S&P500月例レポート(21年6月配信)<後編>

<前編>の続き

注目点

 ○CDCのデータによると、2020年の米国の出生率は1979年以降の最低となり、前年比で4%低下しました。合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの数の平均)は1.64に低下し、1930年代の大恐慌時代以来の最低となりました。

 ○ウォール街には「5月に売り抜けろ」という格言があります。5月末から10月末までの6ヵ月間の株価の変化を見ると、S&P 500指数の歴史(1928年から)において、34.4%の確率でこの格言が正しいことが分かっています。ただし、過去9年間は格言通りにはなっていません(トータルリターンに基づくと9年間、株価のみでは8年間)。

 ○米国東部に1日あたり250万バレルの燃料を供給する全長5500マイル(8850キロメートル)のコロニアル・パイプラインがサイバー攻撃により停止したことを受けて、米国政府は燃料供給ラインを途切れさせないように緊急事態を宣言しました。この攻撃は、ロシアや東ヨーロッパとの関連が報告されているサイバー犯罪集団「ダークサイド」によるものでした。パイプラインは週の半ばまでに再開されましたが、米国ではガソリン不足(および購入制限)と価格上昇が報告され、フロー、配送、供給が正常化するのはその週末になると予想されていました。

 ○44州と準州の司法長官からなるグループは、フェイスブックAのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)に、13歳未満の子ども向けInstagramサイトの開始を断念するように求めました。

 ○エネルギー問題への関心が高まる中、エクソン・モービルのアクティビスト(物言う投資家)は、XOMがポスト化石燃料の環境に備えることを望む取締役2名を選出しました。また、オランダの裁判所はロイヤル・ダッチ・シェルADRに対し、二酸化炭素排出量を2030年までに45%削減するように命じました。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは4月末の1.62%から1.58%に低下して月を終えました(2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは4月末の2.29%から2.26%に低下して取引を終えました(同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは4月末の1ポンド=1.3817ドルから1.4192ドルに上昇して月を終えました(同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)。ユーロは4月末の1ユーロ=1.2020ドルから1.2193ドルに上昇して月を終えました(同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は4月末の1ドル=109.33円から109.86円に下落し(同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は4月末の1ドル=6.4745元から6.3684元に上昇しました(同6.5330元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は4月末の1バレル=63.48ドルから66.63ドルに上昇して月を終えました(同48.42ドル、同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、4月末の1ガロン=2.941ドル、また2020年5月末の2.049ドルから3.112ドルに上昇して(3ドルを超えるのは2018年6月以来)月末を迎えました(同2.330ドル、同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は4月末の1トロイオンス=1768.80ドルから1906.30ドルに上昇して月の取引を終えました(同1901.60ドル、同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は4月末の18.61から16.76に低下して月を終えました。月中の最高は28.93、最低は15.90でした(同22.75、同13.78、同16.12、同11.05)。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

世界の株式市場

 ○5月の世界の株式市場は、米国市場が過去最高値を更新したにもかかわらず、月の前半に下落しました(5月12日までに2.33%下落)。その後、流れが逆転し、米国市場に下押し圧力がかかり(株価の急激な上昇が懸念されました)、米国を除く市場が改善しました。その結果、米国のパフォーマンスは平均以下となり、米国以外の市場は最近のアンダーパフォームをある程度取り戻しました。世界の株式市場全体では、5月は1.30%上昇(4月は4.15%上昇)しました。米国市場は0.34%上昇(同5.09%上昇)、米国を除くグローバル市場は2.53%上昇(同2.95%上昇)しました。5月は50市場中36市場が上昇し、4月の40市場(先進国市場はすべてが上昇)から減少しました(3月は33市場が上昇)。

 ○S&Pグローバル総合指数は4月に4.15%上昇した後(米国の5.09%の上昇を除くと2.95%の上昇)、5月は1.30%上昇しました(米国の0.34%の上昇を除くと2.53%の上昇)。3月は2.27%の上昇でした(米国の3.41%の上昇を除くと0.88%の上昇)。過去3ヵ月間では、世界の株式市場は7.90%上昇(米国の9.04%の上昇を除くと6.49%の上昇)しました。年初来では20.52%の上昇で、米国の11.86%上昇を除くと8.85%上昇しました。過去1年間では41.42%上昇し、米国の41.90%上昇を除くと40.85%の上昇となっています。より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は44.72%上昇しましたが、米国の54.97%上昇を除くと33.35%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は38.42%上昇し、米国の55.78%上昇を除くと20.71%の上昇でした。

  ⇒2020年11月3日の大統領選挙以降では、グローバル市場は26.57%上昇しましたが、米国の26.73%上昇を除くと26.36%の上昇でした。

 ○2021年5月のまとめ

  ⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は9710億ドル増加しました(4月は3兆250億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は8230億ドル増加(同9750億ドル増)、米国市場は1480億ドル増加しました(同2兆490億ドル増)。

  ⇒新興国市場は5月に1.31%上昇し(同2.76%上昇)、過去3ヵ月間では2.28%上昇、年初来では6.71%上昇、過去1年間では44.96%上昇しました。

  ⇒先進国市場は5月に1.29%上昇し(同4.33%上昇)、米国を除くと2.97%上昇(同3.02%上昇)しました。過去3ヵ月間では8.66%上昇(米国を除くと8.03%上昇)、年初来では11.02%上昇(同9.62%上昇)、過去1年間では41.04%上昇(同39.58%上昇)となりました。

  ⇒5月は11セクター中7セクターが上昇し、セクター間のばらつきは拡大しました(4月は11セクターが揃って上昇、3月は10セクターが上昇)。パフォーマンスが最高のセクター(エネルギー、5.53%上昇、4月は11セクター中で最低)と最低のセクター(情報技術セクター、1.21%下落)の騰落率の差は6.73%となり(過去1年間の平均は7.89%)、4月の5.53%から拡大しました(3月は7.13%)。

 ○新興国市場は5月に1.31%上昇しました。4月は2.76%の上昇、3月は1.75%の下落でした。過去3ヵ月間では2.28%の上昇、年初来では6.71%の上昇、過去1年間では44.96%の上昇となりました。過去2年間では33.04%の上昇、過去3年間では21.37%上昇しています。5月は、25市場中14市場が上昇し、4月の16市場を下回りましたが、3月の11市場を上回りました。パフォーマンスが最高となったのはハンガリーで5月は14.59%上昇し、年初来では16.29%の上昇、過去1年間では45.79%上昇しました。2番目はポーランドで5月は13.11%上昇し、年初来では18.91%の上昇、過去1年間では46.51%上昇しました。3番目はチェコ共和国で5月は9.48%上昇し、年初来では21.74%の上昇、過去1年間では58.32%上昇しました。

 パフォーマンスが最低だったのは先月と同様にチリで7.12%下落し(先月は8.62%下落)、年初来では1.90%の下落、過去1年間では26.24%上昇しました。これに続いたのがエジプトで5月は4.81%下落し、年初来では7.79%の下落、過去1年間では3.58%下落しました。3番目が台湾で5月は3.92%下落し、年初来では16.11%の上昇、過去1年間では67.70%上昇しました。

 ○先進国市場は3月の2.82%上昇、4月の4.33%上昇の後、5月は1.29%上昇しました。米国を除くと2.97%の上昇(3月は1.84%上昇、4月は3.02%上昇)でした。先進国市場は年初来では11.02%上昇、米国を除くと9.62%の上昇でした。過去1年間では41.04%上昇、米国を除くと39.58%の上昇となりました。過去2年間では46.21%上昇、米国を除くと33.36%上昇、過去3年間では40.58%上昇、米国を除くと20.44%上昇しました。3月の19市場、4月の24市場に対して、5月は25市場中22市場が上昇しました。

 パフォーマンスが最高となったのはオーストリアで5月は8.08%上昇し、年初来では20.32%上昇、過去1年間では63.67%上昇しました。2番目はルクセンブルグで5月は6.46%上昇し、年初来では15.72%の上昇、過去1年間では98.12%上昇しました(過去3年間では8.45%下落)。3番目はスペインで5月は5.88%上昇し、年初来では12.79%の上昇、過去1年間では41.17%上昇しました。

 パフォーマンスが最低だったのはニュージーランドで5月は5.47%下落し、年初来では10.30%下落、過去1年間では、26.37%上昇しました。これに続いたのがシンガポールで5月は0.57%下落し、年初来では13.89%上昇、過去1年間では51.15%上昇でした。3番目は韓国で5月は0.05%下落し、年初来では4.66%上昇、過去1年間では73.18%上昇しました。

  ⇒注意すべき点として、カナダは5.84%の上昇(年初来では20.50%上昇、過去1年間では51.05%上昇)、英国は3.38%の上昇(同13.50%上昇、同35.39%上昇)、ドイツは2.45%の上昇(同9.76%上昇、同40.75%上昇)、日本は1.83%の上昇(同1.33%上昇、同22.28%上昇)でした。

インデックス・レビュー
S&P 500指数

 S&P 500指数は5月に0.55%上昇して4204.11で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス0.70%)。4月は4181.17で終え、5.24%の上昇(同プラス5.34%)、3月は3972.89で終え、4.24%の上昇(同プラス4.38%)でした。過去3ヵ月間では10.31%上昇(同プラス10.72%)、年初来では11.93%上昇(同プラス12.62%)、過去1年間では38.10%上昇(同プラス40.32%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは24.16%上昇して月を終えました(同プラス25.93%)。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は初めて3万5000ドルを突破しましたが(5月10日の終値は3万5091.56ドル)、その水準を月末まで維持できず、結局1.93%上昇の3万4529.45ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス2.21%)。4月は3万3874.85ドルで終え、2.71%の上昇(同プラス2.78%)、3月は3万3072.88ドルで終え、6.62%の上昇(同プラス6.78%)でした。過去3ヵ月間では11.63%上昇(同プラス12.18%)、年初来では12.82%上昇(同プラス13.76%)、過去1年間では36.03%上昇(同プラス38.79%)でした。

 S&P 500指数の5月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は4月の0.73%から0.98%に上昇し(3月は1.39%)、年初来では1.11%となりました(4月末時点は1.14%)。2020年は1.73%と2019年の0.85%から上昇し、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比25%減少した4月から5%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では30%減少しましたが、過去1年間では前年比9%増加しました。5月の前日比で1%以上変動した日数は20営業日中5日となりました(上昇が3日、下落が2日、2%以上の下落が1日。4月は21営業日中4日で、上昇が4日、下落が0日、2%以上の変動が0日。3月は23営業日中8日で、上昇が5日、下落が3日)。年初来では前日比で1%以上変動した日数が27日(上昇が18日、下落が9日)、2%以上変動した日数が3日(上昇が1日、下落が2日)となりました。2020年は1%以上変動した日数が109日(上昇が64日、下落が45日)、2019年は37日(上昇が22日、下落が15日)でした。5月は20営業日中10日で日中の変動率が1%以上となり(4月は21営業日中5日)、3%以上変動した営業日はありませんでした(4月も0日)。年初来では1%以上の変動が49日、3%以上の変動が2日となりました。2020年は1%以上の変動が158日(11月末時点は154日)、3%以上の変動が34日(同34日)、2019年はそれぞれ73日と1日、2008年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。

 5月は不安定な値動きとなったものの、S&P 500指数は終値での最高値を1回更新し、結果として引き続き上昇して終わりました。利益は予想を大幅に上回って過去最高を更新し、売上高も予想よりも好調でした。多くの企業が業績予想の発表を再開しましたが、同様に明るい内容となり、市場では楽観的なムードが支配的となりました。

 5月は11セクター中7セクターが上昇し、3月と4月の全11セクターを下回りました(2月は7セクター)。素材が4月の5.32%上昇(3月は7.29%上昇)の後に5.04%上昇し、騰落率首位となりました。同セクターは年初来では20.10%上昇しています。原油価格が上昇し、(景気回復により)消費用及び産業用需要の回復が予想される中、エネルギーも好調となり、5月に4.90%上昇し、年初来では36.23%上昇と、指数構成セクターの中で騰落率首位となりました。同セクターは2019年末からは14.60%下落と、騰落率最下位となっています。金融も4月の6.41%上昇の後に4.68%上昇と、大半のセクターを上回るパフォーマンスを上げました。同セクターは年初来では28.49%上昇しています。

 消費関連セクターのパフォーマンスは引き続きまちまちとなり、生活必需品が1.65%上昇し、年初来で4.19%の上昇となった一方、一般消費財は3.89%下落し、年初来で5.95%の上昇となりました。公益事業が2.78%の下落で騰落率最下位となりました。同セクターは年初来でも3.29%の上昇で、騰落率最下位となっています。情報技術は利益確定に伴い反落し、5月に1.05%下落し(4月は5.22%上昇)、年初来では5.93%の上昇となりました。

 5月は値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差が縮小しましたが、なお値上がり銘柄数が上回りました。5月の値上がり銘柄数は317銘柄(平均上昇率は5.05%)と、4月の410銘柄(同6.56%。3月は419銘柄で同7.63%)を下回りました。10%以上上昇した銘柄数は27銘柄(同15.18%)と、4月の75銘柄(同13.38%。3月は124銘柄で同14.08%)から減少した一方、25%以上上昇した銘柄数は2銘柄と、4月の1銘柄(3月は2銘柄)から増加しました。一方、値下がり銘柄数は188銘柄(平均下落率は3.75%)と、4月の95銘柄(同3.73%。3月は86銘柄で同4.79%)から増加しました。10%以上下落した銘柄数も11銘柄(同13.25%)と、4月の10銘柄(同12.36%)、3月の7銘柄(同16.90%)を上回りました。4月と同様、25%以上下落した銘柄はありませんでした(3月は1銘柄)。

 過去3ヵ月間では、値上がり銘柄数は447銘柄(平均上昇率は15.10%)と、4月末時点の445銘柄(同20.19%。3月末時点は400銘柄で同15.40%)から増加した一方、値下がり銘柄数は57銘柄(平均下落率は8.50%)と、4月末時点の60銘柄(同5.89%。3月末時点は105銘柄で同5.54%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数は309銘柄(平均上昇率は19.47%)と、4月末時点の360銘柄(同23.616%)から減少し、10%以上下落した銘柄数は17銘柄(平均下落率は19.61%)と、4月末時点の12銘柄(同14.71%)から増加しました。52銘柄が25%以上上昇し(4月末時点は141銘柄)、5銘柄が25%以上下落しました(4月末時点はゼロ)。

 年初来では、値上がり銘柄数は441銘柄(平均上昇率は22.02%)と、4月末時点の443銘柄(同19.07%)から減少した一方、値下がり銘柄数は64銘柄(平均下落率は7.31%)と、4月末時点の61銘柄(同5.26%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は328銘柄(平均上昇率は27.88%)と、4月末時点の314銘柄(同24.62%)から増加し、10%以上下落した銘柄数は22銘柄(平均下落率は13.83%)と、4月末時点の8銘柄(同15.90%)から増加しました。164銘柄(4月末時点は125銘柄)が25%以上上昇し、1銘柄(4月末時点も1銘柄)が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム