今週は、4月下旬の3月期末決算発表前に3万円台回復できるか注目

著者:出島 昇
投稿:2021/04/12 17:53

先週は、方向感に欠ける展開で、2度ザラ場で3万円台回復するが週末は29700円台で終了

 先週の予測では、日経平均の上昇は、ナスダックの大幅上昇を受け、日経平均採用銘柄を中心にハイテク株物色になっているためであり、このままナスダックの上昇が続けば、値ガサハイテク株の上昇で3万円台乗せとなるとしました。ただし、3万円を突破後は戻り売りや利益確定売りで3万円台水準を維持するのは難しく、3月18日の30485円を突破できるかどうかにかかるともしました。

 結果的に、3万円台乗せは一時的となりましたが、その後は方向感に欠ける展開となりました。週始めは、米国市場では前週の4月1日(木)の大幅上昇のあとは休日でしたが、この日の3月雇用統計が非常に強い結果となったことで、日経平均は△230円の30084円と3万円台を回復して寄り付き、一時△341円の30195円まで上昇しました。後場は伸び悩むものの△235円の30089円と3日続伸で3万円台乗せで引けました。翌日の6日(火)は、前日の米国市場では、景気回復期待が続き3指標そろって大幅高となり、NYダウは最高値更新となったことで、△119円の30208円と高く寄り付きました。しかし、ここから反落し、一時▲423円の29665円まで下げ、終値は▲392円の29696円となりました。その後は上値は重いものの大きく崩れない状況が続きました。

 7日(水)は、前日公開のIMFの世界経済見通しが上方修正されたことで、△171円の29867円まで上昇するものの、利益確定売りで軟化し、今度は一時▲173円の29523円まで下げ、その後、持ち直して△34円の29730円と小反発で引けました。

 8日(木)は、米国市場や上海株式はしっかりしているものの、日経平均は上値重く、一時▲214円の29516円まで下げる場面があるものの、引けにかけて下げ幅を縮小し、一時プラス転換しましたが、終値は▲21円の29708円と小反落しました。この間に米国では長期金利の上昇一服感が出てきたことで、為替市場では円安一服感が出てきたことでグロース株、バリュー株に手詰まり感が強まりました。ただし、米国株はS&Pが連日の高値更新となり、ナスダックも大幅上昇となったことで、9日(金)の日経平均は△156円の29865円で寄り付き、△355円の30064円と3万円台を回復しましたが、後場には急速に上げ幅を縮小し、△59円の29768円と小反発で引けました。

 日本市場の引け後の米国市場は、ワクチン接種の加速を背景に経済活動正常化期待が続き、株価主要3指標は,NYダウ△297ドルと3日続伸し4日ぶりに史上最高値更新し、S&Pは3日続伸で連日の史上最高値更新となり、ナスダックは史上最高値まであと2%未満に近づきました。注目の3月生産者物価指数は、市場予想の前月比0.5%を上回る+1.0%とインフレ圧力の懸念を示しましたが、長期金利は小幅な上昇のため、株価には影響を与えませんでした。しかし、今後の長期金利の上昇には注意が必要です。シカゴの日経先物は△150円の29920円でした。

今週は、4月下旬の3月期末決算発表前に3万円台回復できるか注目

 先週は、米株式の最高値更新にもかかわらず、日経平均は上値の重い展開となりました。5日は30195円の高値をつけて終値は30089円、6日(火)は30208円で寄り付いて終値は29696円、週末の9日(金)は、一時30064円まで上昇して、終値は29768円となり、全く方向感が出にくい展開でした。3ヶ月の短期チャートでみると、2月16日の30714円をピークに、3月18日の30485円、そして先週の4月6日の30208円で頭を打って、ゆるやかな下降トレンドになりつつあります。これを打破するには、先週も示しましたように3月18日の30485円を突破する必要があります。現時点ではスピード調整の範囲とみている市場関係者は多く、米国株式次第では、このスピード調整が長引くことも考えられます。

 ここで気になるのは、先週、米国株式の上昇に連動せず下落となったことです。この背景には日本でのコロナ感染拡大第4波が考えられます。「まん延防止措置」の適用地域が拡大され、感染が下げ止まる見通しが不透明な状況です。米国との違いは、米国ではワクチン接種が加速的に進んでおり、経済活動正常化期待で株価が上昇している側面があります。一方、日本ではワクチン不足で経済正常化へのメドが目先全く不透明なままであるということです。この状況が株式にも影響を与えていますので、これを織り込むのに時間がかかっているということです。ワクチン接種の状況は、人口100人当りの接種回数は、イスラエルで100回を突破、英国で50回を超え、独仏伊で20回弱、日本はというと1回ということです。これは政治力によるもので日本政府のコロナ対応の失敗が株価に影響を与えているとの見方があります。そうであれば4月に大きな上昇もスタートが遅れるとうこことになるといえます。

 今週は、週始め12日(月)の引け後に3月工作機械受注速報値が出ますが、これが1年7ヶ月ぶりに景況判断の1000億円を上回った2月に続き大台を維持できるかが1つの焦点になるとの見方があり、キッカケとなるかどうか注目となります。あとは今週も米株式の堅調さが続けば遅れに追随することになります。予想のレンジは29500~30500円となります。週の早い段階で3万円台に乗せることができなければスピード調整は長引くことになります。

 本日12日(月)は、寄り付きは前週末の米国市場でNYダウが最高値を更新し、またナスダックも続伸した流れを受け、寄り付き直後に29876円まで上昇しましたが、時間外取引の米株先物安もあって、利益確定売りに傾き下げに転じました。その後、しばらくは前週末終値近辺でもみ合いとなっていましたが、上海株式やハンセン指数などアジア株の軟調推移も重しとなり、次第に軟化し大引けにかけて下げ幅を広げ▲229円の29538円と大幅下落で引けました。

(指標)日経平均

 先週の予測では、バイデン大統領の巨額インフラ投資計画の発表を受けて半導体関連が注目され、ナスダックが大幅上昇となりました。これを受けて日本市場でもハイテク株が物色されたので、この流れの中でナスダックが上昇すれば引き続き日本でもハイテク株が買われ3万円台乗せとなるとしました。但し、3万円台では売り物が多く3万円台に留まれるかどうか注目としました。

 結果的に、米国株はある程度堅調だったものの、日経平均は上値重く3万円台乗せのあとは、29500円台まで下落し、上下動の動きとなって方向感のない状況でした。2度ほど3万円台に乗せるものの、すぐに反落し週末は29700円台で引けました。

 今週は、4月下旬に3月期末企業の本決算発表が本格化する前にスピード調整が終了できるかどうかとなります。チャートをみると分かりますように2月16日の30714円、3月18日の30485円、そして4月6日の30208円と順次アタマを低くしてきています。ここでスピード調整が終わるためには、柴田罫線では終値で30216円(正確には30218円)以上まで上昇しなければなりません。その後、本格的な戻りのためには3月18日の30485円を突破する必要があります。
 

 

(指標)NYダウ

 先週の予測では、バイデン大統領の8年に渡る巨額のインフラ投資を好感したドル買いと株価上昇が継続するとし、但し、新型コロナ感染拡大には注意としました。しかし、巨額インフラ投資に加え、ワクチン接種の加速を背景に経済活動正常化期待が高まり株価はS&Pが連日の史上最高値を更新し、NYダウも3日連続上昇し、4日ぶりに史上最高値更新で引けました。

 決算シーズンに入った中で、ワクチン接種が加速しており、経済活動正常化期待が高まり株価の上昇要因となります。バイデン政権は、これまで1.9兆ドルの経済対策に続いて、2兆ドル規模のインフラ投資計画を提案しており、さらなる支援拡大も辞さない姿勢を示しています。FRBも3月のFOMC議事録で経済や雇用が「望ましい」水準をかなり下回る水準で緩和の条件を満たすには程遠いとしており、早期の緩和縮小の思惑は後退しました。結果的に中期金利の上昇は小幅の上げとなりました。そのためナスダックの上昇も期待できることになります。
 

 

(指標)ドル/円

●先週は早期利上げ観測後退で一時ドル売りへ

 FRB議長により米国の政策金利は2023年末まで現状水準を維持するとの見方から量的緩和策の早期縮小の思惑は後退したことで、ドル買い・円売りは後退し、4月8日には1ドル=109.00円の円高へふれる場面もありました。ただしワクチン接種の加速から経済正常化期待の高まりは継続していることでドルは109.60円水準まで買い戻されました。

●今週も引き続き経済正常化期待は継続しドルは底堅い

 今週、発表されるインフレや個人消費に関する経済指標は、IMFが4月6日に公表した世界経済見通しで米国経済の強い回復が示されており、IMFの経済見通しを反映した内容になると期待されています。又、3月消費者物価指数と3月小売売上高は前回実績を上回り、今月29日予定のGDP(1-3月期)に寄与すると予想されているため、ドルと株価の上昇を支えることになりそうです。
 

 

配信元: みんかぶ株式コラム