S&P500月例レポート(20年10月配信)<後編>

<前編>の続き

個別銘柄

 ○電気自動車メーカーのTesla(TSLA)は今年、株価が急騰したことを受けて1対5の株式分割を実施しましたが、株価はその後21%下落しました。S&P 500指数への採用が見送られたことも(9月4日の取引終了後、同指数に新たに採用される3銘柄が発表されました)、この株価下落につながった模様です(短期投資家が売りを牽引しました)。Tesla株は13.9%安で9月末を迎えましたが、年初来では413%上昇しています。

 ○バイオ医薬品メーカー大手のAstraZeneca(AZN)は新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を一時中断しました。英国での治験参加者1人に副反応(詳細不明)が出たためです。臨床試験はその後、再開されました。

 ○iPhoneメーカーのApple(AAPL)は(新型コロナ対策に関連して)血中酸素のレベルを測定できるApple Watch(Series 6)などの新製品を発表しました。

 ○オンライン小売りのAmazon(AMZN)は毎年恒例のプライムデーを、今年は10月13日と14日に開催することを明らかにしました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはダウ平均にクラウドベースの顧客管理プラットフォームを提供するSalesforce.com(CRM)、バイオ医薬品メーカーAmgen(AMGN)、テクノロジー大手Honeywell International(HON)を新たに採用し、エネルギー企業のExxon Mobil(XOM)、医薬品メーカー大手Pfizer(PFE)、防衛・航空宇宙関連機器メーカーRaytheon Technologies(RTX)を除外しました。

注目点

 ○2020年9月までの会計年度における米国政府の債務残高(26兆7000億ドルと推定)は、1940年代以降で初めて米国全体の経済規模(22兆3000億ドルと推定)を上回る見通しです。議会予算局は2020年度の米国の財政赤字が3兆3000億ドル(2019年は1兆200億ドル)になると発表しました。

 ○ニューヨーク市のディスカウント店Century 21は、経営破綻したBrooks Brothers、J.C. Penney、J. Crew、Neiman Marcus、ニューヨークに本拠を置くLord & Taylor(1826年ニューヨークで操業開始)に続き、新型コロナを理由として、破産法の適用を申請することを明らかにしました(全13店を閉店)。

  ⇒60万人の会員を有するフィットネスクラブのTown Sports International(CLUB)は新型コロナを理由として、破産法による保護の申し立ての適用を申請しました。ライバル企業であるGold’s Gymは5月に、24 Hour Fitnessは6月にそれぞれ破産法の適用を申請しています。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは8月末の0.71%から0.68%に低下して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは8月末の1.48%から1.46%に低下して月末を迎えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは8月末の1ポンド=1.3365ドルから1.2907ドルに下落し(同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは8月末の1ユーロ=1.1938ドルから1.1727ドルに下落しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は8月末の1ドル=105.86円から105.47円に上昇し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は8月末の1ドル=6.8487元から6.7908元に上昇して月を終えました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は8月末の1バレル=42.82ドルから39.88ドルに下落して月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、8月末の1ガロン=2.311ドルから2.259ドルに下落して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は8月末の1トロイオンス=1972.70ドルから下落して1900ドルを割り込み、最終的に1892.20ドルで月の取引を終えました(同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は8月末の26.41から26.35に低下して月末を迎えました。月中の最高は38.28、最低は24.84でした(同13.78、同16.12、同11.05)。

世界の株式市場

 ○世界の株式市場は、経済活動再開の鈍化と再閉鎖の拡大を受けて、幅広く下落しました。9月は50市場中11市場が上昇し、50市場中42市場が上昇した8月と7月から減少しました(6月は45市場が上昇)。米国市場は9月にグローバル市場をアンダーパフォームしましたが、米国市場が7月と8月にグローバル市場をアウトパフォームしたことがその要因の1つと思われます(S&P 500指数は9月初旬に最高値を2回更新しました)。

 ○世界の株式市場は8月に5.94%上昇した後(米国の7.04%上昇を除くと4.57%上昇)、9月に全体で3.24%下落しました(米国の3.83%下落を除くと2.46%の下落)。過去3ヵ月間では世界の株式市場は7.54%上昇(米国の8.64%上昇を除くと6.19%の上昇)、年初来では1.01%下落(米国の3.82%上昇を除くと6.53%下落)しました。過去1年間では7.56%上昇し、米国の12.65%上昇を除くと1.70%の上昇となっています。より長期でも、米国のパフォーマンスが突出しています。過去2年間では、グローバル市場は5.82%上昇しましたが、米国の13.64%上昇を除くと2.76%の下落でした。過去3年間ではグローバル市場は13.75%上昇し、米国の31.20%上昇を除くと3.26%の下落でした。

  ⇒2016年11月8日の米大統領選以降では、グローバル市場は35.34%上昇しましたが、米国の55.44%上昇を除くと15.53%の上昇でした。

 ○9月のまとめ

  ⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は8540億ドル減少しました(8月は3兆4530億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は800億ドル減少(同1兆1870億ドル増)、米国市場は7740億ドル減少しました(同2兆2660億ドル増)。

  ⇒新興国市場は9月に2.36%下落し(8月は2.53%上昇)、過去3ヵ月間では7.90%上昇、年初来では4.14%下落、過去1年間では6.17%の上昇となっています。

  ⇒先進国市場は9月に3.34%下落し(8月は6.38%上昇)、米国を除くと2.50%の下落(同5.28%上昇)となっています。過去3ヵ月間では7.50%上昇(8月時点では14.05%上昇)、米国を除くと5.62%上昇(同11.81%上昇)、年初来では0.60%上昇(同2.83%上昇)、米国を除くと7.32%下落(同4.94%下落)、過去1年間では7.74%の上昇(同13.66%上昇)、米国を除くと0.28%の上昇(同5.52%上昇)となりました。

 ○9月は11セクターが揃って下落し、セクター間のばらつきは縮小しました(7月と8月は11セクター中10セクターが上昇しました)。パフォーマンスが最高のセクター(資本財・サービス、1.11%下落)と最低のセクター(エネルギー、12.46%下落)の騰落率の差は11.35%(過去1年間の平均は9.89%)と、8月の13.39%から縮小し、7月の9.38%から拡大しました。

 ○新興国市場は9月に2.36%下落しました。8月は2.53%の上昇、7月は6.46%の上昇でした。過去3ヵ月間では7.90%の上昇、年初来では4.14%の下落となりました。過去1年間では6.19%上昇、過去2年間では4.46%上昇、過去3年間では0.01%上昇しています。

  ⇒9月は25市場のうち6市場が上昇しました。これに対して8月は17市場が上昇し、7月は18市場が上昇しました。サウジアラビアのパフォーマンスが最も良好で、9月は3.30%上昇しました。ただし年初来では3.38%下落、過去1年間では0.20%下落にとどまっています。次いでパフォーマンスが良かったのはクウェートで、9月に2.67%上昇しましたが、年初来では14.47%下落、過去1年間では3.42%の下落となっています。3番目にパフォーマンスが良かったのはトルコで、9月は1.15%上昇し、年初来では24.80%下落、過去1年間では23.17%の下落となりました。

 パフォーマンスが最低だったのはインドネシアで、9月に12.55%下落し、年初来では33.01%下落、過去1年間では29.38%下落しています。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはハンガリーで、9月に9.77%下落し、年初来では36.31%下落、過去1年間では23.49%下落しました。3番目はポーランドで、9月に9.58%の下落、年初来では20.65%の下落、過去1年間では16.25%の下落となりました。

 ○先進国市場は7月の4.52%上昇、8月の6.38%上昇の後、9月も全体で3.34%上昇しましたが、米国を除くと、2.50%の下落(7月は2.90%の上昇、8月は5.28%の上昇)でした。先進国市場は過去3ヵ月間では7.50%の上昇(米国を除くと5.62%の上昇)、年初来では0.60%の下落(同7.32%の下落)となりました。過去1年間では7.74%の上昇(同0.28%の上昇)、過去2年間では6.03%の上昇(同4.83%の下落)、過去3年間では15.47%の上昇(同4.32%の下落)でした。

  ⇒7月は24市場、8月は25市場全てが上昇したのに対して、9月は上昇したのは25市場中5市場にとどまりました。パフォーマンスが最高となったのはルクセンブルグで2.55%上昇しましたが、年初来では18.38%の下落、過去1年間では12.68%下落しています。2番目は韓国で、2.14%上昇し、年初来では7.29%の上昇、過去1年間では19.97%上昇しています。3番目は日本で、0.97%上昇し、年初来では2.75%の下落、過去1年間では4.59%の上昇となりました。

 パフォーマンスが最低だったのはノルウェーで、9月に8.25%下落し、年初来では16.82%の下落、過去1年間では10.26%の下落となりました。これに続いたのがイスラエルで、9月に7.38%下落し、年初来では4.09%の下落、過去1年間では2.54%の上昇となりました。3番目はオーストラリアで6.96%下落し、年初来では10.36%の下落、過去1年間では7.26%の下落となりました。

  ⇒注意すべき点として、ドイツは2.95%の下落(年初来では1.73%の下落、過去1年間では8.65%の上昇)、カナダは5.06%の下落(同8.28%の下落、同3.80%の下落)、英国は5.27%の下落(同25.07%の下落、同17.17%の下落)でした。

インデックス・レビュー
S&P 500指数

 S&P 500指数の9月の終値は8月末の3500.31から3.92%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス3.80%)の3363.00となりました。8月は7.01%の上昇(同プラス7.19%)でした。過去3ヵ月間では8.47%の上昇(同プラス8.93%)、年初来では4.09%の上昇(同プラス5.57%)、過去1年間では12.98%の上昇(同プラス15.15%)となりました。

 ダウ平均は8月末の2万8430.85ドルから2.28%下落(同マイナス2.18%)の2万7781.70ドルで9月を終えました。8月は7.59%の上昇(同プラス7.92%)でした。過去3ヵ月間では7.63%の上昇(同プラス8.22%)、年初来では2.65%の下落(同マイナス0.91%)、過去1年間では3.21%の上昇(同プラス5.70%)となりました。

 S&P 500指数の9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は8月の0.76%から1.86%に上昇しました。年初来では1.92%(8月末時点は1.93%)、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。

 出来高は前月比9%減少した8月から9%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では18%増加し、過去1年間でも前年比27%増加しました。

 9月の前日比で1%以上変動した日数は21営業日中12日となり(上昇が6日、下落が6日。2%以上上昇した営業日が1日、2%以上下落した営業日が3日)、年初来では89日(上昇が50日、下落が39日)となりました。9月は21営業日中17日(8月は21営業日中3日)で日中の変動率が1%以上、2日(8月はゼロ)で3%以上となりました。年初来では124日(8月末時点は107日)で日中の変動率が1%以上、34日(同32日)で3%以上となっています。2019年はそれぞれ1%以上の変動が73日と3%以上の変動が1日、2018年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。

 セクター間のリターンのばらつきは拡大し、上昇したセクターは11セクター中わずか2セクターと、7月の10セクター、8月の8セクターを下回りました。パフォーマンスが最高のセクター(素材、1.09%上昇)と最低のセクター(エネルギー、14.64%下落)の騰落率の差は8月の14.96%から15.73%に拡大しました(1年平均は13.11%)。騰落率の差は年初来では77.68%(8月末時点は76.44%)、2019年は40.41%でした。

 9月は、素材が1.09%上昇して騰落率首位となりました。同セクターは年初来では3.67%上昇しています。公益事業セクターも騰落率がプラスとなり、9月に0.80%上昇しましたが、年初来では8.07%下落しています。資本財も下落率を0.84%にとどめ、下落は大半のセクターよりも抑えられましたが、年初来では5.37%下落しています。情報技術は利益確定を受けて売りがかさんだ結果、5.42%下落しましたが、年初来では27.52%上昇と騰落率首位となっています。金利が低位にとどまる中、金利は低水準に維持されるとの見通しをFRBが示したことを受けて、金融は3.67%下落し、年初来で21.73%の下落となりました。ヘルスケアは2.29%下落しましたが、年初来では3.60%上昇とプラス圏を維持しています。消費関連セクターは値を下げ、一般消費財は3.69%の下落(年初来では22.45%の上昇)、生活必需品は1.84%の下落(同1.88%の上昇)となりました。エネルギーが14.64%下落で騰落率最下位となり、年初来でも50.16%下落しています。

 9月は値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。9月の値上がり銘柄数は153銘柄(平均上昇率は3.98%)と、7月の364銘柄(同8.32%)、8月の365銘柄(同7.62%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数も15銘柄と、7月の115銘柄(同16.22%)、8月の94銘柄(同16.12%)から減少し、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(7月は8銘柄、8月は9銘柄)。一方、値下がり銘柄数は351銘柄(平均下落率は5.62%)と、7月の140銘柄(同5.11%)、8月の139銘柄(同4.32%)から増加しました。10%以上下落した銘柄数も53銘柄(同14.56%)と、7月の19銘柄(同14.59%)、8月の14銘柄(同13.10%)から増加し、2銘柄が25%以上下落しました(7月と8月はともにゼロ)。過去3ヵ月間では、356銘柄(平均上昇率は12.96%。8月末時点は383銘柄で同15.82%)が上昇した一方、148銘柄(平均下落率は9.44%。8月末時点は122銘柄で同6.76%)が下落しました。

 年初来では値下がり銘柄数と値上がり銘柄数の差が拡大し、値上がり銘柄数は203銘柄(平均上昇率は22.66%)と、8月末時点の226銘柄(同21.22%)から減少し、10%以上上昇した銘柄数も138銘柄(同30.85%)と、8月の146銘柄(同30.34%)から減少し、66銘柄(8月末時点は67銘柄)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は300銘柄(平均下落率は23.94%)と、8月末時点の277銘柄(同23.90%)から増加し、10%以上下落した銘柄数も218銘柄(同31.28%)と8月末時点の208銘柄(同30.14%)から増加し、124銘柄(同41.96%。8月末時点は118銘柄で同40.14%)が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム