S&P500月例レポート(20年11月配信)<後編>

<前編>の続き

企業業績

 ○これまでにS&P 500指数構成銘柄の63%(時価総額の75%)に相当する318銘柄が2020年第3四半期の決算発表を終えています。318銘柄のうち利益が予想を上回ったのは271銘柄(85.2%と高い水準でした)、予想を下回ったのは36銘柄、予想通りは11銘柄でした。予想を上回った銘柄の割合が高かったのは、2020年第3四半期の利益予想が2019年末時点から2020年9月末までの間に29.9%引き下げられていたためでもあります。売上高に関しては、314銘柄のうち78.3%に相当する271銘柄が予想を上回りました。

  ⇒2020年第3四半期の利益予想は期末時点から9.3%引き上げられ(年初来では約29.9%引き下げられています)、前期比で30.7%の増益、前年同期比では12.1%の減益となる見通しです。

  ⇒第4四半期の利益予想は9月末から1.5%上方修正され、前期比3.0%の増益、前年同期比では8.0%の減益が予想されています。

  ⇒その結果、2020年の予想EPSは25.3%の減益となり、それに基づく足元の予想株価収益率(PER)は27.1倍となっています。2021年については、企業利益は大幅に増加して過去最高を更新すると予想され、2020年比で40.1%増益(2019年比で4.7%増益)が見込まれています。そして、2021年の予想PERは19.9倍と、引き続き高水準となっています。

  ⇒2020年9月末時点で、13.3%の企業で2019年9月末と比較して4%以上株式数が減少しました(2019年9月末時点では22.8%)。

個別銘柄

 ○iPhoneメーカーのApple(AAPL)は新モデルのiPhone12を発表しました。このモデルはSamsung ElectronicsのGalaxyに対抗して、すべてが5G対応となっています。ただ、米国ではプロバイダーが依然として5Gサービスエリアを拡大している最中です。

 ○Amazon(AMZN)は今年で6回目となるプライムデー(10月13日と14日)を開催し、外部事業者の売り上げが前年比60%増の35億ドルになったと発表しました。売上総額はまだ発表されていませんが、昨年(2019年7月)の71億6000万ドルを上回ると予想されています。

  ⇒Amazonに後れをとらないように(ホリデー商戦への懸念が高まっています)、Target(TGT)は「Deal Days」を開催、Best Buy(BBY)は「Black Friday」セールを開始、Walmart(WMT)は「Big Save Event」を開催しました。

 ○オピオイド系鎮痛剤「オキシコンチン」のメーカーPurdue Pharma LPは米司法省と83億4000万ドルの和解案に合意しました。現在、同社の破産プロセスが進行中で、政府への実際の支払い額は概算で2億5000万ドル(83億ドルの3.0%)となります。

 ○米司法省はGoogleの持株会社Alphabet(GOOG/L)が検索エンジンの独占状況を維持するために反競争的行為を行ったとして、同社を反トラスト法違反で提訴しました。この提訴は事前に予想されており、現在は州がこの法的闘争に加わるかどうかが主に注目されています(または、州が独自に法的行動をとる可能性もあります)。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはS&P中型株400指数構成銘柄でスイミングプール用品の卸売販売企業のPool(POOL)をS&P 500指数に採用し、Morgan Stanley(MS)に買収されたE*TRADE(ETFC)を同指数から除外しました。また、Fortive(FTV)からスピンオフされた自動車部品メーカーVontier(VNT)をS&P 500指数に採用し(FortiveはそのままS&P 500指数にとどまります)、Chevron(CVX)に買収されたNoble Energy(NBL)を除外しました。

注目点

 ○格付け機関のムーディーズはパンデミックに伴うコストと収入の減少を理由に、ニューヨーク州とニューヨーク市の格付けを「Aa1」から「Aa2」に引き下げました。ムーディーズはまた、ニューヨーク市の見通しを「ネガティブ」に据え置き、さらに格付が引き下げられる可能性を指摘しています。

 ○2020年第3四半期のパソコンの売上高は14.6%増加して8130万台となり、過去10年余りで最高となりました。在宅勤務と学校のパソコン利用がこの伸びを牽引しました。

 ○2020年9月までの会計年度における米国政府の財政赤字は2兆2000億ドルのコロナ対策「CARES Act」によって膨れ上がり、過去最大の3兆1000億ドルとなりました。この水準は、それまでの過去最大である2009年の財政赤字1兆4000億ドルの2倍以上となっています。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは9月末の0.68%から0.88%に上昇して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは9月末の1.46%から1.66%に上昇して月を終えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは9月末の1ポンド=1.2907ドルから1.2950ドルに上昇し(同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは9月末の1ユーロ=1.1727ドルから1.1646ドルに下落しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は9月末の1ドル=105.47円から104.67円に上昇し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は9月末の1ドル=6.7908元から6.6927元に上昇しました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は9月末の1バレル=39.88ドルから35.75ドルに下落して月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、9月末の1ガロン=2.259ドルから2.234ドルに下落して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は9月末の1トロイオンス=1892.20ドルから下落して1878.40ドルで月の取引を終えました(同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は9月末の26.35から38.02に上昇して月を終えました。月中の最高は41.16、最低は24.03でした(同13.78、同16.12、同11.05)。

世界の株式市場

 ○世界の株式市場は9月の大半で下落した後で10月に反転しましたが、コロナ感染が再拡大して各国政府が規制解除の一部を取りやめて規制を再導入する中、上げ幅を失って月を終えました。10月は50市場中12市場が上昇し、9月の11市場から増加しました(8月は42市場が上昇)。米国市場のパフォーマンスはグローバル市場と同様でした。

 ○世界の株式市場は9月に3.24%下落した後(米国の3.83%の下落を除くと2.46%の下落)、10月に全体で2.20%下落しました(米国の2.22%の下落を除くと2.18%の下落)。8月は5.94%上昇(米国の7.04%上昇を除くと4.57%上昇)でした。過去3ヵ月間では0.26%上昇(米国の0.66%上昇を除くと0.23%の下落)、年初来では3.19%上昇(米国の1.51%上昇を除くと8.57%の下落)しました。

 過去1年間では世界の株式市場は2.42%上昇し、米国の7.98%上昇を除くと3.88%の下落となっています。より長期でも、米国のパフォーマンスが突出しています。過去2年間では、グローバル市場は12.44%上昇しましたが、米国の20.12%上昇を除くと3.93%の上昇でした。過去3年間ではグローバル市場は9.10%上昇し、米国の25.69%上昇を除くと7.10%の下落でした。

  ⇒2016年11月8日の米大統領選以降では、グローバル市場は32.36%上昇しましたが、米国の51.99%上昇を除くと13.01%の上昇でした。

 ○10月のまとめ

  ⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は1兆3320億ドル減少しました(9月は8540億ドル減)。米国以外の市場の時価総額は5670億ドル減(800億ドル減)、米国市場は7650億ドル減少しました(同7740億ドル減)。

  ⇒新興国市場は10月に1.94%上昇し(9月は2.36%下落)、過去3ヵ月間では2.06%上昇、年初来では2.28%下落、過去1年間では4.23%の上昇となっています。

  ⇒先進国市場は10月に2.74%下落し(9月は3.34%下落)、米国を除くと3.64%の下落(同2.50%下落)となっています。過去3ヵ月間では0.01%上昇(同7.50%上昇)、米国を除くと1.10%下落(同5.62%上昇)、年初来では3.33%下落(同0.60%上昇)、米国を除くと10.70%下落(同7.32%下落)、過去1年間では2.17%の上昇(同7.74%上昇)、米国を除くと6.54%の下落(同0.28%の上昇)となりました。

 ○10月は11セクター中2セクターが上昇し、セクター間のばらつきは縮小しました(9月は11セクターが揃って下落し、8月は10セクターが上昇しました)。パフォーマンスが最高のセクター(コミュニケーション・サービス、1.52%上昇)と最低のセクター(エネルギー、5.55%下落)の騰落率の差は7.07%と(過去1年間の平均は10.54%)、9月の11.35%と8月の13.39%から縮小しました。

 ○新興国市場は10月に1.94%上昇しました。9月は2.36%の下落、8月は2.53%の上昇でした。過去3ヵ月間では2.06%上昇、年初来では2.28%の下落となりました。過去1年間では4.23%上昇、過去2年間では15.58%上昇、過去3年間では0.57%下落しています。

  ⇒10月は25市場のうち9月よりも多い9市場が上昇しました。9月の上昇は6市場で、8月は17市場が上昇しました。インドネシアのパフォーマンスが最も良好で、10月は8.98%上昇しました。ただし、年初来では26.99%下落、過去1年間では25.07%の下落にとどまっています。次いでパフォーマンスが良かったのはフィリピンで、10月に7.93%上昇しましたが、年初来では15.58%下落、過去1年間では17.46%の下落となっています。3番目にパフォーマンスが良かったのは中国で、10月は4.80%上昇し、年初来では20.08%上昇、過去1年間では31.63%の上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのはポーランドで14.74%下落し、年初来では32.35%下落、過去1年間では32.63%の下落となりました。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはギリシャで、10月に11.64%下落し、年初来では42.24%下落、過去1年間では39.79%の下落でした。3番目はトルコで、10月に10.61%の下落、年初来では32.78%の下落、過去1年間では25.89%の下落となりました。

 ○先進国市場は8月の6.38%上昇、9月の3.34%下落の後、10月は全体で2.74%下落しました。米国を除くと、3.64%の下落(9月は2.50%の下落、8月は5.28%の上昇)でした。先進国市場は過去3ヵ月間では0.01%の上昇(米国を除くと1.10%の下落)、年初来では3.33%の下落(同10.70%の下落)となりました。過去1年間では2.17%の上昇(同6.54%の下落)、過去2年間では12.07%の上昇(同0.42%の上昇)、過去3年間では10.20%の上昇(同9.34%の下落)でした。

  ⇒10月は、25市場のうち3市場が上昇し、9月の5市場、8月の25市場全てを下回りました。パフォーマンスが最高となったのはニュージーランドで2.65%上昇し、年初来では4.64%上昇、過去1年間では17.16%上昇しました。2番目はルクセンブルクで、1.16%上昇しましたが、年初来では17.34%の下落、過去1年間では14.90%の下落となっています。3番目はイスラエルで、0.94%上昇し、年初来では3.19%下落、過去1年間では0.73%上昇しています。パフォーマンスが最低だったのはドイツで、10月に10.19%下落し、年初来では11.74%の下落、過去1年間では7.89%の下落となりました。これに続いたのがノルウェーで、10月に7.10%下落し、年初来では22.72%下落、過去1年間では16.73%下落しました。3番目はベルギーで6.97%下落し、年初来では26.14%の下落、過去1年間では23.39%の下落となりました。

  ⇒注意すべき点として、日本は1.94%の下落(年初来では4.64%の下落、過去1年間では2.30%の下落)、カナダは3.18%の下落(同11.19%の下落、同6.54%の下落)、英国は4.53%の下落(同28.46%の下落、同23.35%の下落)でした。

インデックス・レビュー
S&P 500指数

 S&P 500指数は3269.96で月を終え、2.77%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス2.66%)。9月は3363.00で月を終え、3.93%の下落でした(同マイナス3.80%)。過去3ヵ月間では0.04%下落(同プラス0.37%)、年初来では1.21%上昇(同プラス2.77%)、過去1年間では7.65%上昇(同プラス9.71%)となりました。

 ダウ平均は9月末の2万7781.70ドルから4.61%下落して2万6501.60ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.52%)。10月は2.28%の下落(同マイナス2.18%)でした。過去3ヵ月間では0.04%下落(同プラス0.80%)、年初来では7.14%下落(同マイナス5.38%)、過去1年間では2.01%下落(同プラス0.34%)となりました。

 S&P 500指数の10月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は9月の1.86%から1.41%に低下しました。年初来では1.87%(9月末時点は1.92%)、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比9%増加した9月から8%減少しましたが(営業日数調整後)、前年同月比では20%増加し、過去1年間でも前年比30%増加しました。

 10月の前日比で1%以上変動した日数は22営業日中8日となり(上昇が4日、下落が4日。2%以上上昇した営業日が1日)、年初来では97日(54日が上昇、43日が下落)となりました。10月は22営業日中16日(9月は21営業日中17日)で日中の変動率が1%以上となり、3%以上変動した営業日はありませんでした(9月は2日)。年初来では140日(9月末時点は124日)で日中の変動率が1%以上、34日(同34日)で3%以上となっています。2019年はそれぞれ1%以上の変動が73日と3%以上の変動が1日、2018年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。

 9月と同様、10月も上昇したセクターは11セクター中2セクターにとどまりました(8月は8セクター)。騰落率首位となったのは公益事業セクターで、10月に指数全体とは逆に4.99%上昇しましたが、年初来では3.48%下落と、騰落率はマイナスにとどまっています。コミュニケーション・サービスセクターも騰落率がプラスとなり、10月に0.54%上昇し、年初来で8.21%上昇しました。金融セクターも下落率を1.05%にとどめ、下落は大半のセクターよりも抑制されましたが、年初来では22.55%下落しています。

 情報技術セクターが、利益確定の売り手が見られる一方、成長(と経済)をめぐる懸念を受けて買いが限られる中で5.15%下落(9月は5.42%下落)し、騰落率最下位となりました。同セクターは年初来では20.95%上昇、2016年11月の米大統領選以降では143.71%上昇しています。

 エネルギーセクターは9月の14.64%下落に続き、10月も4.69%下落し、年初来で52.50%の下落となりました。ヘルスケアセクターは10月に3.79%下落し、年初来でも0.33%下落と、騰落率がマイナスに転じました。消費関連セクターも下落し、一般消費財セクターは2.95%の下落(年初来では18.83%の上昇)、生活必需品は2.99%の下落(同1.16%の下落)でした。

 10月も値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。10月の値上がり銘柄数は212銘柄(平均上昇率は6.23%)と、9月の153銘柄(同3.98%。8月は365銘柄で同7.62%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数も46銘柄(同14.87%)と、9月の15銘柄(同12.57%。8月は94銘柄で同16.12%)を上回りました。2銘柄が25%以上上昇しました(9月はゼロ、8月は9銘柄)。

 一方、値下がり銘柄数は292銘柄(平均下落率は5.83%)と9月の351銘柄(同5.62%。8月は139銘柄で同4.32%)から減少しました。10%以上下落した銘柄数も38銘柄(同13.27%)と9月の53銘柄(同14.56%。8月は14銘柄で同13.10%)から減少しました。25%以上下落した銘柄はありませんでした(9月は2銘柄、8月はゼロ)。

 過去3ヵ月間では、256銘柄(平均上昇率は10.73%。9月末時点は356銘柄で同12.96%)が上昇した一方、246銘柄(平均下落率は9.35%。9月末時点は148銘柄で同9.44%)が下落しました。年初来では値下がり銘柄数と値上がり銘柄数の差が拡大し、値上がり銘柄数は196銘柄(平均上昇率は22.30%)と9月末時点の203銘柄(同22.66%)から減少し、10%以上上昇した銘柄数も129銘柄(同31.16%)と、9月末時点の138銘柄(同30.85%)から減少し、65銘柄(9月末時点は66銘柄)25%以上上昇しました。

 一方、値下がり銘柄数は306銘柄(平均下落率は23.89%)と9月の300銘柄(同23.94%)から増加し、10%以上下落した銘柄数も223銘柄(同31.05%)と9月の218銘柄(同31.28%)から増加し、128銘柄(同41.96%。9月末時点は124銘柄で同41.96%)が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
https://www.spglobal.com/spdji/en/documents/performance-reports/sp-global-equity-indices-monthly-update.pdf?force_download=true
 
 
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日時:2020年11月25日(水)、14時~16時45分
   2020年11月26日(木)、14時~16時35分

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配信元: みんかぶ株式コラム