スカラ Research Memo(8):主力のIT/AI/IoT/DX事業は積極的な投資により増収減益に(2)

配信元:フィスコ
投稿:2021/09/15 15:18
スカラ<4845>の業績動向

(5) 投資・インキュベーション事業
投資・インキュベーション事業の売上収益は前期比127.6%増の84百万円、営業損失は387百万円(前期は383百万円の損失)となった。

売上収益はジェイ・フェニックス・リサーチによる価値創造経営支援並びにDX支援の案件が徐々に増加してきたほか、スカラパートナーズによるワーケーションサービス※1などが貢献した。また、SCSV1号投資事業有限責任組合の投資第1号案件として、2020年12月に登録建築家のマッチングサービスを運営するアーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>(以下、ASJ)に出資を行った※2。ジェイ・フェニックス・リサーチがASJに対してDX推進も含めた価値共創型経営支援やIR戦略の支援を行うと同時に、最適マッチングのためのDXプラットフォームの構築、Webマーケティングツールの提供、建築家や工務店、建築資材メーカー、施主に対するITを活用したCRMソリューションの共同開発なども行うことで、企業価値の向上に取り組んでいく。

※1 好きな場所や新しい仕事を通じて、地域や人につながっていく体験を提供するサービスで、主にはワーケーション施設の紹介サイト「KomfortaWorkation」の運営を行っている。
※2 出資額98百万円、取得株数108千株、議決権比率6.2%、1株当たり913円で取得した。


また、自治体DX関連サービスとして、(株)Public dots & Companyとの共創により官民共創プラットフォーム「逆プロポ」サービスをリリースし、2件のプロジェクトが採択され、4つの自治体で取り組みが進められている。「逆プロポ」とは、大企業やスタートアップ企業などの民間企業が、社会課題解決型の新規事業を実施する際に、当該事業の需要動向の把握や仮説検証等をスピーディに実施したいときに活用するサービスとなる。従来の公募プロポーザルは、自治体が予算を持って公募するプロジェクトに対して、受注を狙う企業が事業計画書を作成・提出し、それを第三者機関が評価し選定するといったものだが、「逆プロポ」では企業が費用を負担して企画する社会課題解決型のテーマに対して、参加を希望する自治体を公募する流れとなる。参加可能な自治体はテーマに則した実証実験などの提案書を作成・申し込みを行う。選定する自治体数は複数でも可能なため、企業は多くの実証実験を行うことも可能となる。なお、選定された自治体に対しては公募する企業側から「寄付受納」という形で予算が支払われる。

「逆プロポ」の第1弾として、イーデザイン損害保険(株)のプロジェクト「より安全な交通環境・社会の実現」をテーマにした公募に対して、5つの自治体がエントリーし、選考の結果、神戸市と滋賀県日野町が選定された。神戸市は「摩耶山掬星台の渋滞解消に向けた情報発信の仕組みづくり」を、日野町は「安全教室とサイクリングイベントを通じた安全な自転車利用の促進」をテーマとしたプロジェクトが進められている。イーデザイン損害保険では、CSRの一環として自治体と共に「より安全な交通環境・社会の実現」に向けた具体的な取り組みを進めることを目的に、「逆プロポ」を利用した。第2弾の公募も終了し2自治体が選定されており、2021年8月時点で3つのプロジェクトの募集が行われている。

「逆プロポ」から直接得られる収益は少ないが、プロジェクトで活用するシステム開発に携わる可能性があるほか、マッチングした自治体から他のシステム開発案件の受注機会を獲得する事例を増やしていくことで、収益を拡大していく戦略となっている。実際、「逆プロポ」のマッチングをきっかけとして、滋賀県日野町から新型コロナワクチン接種の予約システム及びマイナンバーカードを活用した予約システムの開発を受託し、実証実験(日本初)を開始している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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