[資源・新興国通貨1/11~14のポイント&注目通貨]主要国の株価動向に要注意!?

著者:八代和也
投稿:2022/01/11 14:28

今週のポイント

市場では、米FRBが3月にも利上げを開始するとの観測が高まっています。米国の21年12月CPI(消費者物価指数。12日発表)やFRB当局者の発言を受けてFRBの利上げ観測が一段と高まる場合、米ドルが堅調に推移して豪ドル/米ドルやNZドル/米ドルに対して下押し圧力が加わりやすいとみられます。

カナダドル/円やメキシコペソ/円は、BOC(カナダ中銀)やBOM(メキシコ中銀)の利上げ観測に支えられて底堅い展開になりそうです。一方で、主要国の株価動向には注意が必要かもしれません。株価が下落を続ける場合にはリスクオフが強まり、豪ドルやNZドルが対米ドルや対円で軟調な展開となる可能性があります。

トルコリラ/円はこのところ8円台前半で推移しており、比較的落ち着いた値動きとなっています。ただ、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)はマイナス22.08%と大幅なマイナスとなっています。また、TCMB(トルコ中銀)は21年12月16日の前回政策会合で利下げの停止を示唆したものの、エルドアン大統領の利下げ圧力にTCMBが本当に抵抗できるのか疑問が残ります。トルコリラ安要因は解消されていないため、いずれトルコリラ売りが再開する可能性があります。なお、TCMBの次回会合は1月20日です。

今週の注目通貨ペア①:<カナダドル/円 予想レンジ:90.000~92.000円>

カナダの21年12月の雇用統計が7日に発表され、結果は失業率が5.9%、雇用者数は前月比5.47万人増でした。失業率は市場予想(6.0%)に反して11月の6.0%から低下し、20年2月以来の低水準を記録。雇用者数は7カ月連続の増加で、市場予想の2.75万人増を上回りました。

12月の雇用統計でカナダの雇用情勢の改善が示されたことは、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。また、雇用情勢の改善はBOC(カナダ中銀)が利上げを行う可能性を高めるものと言えそうです。市場では、BOCは早ければ1月26日の次回政策会合で利上げを行うとの観測があります。BOCの利上げ観測もカナダドル/円の支援材料となりそうです。

一方で、主要国の株価動向には注意が必要かもしれません。米FRBがアグレッシブな利上げを行うなら、株価にとってマイナス要因になりうると考えられます。主要国の株価が下落を続けるようなら、リスクオフ(リスク回避)の動きが強まる可能性があります。その場合には円高が進んでカナダドル/円は下押しするかもしれません。

カナダドル/円の目先のメドとして、下値は90.000円(心理的節目)、上値は91.641円(1/10高値)が挙げられます。

今週の注目通貨ペア②:<メキシコペソ/円 予想レンジ:5.500円~5.700円>

メキシコ中銀の政策金利とメキシコのCPI
メキシコ中銀の政策金利とメキシコのCPI出所:リフィニティブより作成

メキシコの21年12月のCPI(消費者物価指数)が7日に発表されました。結果は総合指数が前年比7.36%、コア指数は同5.94%と、総合指数は11月の7.37%から上昇率が鈍化したものの、コア指数の上昇率は11月の5.67%から高まりました。

BOM(メキシコ中銀)は21年12月16日の前回政策会合まで5会合連続で利上げを行いました。総合指数とコア指数はいずれもBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジの上限である4%を依然として大きく上回っています。インフレ圧力の強さを考えると、BOMは2月10日の次回会合で追加利上げに踏み切る可能性が高いと考えられます。追加利上げ観測がメキシコペソ/円を下支えしそうです。

BOMの利上げ幅は21年11月までの4回が0.25%、前回会合では利上げ幅が拡大されて0.50%でした。BOM理事会のメンバーはコアCPI上昇率の高さを依然として懸念しているため、次回会合では0.50%の追加利上げが決定される可能性があります。その観測が市場で高まれば、メキシコペソ/円は堅調さを増しそうです。

一方でカナダドル/円と同様に、主要国の株価動向には注意が必要です。株価が下落を続ける場合にはリスクオフの動きが強まり、メキシコペソ/円は上値が重くなる可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想