■アクセル<6730>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) LSI開発販売関連事業
LSI開発販売関連セグメントの売上高は前期比4.1%減の8,692百万円、セグメント利益は同0.5%増の1,622百万円となった。主力のパチンコ・パチスロ機向けG-LSIは販売数量が前期の39万個から40万個に増加し、売上高も若干ながら増収を確保した。パチンコ・パチスロ機の出荷台数が大きく減少したにも関わらず、販売数量を維持できたのは、リユース率が低下したことと、機器の出荷と半導体の販売にタイムラグが生じたためと弊社では見ている。特に、期末にかけては半導体工場の火災事故などがあって半導体不足が話題となったこともあって、顧客側で在庫を積み増す動きが出た可能性が考えられる。
品種別構成比では2019年に投入した「AG6」が15%から6%に低下し、旧世代品となる「AG5」の比率が再上昇した。「AG6」についてはまだ採用メーカーが少なく、特定機種の販売動向に影響を受けやすい状態にあり、2021年3月期については搭載機種の販売が低調だったものと思われる。また、「AG6」を使って新機種を開発するためには開発環境も新たに整える必要があり(=投資が必要)、顧客の収益環境が厳しかったことも採用が進まなかった一因と見られる。同様に、G-LSIに周辺部品も加えたモジュール基板の販売比率も前期の15%から12%に低下している。
その他のパチンコ・パチスロ機向け半導体のうち、メモリモジュール※は販売数量が前期の80万個から71万個に減少したものの、売上高は横ばいを維持した。ディスプレイの大型化・高精細化に伴って、高単価の製品にシフトしたことが要因だ。一方、LEDドライバなどその他の半導体については減収となった。また、組み込み機器用G-LSIの売上については1億円強とほぼ前期並みの水準となった。
※メモリモジュールとは、パチンコ・パチスロ機の画像表示用基板に搭載される画像データを保持しておくための半導体で、ここ数年は大画面化・高精細化で必要とされるメモリ容量も増加傾向にある。
(2) 新規事業関連
新規事業関連セグメントの売上高は前期比56.3%増の306百万円、セグメント損失は462百万円(前期は641百万円の損失)となった。売上高は計画に届かなかったものの着実に増加した。2020年3月期に実施したM&A※の効果もあって、AI領域における開発支援ビジネスが大きく伸長したことが要因だ。一方、ミドルウェア製品の「AXIP」シリーズについては伸び悩んだ。ネイティブアプリの開発向けなどでは競合のCRI・ミドルウェア<3698>の牙城を崩せておらず、マーケティング手法や営業体制の見直しが必要と思われる。
※2019年6月にソフトウェア開発を行うbitcraft、同年8月に画像認識・処理技術の開発を行うモーションポートレートをaxが子会社化し、後に吸収合併した。
なお、新規事業領域としてNEDOの公募プロジェクトとして共同研究を進めてきた自動運転用AIチップの開発に関しては順調に進展しており、助成金収入として119百万円(前期は102百万円)を営業外収益に計上している。同案件も含めた実質のセグメント損失は343百万円(前期は539百万円の損失)となる。
無借金経営、手元キャッシュも豊富で財務内容は良好
3. 財務状況と経営指標
2021年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比14百万円減少の11,132百万円となった。流動資産では売掛金が62百万円増加した一方、現金及び預金が158百万円減少した。固定資産では投資有価証券が122百万円増加し、有形固定資産が24百万円減少した。
負債合計は前期末比249百万円減少の1,061百万円となった。買掛金が93百万円増加した一方で、未払法人税等が73百万円、未払消費税等が166百万円それぞれ減少した。また、純資産合計は同234百万円増加の10,071百万円となった。配当金支出で234百万円、自己株式の取得で326百万円の減少要因となったものの、親会社株主に帰属する当期純利益670百万円の計上とその他有価証券評価差額金で94百万円の増加要因となった。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は純資産の増加と負債の減少により、前期末の88.0%から90.1%に上昇した。現金及び預金の水準も80億円弱と事業規模からすれば潤沢であることから、財務の健全性は極めて高いと判断される。一方で、収益性に関しては営業利益率で6.0%と2016年3月期以降、1ケタ台の水準が続いている。以前と比べて収益性も高かったが、パチンコ・パチスロ機市場の縮小に伴って収益源となるG-LSIの販売数量が以前と比べて減少したことが大きい。また、事業構造の転換と再成長を図るため、新規事業の育成に取り組んでいることも一因となっている。このため、今後新規事業が収益に貢献し始めれば、収益性も向上するものと予想される。同社ではROEを10%台の水準まで戻すことを当面の目標として掲げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別の動向
(1) LSI開発販売関連事業
LSI開発販売関連セグメントの売上高は前期比4.1%減の8,692百万円、セグメント利益は同0.5%増の1,622百万円となった。主力のパチンコ・パチスロ機向けG-LSIは販売数量が前期の39万個から40万個に増加し、売上高も若干ながら増収を確保した。パチンコ・パチスロ機の出荷台数が大きく減少したにも関わらず、販売数量を維持できたのは、リユース率が低下したことと、機器の出荷と半導体の販売にタイムラグが生じたためと弊社では見ている。特に、期末にかけては半導体工場の火災事故などがあって半導体不足が話題となったこともあって、顧客側で在庫を積み増す動きが出た可能性が考えられる。
品種別構成比では2019年に投入した「AG6」が15%から6%に低下し、旧世代品となる「AG5」の比率が再上昇した。「AG6」についてはまだ採用メーカーが少なく、特定機種の販売動向に影響を受けやすい状態にあり、2021年3月期については搭載機種の販売が低調だったものと思われる。また、「AG6」を使って新機種を開発するためには開発環境も新たに整える必要があり(=投資が必要)、顧客の収益環境が厳しかったことも採用が進まなかった一因と見られる。同様に、G-LSIに周辺部品も加えたモジュール基板の販売比率も前期の15%から12%に低下している。
その他のパチンコ・パチスロ機向け半導体のうち、メモリモジュール※は販売数量が前期の80万個から71万個に減少したものの、売上高は横ばいを維持した。ディスプレイの大型化・高精細化に伴って、高単価の製品にシフトしたことが要因だ。一方、LEDドライバなどその他の半導体については減収となった。また、組み込み機器用G-LSIの売上については1億円強とほぼ前期並みの水準となった。
※メモリモジュールとは、パチンコ・パチスロ機の画像表示用基板に搭載される画像データを保持しておくための半導体で、ここ数年は大画面化・高精細化で必要とされるメモリ容量も増加傾向にある。
(2) 新規事業関連
新規事業関連セグメントの売上高は前期比56.3%増の306百万円、セグメント損失は462百万円(前期は641百万円の損失)となった。売上高は計画に届かなかったものの着実に増加した。2020年3月期に実施したM&A※の効果もあって、AI領域における開発支援ビジネスが大きく伸長したことが要因だ。一方、ミドルウェア製品の「AXIP」シリーズについては伸び悩んだ。ネイティブアプリの開発向けなどでは競合のCRI・ミドルウェア<3698>の牙城を崩せておらず、マーケティング手法や営業体制の見直しが必要と思われる。
※2019年6月にソフトウェア開発を行うbitcraft、同年8月に画像認識・処理技術の開発を行うモーションポートレートをaxが子会社化し、後に吸収合併した。
なお、新規事業領域としてNEDOの公募プロジェクトとして共同研究を進めてきた自動運転用AIチップの開発に関しては順調に進展しており、助成金収入として119百万円(前期は102百万円)を営業外収益に計上している。同案件も含めた実質のセグメント損失は343百万円(前期は539百万円の損失)となる。
無借金経営、手元キャッシュも豊富で財務内容は良好
3. 財務状況と経営指標
2021年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比14百万円減少の11,132百万円となった。流動資産では売掛金が62百万円増加した一方、現金及び預金が158百万円減少した。固定資産では投資有価証券が122百万円増加し、有形固定資産が24百万円減少した。
負債合計は前期末比249百万円減少の1,061百万円となった。買掛金が93百万円増加した一方で、未払法人税等が73百万円、未払消費税等が166百万円それぞれ減少した。また、純資産合計は同234百万円増加の10,071百万円となった。配当金支出で234百万円、自己株式の取得で326百万円の減少要因となったものの、親会社株主に帰属する当期純利益670百万円の計上とその他有価証券評価差額金で94百万円の増加要因となった。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は純資産の増加と負債の減少により、前期末の88.0%から90.1%に上昇した。現金及び預金の水準も80億円弱と事業規模からすれば潤沢であることから、財務の健全性は極めて高いと判断される。一方で、収益性に関しては営業利益率で6.0%と2016年3月期以降、1ケタ台の水準が続いている。以前と比べて収益性も高かったが、パチンコ・パチスロ機市場の縮小に伴って収益源となるG-LSIの販売数量が以前と比べて減少したことが大きい。また、事業構造の転換と再成長を図るため、新規事業の育成に取り組んでいることも一因となっている。このため、今後新規事業が収益に貢献し始めれば、収益性も向上するものと予想される。同社ではROEを10%台の水準まで戻すことを当面の目標として掲げている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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