CACHD Research Memo(12):コロナ禍においても非財務価値向上への取り組みが続く

配信元:フィスコ
投稿:2021/04/05 16:02
■ESG

1. 小さくない果実を結びはじめた「ボッチャ支援」
ITとヘルスケアを事業の柱とするCAC Holdings<4725>は、本業を通じて社会が抱える課題を解決する典型的なCSV(Creating Shared Value、事業を通じた社会貢献)型企業グループである。その同社が、障害者スポーツ「ボッチャ」の普及・支援活動を2016年から継続している。同社への取材を通じ、「ボッチャ」に対する同社の熱量が想定以上に大きいことに気付かされた。

創業50周年を機に始まった同活動だが、なぜ「ボッチャ」が選ばれたのか。東京オリンピック・パラリンピックに絡めて、社会からの反響を集め知名度向上につながることを狙ったことは間違いないだろう。しかしながら、同社は単なる資金的な支援だけではなく社員自らが企画・実施することを重視した活動を継続している。

「ボッチャ」は障害者向けに考案され全世界に普及(1988年にパラリンピック正式競技に採用)しており、障害者・健常者そして老若男女、洋の東西を問わず楽しめるスポーツながら戦略性も求められる。こうした特徴ゆえ「ボッチャ」を社内の新人研修や全社員研修のカリキュラムとして取り入れるだけでなく、社員の家族等にも「ボッチャ」に触れ合う機会を提供することが可能となった。今ではグループ社員のほぼ全員がボッチャ経験者となり、コロナ禍にあってもZoomを利用したオンライン教室の開催やSNSを通じた情報発信等に取り組んでいる。さらに2021年においては、工夫してリアルでのイベント開催に意欲を燃やしている。

こうした結果が評価され、同社は東京都からは「東京都スポーツ推進企業」に5年連続で認定されている。2021年3月には毎年10社程度選定される「東京都スポーツ推進モデル企業」を受賞、加えて2021年1月には4年連続でスポーツ庁より「スポーツエールカンパニー」に認定されている(2020年度の認定数は全国で623社)。

同社の「ボッチャ」への取り組みは、普及・支援の枠を超えグループ社員のコミュニケーションや社会貢献に対する意識向上に貢献しつつある。東京オリンピック・パラリンピックの開催については未だ不透明であるものの、障害者との交流で得た何かを含めて「ボッチャ」の魅力を社内外で発信し続けてきたことは、案外と大きな果実に育っているように思える。それこそが、創業50年記念の取り組みに同社が「ボッチャ」を選んだ理由であり、同社が「見えない資産」と呼ぶ非財務価値の向上に対する思いだと考える。

2. コロナ禍で確認された同社のワークスタイル変革効果
同社グループは、「生産性向上・コスト削減」と「働きやすい環境」の両立を目指したワークスタイル変革に取り組んでいる。具体的には、2011年から業務フローのシステム化やオンライン会議等のITツール活用、ペーパレス化などを進めており、2012年には「いつでも、どこでも、誰とでも」仕事ができるテレワーク環境・体制を整備、営業部門と管理部門のフロアを対象にフリーアドレス制を導入し在宅勤務も可能とした。そのうえ、個人のライフワークバランスに合わせた多様な勤務形態を確立した結果、2016年には中核事業会社であるシーエーシーが総務省から「テレワーク先駆者百選」に選出された。

また、コロナ禍に伴い同社のワークスタイル変革が一段と進んだ。2020年春の東京都知事による外出自粛要請及び政府による緊急事態宣言発出に際し、中核事業会社のシーエーシーでは、リモートワークを積極化することで本社の出社人員数を平常時の約2割に抑制したが、大きな混乱もなく事業を継続することに成功した。さらに、緊急事態宣言が明けた2020年6月以降も出社率を平常時の約5割にとどめることを目標とし、2020年7月には在宅勤務手当(5,000円/月)や勤務形態(出社主体か在宅主体)選択制度を導入している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)


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