぐる懸念などからリスクオフ(リスク回避)の動きが強まる場合には、豪ドル/円や豪ドル/米ドルには下押し圧力が加わる可能性があります。
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豪ドル/NZドルについては、明確な方向感が出にくいとみられます。RBNZ(NZ中銀)は今後も利上げを継続するとみられ、RBAは7月にも利上げを開始する可能性が市場にはあるからです。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)はいつ利上げを開始するか。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフは豪ドルにとってマイナス材料。
・資源(主に鉄鉱石)価格は上昇するか。資源価格の上昇は豪ドルの上昇要因。
・豪州では5月までに総選挙実施。政権が交代するかどうか。
・米中関係や豪中関係は改善するか、中国経済は堅調に推移するか(中国は豪州最大の輸出先)。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は2月23日の会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を0.75%から1.00%へと引き上げました。利上げは3会合連続です。RBNZはまた、保有する国債を7月から段階的に減らす方針も示しました。
RBNZは政策金利の見通しを21年11月時点から上方修正。政策金利は22年12月に2.2%(21年11月時点では2.1%)、23年12月に3.3%(同2.6%)、24年12月に3.4%(同2.6%)との見通しを示しました。RBNZが保有する国債を減らす方針を示したことや政策金利の見通しを上方修正したことは、NZドルにとってプラス材料です。日銀の利上げはかなり先とみられるため(少なくとも22年はなさそう)、NZドル/円は堅調に推移しそうです。NZドル/米ドルについては、米FRBの利上げペース次第では上値が重くなる可能性があります。
NZドルは豪ドルと同様、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)にも影響を受けやすいという特徴があります。主要国の株価が下落を続ける、あるいはウクライナ情勢をめぐる懸念などからリスクオフ(リスク回避)の動きが強まれば、NZドル/円やNZドル/米ドルに対して下押し圧力が加わることも考えられます。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)は政策金利の見通しを上方修正。
・主要国の株価動向には注意が必要か。リスクオフはNZドルにとってマイナス材料。
・米中関係は改善するか、中国経済は堅調に推移するか(中国はNZ最大の輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)価格は上昇するか。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は3月2日の会合で0.25%の利上げを行うことを決定。政策金利を0.25%から0.50%へと引き上げました。利上げは18年10月以来、3年5カ月ぶりです。
BOCは声明で、「物価の上昇はより広範に及んでおり、コアインフレの指標はすべて上昇している」と指摘。「インフレ率は1月時点の見通しよりも短期的に高くなるとみられる」とし、また「インフレ率が持続的に上昇しているため、長期的なインフレ期待が上振れするリスクが高まっている」と分析。「経済が拡大を続け、インフレ圧力が引き続き強まるなか、BOCは政策金利をさらに引き上げる必要があると予想している」と表明。追加利上げを示唆しました。
市場では、BOCの政策金利は22年中に1.75%へと上昇するとの観測があります。BOCの利上げ観測に支えられてカナダドル/円は堅調に推移しそうです。
カナダドル/円は原油価格の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。ロシア産原油の供給が減少するとの観測から米WTI原油先物(原油価格の代表的な指標)は上昇基調にあり、7日には08年7月以来の高値をつけました。原油はカナダの主要輸出品のため、原油価格の上昇はカナダドル高要因です。原油価格が引き続き堅調に推移すれば、カナダドル/円にとってさらなる支援材料になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の政策金利は22年にどこまで上昇するか。
・資源(特に原油)価格の動向。資源価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料。
トルコリラ
トルコの2月CPI(消費者物価指数)は前年比54.44%と、上昇率は1月の48.69%から加速し、02年3月以来、約20年ぶりの高い伸びを記録。これまでのトルコリラ安や原油など資源価格の上昇がCPI上昇率を押し上げました。
インフレへの対応策として利上げが挙げられるものの、エルドアン大統領が低金利を志向するなかでTCMB(トルコ中銀)が利上げを行うのは困難と考えられます。そのため、CPI上昇率の加速はトルコリラ安材料と考えられます。
CPI上昇率は今後一段と加速する可能性があります。トルコの2月PPI(生産者物価指数)は前年比105.01%と、上昇率は1月の93.53%から加速。95年3月以来、約27年ぶりの高い伸びとなりました。PPIはいずれCPIへと波及していくと考えられるからです。
トルコは原油や天然ガスを国外からの輸入に依存しているため、原油などの資源価格の上昇はトルコ景気の下押し要因であり、トルコリラにとってマイナス材料です。原油高が一段と進めば、トルコリラ安圧力はさらに強まるかもしれません。
<注目点・イベントなど>
・TCMB(トルコ中銀)の利上げが困難とみられるなか、CPI上昇率の加速はトルコリラ安要因。
・原油など資源価格が一段と上昇すれば、トルコリラ安圧力が強まりそう。
・トルコと米国やEUとの関係は改善するか。
・シリア情勢などトルコの地政学リスク。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は21年11月と22年1月の2会合連続で利上げを行い、現在の政策金利は4.00%です。
南アフリカの1月CPI(消費者物価指数)は前年比5.7%と、上昇率は17年3月以来の高い伸びを記録した前月(21年12月)の5.9%から鈍化したものの、依然としてSARBのインフレ目標(3~6%)の上限付近でした。最近の原油などの資源の価格上昇の影響によってCPI上昇率は今後加速する可能性があり、SARBは今後も利上げを継続するとみられます。SARBの次回会合は3月22-24日です(政策金利は24日に発表)。SARBが3月の会合で利上げを行い、さらに利上げを継続するとの観測が市場で強まれば、南アフリカランド/円は底固く推移しそうです。
一方で、南アフリカにはエスコム(南アフリカの国営電力会社。国内電力の約9割を供給)の問題があります。エスコムはこれまで、計画停電をたびたび実施しています。今後、計画停電が長期間行われるようなことになれば、南アフリカ景気をめぐる懸念が市場で強まるかもしれません。その場合、南アフリカランド/円に対する下押し圧力となる可能性があります。
<注目点・イベントなど>
・SARB(南アフリカ中銀)は利上げを継続するかどうか。
・エスコムの計画停電が長期化すれば、南アフリカランド/円に対する下押し圧力となる可能性も。
・米FRBの利上げペース。
・金など商品価格の動向。商品価格の上昇は南アフリカランドにとってプラス材料。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は2月10日の会合で0.50%の利上げを行うことを決定。政策金利を5.50%から6.00%へと引き上げました。利上げは6会合連続です。2月の会合はロドリゲス総裁(1/1に就任)のもとで初めて行われた会合でした。その会合でBOMは21年12月に続いて0.50%の利上げを実施したうえ、ハト派と目されていたロドリゲス総裁は0.50%の利上げを支持しました。これは総裁が交代してもBOMのタカ派的な姿勢は変わらないことを示唆しており、メキシコペソにとってプラスと考えられます。
メキシコの1月CPI(消費者物価指数)は前年比7.07%、コアCPIは同6.21%と、いずれもBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を大きく上回りました。インフレ圧力は依然として強く、BOMは今後も利上げをするとみられます。BOMの利上げ観測がメキシコペソ/円を下支えしそうです。
メキシコペソ/円はカナダドル/円と同様に、原油価格の動向にも影響を受けやすいという特徴があります。米WTI原油先物(原油価格の代表的な指標)が堅調に推移すれば、メキシコペソ/円は上値を試すとみられます。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)は利上げを継続しそう。
・資源(主に原油)価格の動向。資源価格の上昇はメキシコペソ/円の上昇要因。
・米FRBの利上げペース。
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