[資源・新興国通貨2/7~11のポイント&注目通貨]10日のメキシコ中銀会合に注目!

著者:八代和也
投稿:2022/02/07 15:15

今週のポイント

米WTI原油先物(原油価格の代表的な指標)は4日に14年9月以来の高値をつけました。ウクライナ情勢をめぐる懸念や寒波の影響によって米国の原油生産が落ち込むとの見方から、WTI原油先物はこのところ堅調に推移しています。原油高はカナダドルやメキシコペソにとってプラス材料です。

メキシコペソについては、10日のBOM(メキシコ中銀)の政策会合にも注目です。その結果次第でメキシコペソ/円は上値を試す可能性があります(後述)。

カナダドルについては目先、カナダの雇用統計の弱い結果が重石になるかもしれません。ただ、WTI原油先物が一段と上昇すれば、市場はそのことをより強く意識する可能性があります。カナダの雇用統計の結果は失業率が6.5%、雇用者数が前月比20.01万人減、平均賃金の上昇率は前年比2.4%でした。失業率と雇用者数はいずれも市場予想(6.2%、11.75万人減)よりも弱く、平均賃金上昇率は前月(2.7%)から鈍化しました。

豪ドルやNZドルについては、米国の長期金利(10年物国債利回り)や主要国の株価に影響を受けやすい地合いになりそうです。米長期金利は4日に20年1月以来の高値をつけました。米長期金利が一段と上昇すれば、米ドル高が進んで豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルは軟調に推移しそうです。米長期金利の上昇は株価にとってマイナス要因になると考えられます。主要国の株価が下落を続ける場合、リスクオフ(リスク回避)の動きが市場で強まる可能性があります。その場合、豪ドルやNZドルは対米ドルだけでなく、対円でも下値を試す展開になりそうです。

トルコの1月CPI(消費者物価指数。2/3発表)は前年比48.69%と、前月の36.08%から上昇率が加速。02年2月以来、約20年ぶりの高い伸びとなりました。これにより、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)はマイナス34.69%となり、マイナス幅は前月の22.08%から拡大しました。

トルコの実質金利のマイナス幅拡大はトルコリラにとってマイナス材料です。トルコリラ/円は1カ月あまりにわたって8円台前半で推移し落ち着いた値動きになっているものの、いずれ下押しする可能性があります。

今週の注目通貨ペア①:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.06000~1.08000NZドル>

RBA(豪中銀)は1日の会合で政策金利を0.10%に据え置く一方、債券購入プログラム(量的緩和)を終了することを決定。これらは市場予想通りの結果です。

RBAは声明で「債券購入プログラムの終了は、近い時期の利上げを意味するものではない」、「インフレ率は上昇しているものの、持続的に目標範囲内にあると結論付けるのは時期尚早」、「RBAは忍耐強く対応する用意がある」など、利上げに慎重な姿勢を示しました。

しかし、ロウRBA総裁は会合翌日の2日に講演し、これまでの「22年中に利上げを行う可能性は非常に低い」との見解を変更。「豪経済が力強く推移すれば、22年に利上げを行う可能性もある」と語りました。ロウ総裁が22年の利上げの可能性に言及したことは、豪ドルの支援材料になりうると考えられます。

一方で、NZの21年10-12月期の失業率(2日発表)は3.2%と、7-9月期の3.3%から改善し、86年の統計開始以来最も低い水準を記録。これはRBNZ(NZ中銀)の利上げ継続観測を補強する結果と言えそうです。RBNZの次回会合は2月23日です。

豪ドルとNZドルの双方に支援材料があり、そのため豪ドル/NZドルは目先明確な方向感が出にくいかもしれません。豪ドル/NZドルの目先のメドとして、下値が1.06342NZドル(1/24安値)、上値は1.08072NZドル(21/6/18高値)が挙げられます。

今週の注目通貨ペア②:<メキシコペソ/円 予想レンジ:5.400円~5.700円>

原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は4日に一時1バレル=93ドル台へと上昇し、14年9月以来の高値をつけました。WTI原油先物が一段と上昇すれば、メキシコペソ/円は底堅く推移しそうです。

10日のBOM(メキシコ中銀)の政策会合にも注目です。BOMは21年12月の前回会合まで5会合連続で利上げを実施しました。メキシコのインフレ圧力は依然と強く、インフレを抑制するためBOMは10日の会合で追加利上げに踏み切るとみられます。メキシコの21年12月のCPI(消費者物価指数)は前年比7.36%、コアCPIは同5.94%。いずれもBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を大きく上回りました(21年1月分は会合前日の9日に発表)。

BOM会合における注目点は、「利上げ幅」と「5人の政策メンバーの投票行動」になりそう。利上げ幅については、市場では0.50%との見方が有力なものの、0.25%との見方も一部にあります。会合で0.50%の利上げを行うことが決定され、かつその決定が全会一致、あるいは全会一致でなくても0.75%以上の利上げを主張したメンバーがいれば、メキシコペソ/円は堅調に推移しそうです。メキシコペソ/円は5.669円(1/5高値)が目先の上値メドです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想