EVの課題解決に秘策あり!モビリティー最前線を走る「ワイヤレス給電」関連株 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2020/12/23 19:30

―バッテリー搭載量少なく軽量化・低価格化に寄与、資源確保のネック解消にも貢献―

 二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態となる「カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みが全世界で広がっている。有効手段のひとつが内燃機関を搭載しない電気自動車(EV)へのシフトとされ、東京都の小池百合子知事は8日の都議会で都内での新車販売を2030年までに非ガソリン車に切り替える方針を示した。ただ、本格的にEVが普及するためには充電に伴う利便性の向上や大量のバッテリーを生産するための資源量の確保といった課題があり、バッテリーの搭載量を少なくできる「ワイヤレス給電」への注目度が高まっている。

●再生エネの導入拡大にも寄与

 ワイヤレス給電とは、コネクターや金属の接点などを介さずに電力を送電する技術のこと。送電側と受電側との間で発生する誘導磁束を利用した電磁誘導方式や、送電側と受電側の共振器を磁界共鳴させる磁界共鳴方式、送電側と受電側にそれぞれ電極を対面させて高い周波数で電気を流すと相手側電極にも電気が流れる現象(高調波電流)で伝送する電界結合方式、電磁界を利用して送電する電波受信方式がある。既にスマートフォンなどさまざまな製品にワイヤレス給電(充電)機能が付与されているほか、ダイフク <6383> では搬送装置や機械の移動中給電を実現している。

 次の段階として実証実験が活発化しているのが、道路に埋め込んだコイルから走行中のEVに電気を供給する技術の実用化だ。このメリットはEVのバッテリー搭載量を少なくできる点で、車体が軽くなることで少ないエネルギーでも走ることが可能になるほか、EVの低価格化につながる効果も期待できる。また、走行中給電は再生可能エネルギーと親和性が高いことも魅力のひとつ。太陽光発電や風力発電は気象状況で発電量が変動するため大容量の蓄電設備が必要となるが、走行中のワイヤレス給電が実現できればEVが蓄電設備の役割を果たせるようになる。こうしたことから、走行中のワイヤレス給電は自動車のCO2削減だけでなく、再生エネの更なる拡大という面でも重要な技術といえ、株式市場でも関連銘柄が注目されている。

●実用化に向け取り組み活発化

 東京大学大学院新領域創成科学研究科、ブリヂストン <5108>日本精工 <6471>デンソー <6902>ローム <6963> はこのほど、共同で「SDGs(国連で採択された持続可能な開発目標)を実現するモビリティー技術のオープンイノベーション」社会連携講座を設置した。期間は24年3月31日までで、走行中給電システムや車両運動制御、それらを組み合わせたシステムが第1の研究テーマとなっている。昨秋には同グループと東洋電機製造 <6505> が共同で、道路からインホイールモーター(駆動輪のすぐ近くにモーターを配置し、タイヤを直接駆動する仕組み)に直接、走行中給電できる「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモーター」の走行実験に成功しており、25年までに実証実験の段階に移行する予定だ。

 京都大学とミネベアミツミ <6479> は10月、ワイヤレス給電技術を活用したトンネル内のインフラ点検の実証実験を行った。この実験ではミネベアミツミが主体となって開発した「マイクロ波無線送電」や「高速画像信号処理」、ボルトの緩みを直接検出する「電池レスボルト軸力センサー」の要素技術を結集したシステムが活用され、マイクロ波無線送電技術を活用した走行モニタリングの有用性や利便性の確認と実用上の課題を抽出。今後は社会実装に向けた取り組みを加速していくという。

 また、金沢工業大学は9月にマイクロ波を用いた無線電力伝送で世界最高の電力変換効率を達成したと発表。この研究は17年度から始まった内閣府・戦略的イノベーションプログラム(SIP)のもとで行われ、研究プログラムには名古屋大学や芝浦工業大学のほか、古河電気工業 <5801>三菱電機 <6503>富士電機 <6504>シャープ <6753>ダイヘン <6622> などが参加しており、同グループは今後更に大電力の高効率受電技術の確立に取り組むことで、無線電力伝送の実用化を加速させたい考えだ。

 このほかでは豊田合成 <7282> が7月、マイクロ波給電の独自技術を持つ米オシアと共同開発契約を締結した。豊田合は14年からワイヤレス給電の技術開発を始め、18年には車室内のLEDをワイヤレス(共振式)で点灯させる世界初の製品を実用化した。オシアには19年9月に出資しているが、共同開発契約によってパートナーシップを更に深化させることで、マイクロ波給電を用いた製品開発を進める。オシアとは丸文 <7537> も戦略的パートナーシップ契約を締結しており、オシアが特許を持つ空間伝送型ワイヤレス給電技術「Cota」のライセンス提供サービスを行っている。

●部材を手掛ける企業にも商機

 走行中ワイヤレス給電の実現可能性が高まるなか、部材を手掛ける企業にも注目してみたい。戸田工業 <4100> は6月から、厚膜超大判フレキシブルフェライトシートで、EV向け非接触給電用途へのサンプルワークを開始している。EV向けの非接触システムインフラが整備され、市場が拡大すると予測される25年をメドに、年100万台規模の供給能力を構築する計画だ。

 これ以外では、コイルユニットなどワイヤレス給電に関連するさまざまな製品を取り扱うTDK <6762> 、部品や回路の共振特性や伝達効率の測定ができる機器を展開するエヌエフホールディングス <6864> [JQ]、ワイヤレス環境に貢献する厚銅基板などを手掛けるキョウデン <6881> [東証2]、長年培ってきたフォトリソグラフィー技術を活用したワイヤレス充電用のコイルを開発済みの大日本印刷 <7912> のビジネス機会も拡大しそうだ。

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