今後の投資環境を見据えて~やっぱり面白い会社を探そう

著者:鈴木 行生
投稿:2022/02/01 14:50

・人生100年時代が到来すると言われているが、自分が社会と主体的に関われるのは、今のところ50年くらいかもしれない。社会の一員として、その担い手として活動して、何らかの責任を果たしていく期間である。現状では、18歳から68歳くらいであろうか。この主体的活動期間は今後長くなっていこう。

・100年経てば、世界の全人口がほぼ入れ替わっていく。30年から50年くらいの波長で国、地域、産業、社会、生活の内容は大きく変貌を遂げていこう。栄枯盛衰は世の常であり、過去と同じようにこれからも続こう。

・どの時代をどのように生きるかによって、人生の拠り所は全く変わってくる。それは偶然なのか、必然なのか。自らの力で将来を切り開きたいと誰もが思うが、なかなか思うようにはならない。

・自然はもっと長期で動いており、これまでの知見で起こりうることは想定できるとしても、実際の予測となると極めて困難である。地球が誕生して46億年、生物が発生して40億年、脊椎動物が現れて5億年である。1年で数cmでも1億年単位でみれば、地球の大陸は数千kmも大移動している。それは今でも続いている。

・地球を守る温室効果ガスのバランスが崩れれば、CO2とO2が著しく増減して、とんでもない気候変動に見舞われる。地球が寒冷化して、全球凍結(スノーボールアース)になるようなことが少なくとも3回あった。隕石が飛んできて、生物の全面交替をもたらすこともあった。それでも、これまで生物は生き延び、進化してきた。

・人類は自らの認識として、今のところ最も知識、知恵が発達している。人類としての科学的知見も、この300年で急速に蓄えてきた。人類の進化、発展の賜物であるが、その弊害も巨大になっている。

・人類は自分たちが生存し、生活するために排出したものを自ら始末する必要がある。さもないと、気候変動に人類が大きな影響を与えてしまい、生存が危うくなる。そこで、2050年にカーボンニュートラル(CN)を達成しよう、というゴールを目指そうとしている。

・できるのか。相当難しい。先進国と途上国、国家体制と権力構造、産業間のアンバランス、貧富の格差の中での生活対応など、いずれも見通せない。理想はあっても、利害を超えて、理性的に行動することができないからである。とりわけ、どういう道筋を歩むかというトランジションが必ずしも見えていない。

・理念派は、時間がないという。現実派は、トランジションを着実にという。予測は当たらないが、バックキャストによるシミュレーションからは、将来起こりそうなことが十分想定できる。

・では、どうするか。①理想を掲げつつ、できるところからやっていく。②それでは遅いので、ストレッチして少し無理な目標を何としてもやり遂げる。③高い目標を掲げて、努力しても実行が伴ってこないと、結果的にやるふりをしているとみられる。④他を犠牲にして、CNのみに突進する。さまざまな取り組みが始まっている。

・筆者は悲観論には組しない。人類はこれからも英知を生み出していく。イノベーションはこれからも続く。地球環境が抱える社会的課題を解決するために、資本主義の枠組みを広げる必要があろう。

・経済的価値、社会的価値、倫理的価値などの軸を定めて、社会的課題の重要性(マテリアリティ)の重み(インポータンス)を測定しつつ、合意形成に向けて対話していく必要がある。

・「新しい資本主義」の実態はまだはっきりしないが、1)コロナ禍を乗り切り、2)格差と貧困を減らし、3)CNの達成を目指し、4)三方よし(売り手、買い手、世間)を実現するもののようだ。まずは、分配、そのために成長を、という考えをいかに実行するのか。2022年の株式市場は、「新しい資本主義」のコンテンツ作りに一喜一憂することになろう。

・オミクロン株の影響はどうか。変異株(variants)の登場は想定されており、これからも続こう。容易ではないが、ワクチンや治療薬の対応は時間とともに進むので、コロナ禍に初めて遭遇した時のような危機には到らないであろう。

・Withコロナは、いかにリスクマネジメントするかという局面にある。社会や経済への影響で、マーケットは上下するとしても、十分乗り越えることができよう。

・コロナ禍や気候変動への対応は、急激な需給のタイト化を招き、相場を乱高下させる。半導体や天然ガスなど、サプライチェーンのショーテッジ(供給不足)は経済回復への制約条件となり、インフレを加速させる要因ともなっている。

・需給のタイト化はいずれ落ち着くとしても、価格上昇がインフレマインドを刺激している。米国の金融政策は想定よりも早く動いており、これがマーケットに織り込まれる過程で、思惑と懸念を呼びやすい。

・12月のFOMCでは、量的緩和は6月ではなく3月に終わらせ、22年中に利上げを3回行うとした。MBS(不動産担保証券)を月150億ドル減額から300億ドル減額に拡大するとした。FFレート(0~0.25%)は4月以上利上げしていく方向にある。これがもっと早まりそうである。

・肝心の企業業績はどうなるか。DXとGXのテーマははっきりしており、すでに成長株としての企業は先行的に評価されてきた。次のテーマに行く前に、足元の業績を確認したいという動きが強まっている。

・2022年度の企業業績は、コロナからの回復を見込むとしても増益率が加速するほどは見込めない。とすると、マーケットは個別株にフォーカスしながら一進一退という展開になろう。

・今後の東京市場は、日経平均でみて3万5000円を目指すパワーはまだない。3万円±10%というゾーンでの動きになるとみているが、さらに下押ししそうである。中国~台湾、ロシア~ウクライナの地政学的リスクは続こう。CNに関するグリーンウオッシュの論議は一段と高まろう。

・企業経営においては、GUの柚木(ゆのき)社長が日経(11/25)で語っているように、1)パーパスなくして、会社はサバイブできない、2)独りよがりで、モノはそうそう売れない、3)創業15年でビジネスモデルを6回以上機敏に変えている、4)考え抜いたアイデアで努力し、ポジティブなチームワークを作っていく。これこそが成長の原動力であろう。

・大企業においても、中小型企業においても、グーグルのように(11/9日経)、①全社員が遠慮なくものが言えるカルチャー、②ユーザーへの価値に全力投入するパワー、③データをベースに何事もアジャイルに進める決断力、に注目したい。

・そして、④10%増ではなく、10に倍する発想が飛び交っていれば、その会社は楽しそうである。今年もこういう会社を見い出して投資していきたい。

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配信元: みんかぶ株式コラム