S&P500月例レポート(20年9月配信)<後編>

<前編>の続き

個別銘柄

 ○米証券取引委員会(SEC)はEastmanKodak(KODK)が開示した7億6500万ドルの負債について調査することを発表しました。同社の株価は7月27-31日の週に、2.13ドルの安値と60.00ドルの高値を付けました。同社は債務(9500万ドル)を2990万株の株式に転換する計画(転換前の株式数は4370万株)について臨時報告書8Kを提出し(2020年8月3日)、5.98ドルで8月の取引を終えました。

 ○娯楽大手のWalt Disney(DIS)は50億ドルの損失を発表しました。市場はこの影響を見定め、株価は将来のテーマパーク再開を見込んで上昇しました。

 ○カリフォルニア州裁判所は、スタッフ(ドライバー)を社外の請負業者としてではなく、従業員として扱うことをUber(UBER)とLyft(LYFT)に求める新たな議会法案(Assembly Bill 5)を支持し、仮処分命令の執行延期を却下しました。UberとLyftは9月4日までに、上告するか判決を受け入れるかを決定する必要があります。両社はカリフォルニア州での営業閉鎖を示唆していました。

 ○ソフトドリンク飲料メーカーのCoca-Cola(KO)は事業再編の一環として、北米で働く従業員の40%に早期退職奨励金を支払うことを明らかにしました。

 ○リゾート施設を運営するMGM Resorts(MGM)は新型コロナウイルス対応として、従業員1万8000人のレイオフを発表しました。

注目点

 ○新型コロナウイルスの初期影響の調査で、在宅勤務者の増加により、第2四半期のクラウドデータの使用が前年同期比11%増の346億ドルだったことが明らかになりました。2020年には破産件数が過去最大になる見通しです。

 ○米国は1兆ドル規模のコロナ対応追加パッケージに基づいて、今年後半に2兆ドルの借入を計画しています。これにより、2020年の借り入れは4兆5000億ドルになります。

 ○トランプ大統領はカナダ産のアルミニウムに対して10%の追加関税の発動を発表しました。カナダはこれに対し、報復関税を適用する構えです。

 ○アルゼンチンは650億ドルの債務再編交渉で債権団と合意に達したことを明らかにしました。

 ○米政府が引き続き支出を増やし、紙幣を増刷する中、金価格は過去最高値を更新し、2000ドルの節目を突破して1トロイオンス=2089ドルを一時付けました。

 ○ソーシャルディスタンスなどの新型コロナウイルス対応を反映して、Walmart(WMT)は駐車場でのドライブインシアターを開始しました。

 ○Apple(AAPL)は1対4の株式分割を実施し、米国の株式公開企業として初めて時価総額が2兆ドルを超えました。電気自動車メーカーのTesla(TSLA)も1対5の株式分割を発表し、市場では「4桁台の株価を誇る銘柄が存在する日々は残り少ないのか」といった議論が起きました。Alphabet(GOOG/L)、Amazon(AMZN)、自動車関連の小売チェーンAutoZone(AZO)、オンライン旅行サイト運営企業Booking Holdings(BKNG)、ファストフード・チェーンChipotle Mexican Grill(CMG)、住宅建設業者NVR(NVR)は、1000ドル以上の株価で取引されている銘柄です。

 ○運動靴とアパレルのメーカーFoot Locker(FL)は売上高が増加したことを明らかにしました。また、同社は四半期配当金の0.15ドルでの復配を発表しました。従来は0.38ドルでした。

 ○Intel(INTC)は100億ドル規模の自社株買い計画を発表し、自社株買いを加速する意向を示しました。ディスカウントストアのDollar General(DG)は自社株買いを再開し、20億ドル相当の自社株を追加購入する計画を明らかにしました。

 ○ヘルスケア大手のJohnson & Johnson(JNJ)は総額75億ドルの社債を売り出しました。S&Pグローバル・レーティングの「AAA」格付けを利用して、5年債の表面利率は0.55%、40年債は2.45%で発行しました。

 ○フルサービス航空会社大手は、国内のフライトに関しては手数料なしで航空券の変更を認める方針を明らかにしました。

利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年債利回りは7月末の0.54%から0.71%に上昇して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年債利回りは7月末の1.20%から1.48%に上昇して月末を迎えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは7月末の1ポンド=1.3081ドルから1.3365ドルに上昇し(同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは7月末の1ユーロ=1.1778ドルから1.1938ドルに上昇しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は7月末の1ドル=105.87円から105.86円に小幅上昇し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は7月末の1ドル=6.9752元から6.8487元に上昇して月を終えました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○原油価格は7月末の1バレル=40.43ドルから42.82ドルに上昇して月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、7月末の1ガロン=2.265ドルから2.311ドルに上昇して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

 ○金価格は7月末の1トロイオンス=1994.20ドルから1972.70ドルに下落して月の取引を終えました(同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は7月末の24.46から26.41に上昇して月末を迎えました。月中の最高は27.09、最低は20.28でした(同13.78、同16.12、同11.05)

世界の株式市場

 ○新型コロナウイルス感染状況の改善はまちまちでしたが、治療薬などの開発が進む中、世界の株式市場は引き続き幅広く上昇し、パンデミックによる下落分を回復しつつあります。8月は7月と同様に50市場中42市場が上昇し、45市場が上昇した6月からは減少しました。米国市場は月中、数回にわたり最高値を更新し、グローバル市場をアウトパフォームしました。

 ○世界の株式市場は、7月に4.90%上昇した後(米国の5.53%上昇を除くと4.12%の上昇)、全体で5.94%上昇しました(米国の7.04%上昇を除くと4.57%上昇)。過去3カ月間では世界の株式市場は14.50%上昇(米国の15.39%上昇を除くと13.39%の上昇)、年初来では2.30%上昇(米国の7.95%上昇を除くと4.17%下落)しました。過去1年間では13.24%上昇し、米国の18.99%上昇を除くと6.62%の上昇となっています。より長期でも、米国のパフォーマンスが突出しています。過去2年間では、グローバル市場は9.36%上昇しましたが、米国の18.20%上昇を除くと0.33%の下落でした。過去3年間ではグローバル市場は19.87%上昇し、米国の39.55%上昇を除くと0.81%の上昇でした。

  ⇒2016年11月8日の米大統領選以降では、グローバル市場は39.86%上昇しましたが、米国の61.63%上昇を除くと18.45%の上昇でした。

 ○8月のまとめ

  ⇒S&Pグローバル総合指数の時価総額は3兆4530億ドル増加しました(7月は2兆6970億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は1兆1870億ドル増加し(同1兆180億ドル増)、米国市場は2兆2660億ドル増加しました(同1兆6790億ドル増)。

  ⇒新興国市場は8月に2.53%上昇し(7月は7.78%上昇)、過去3カ月間では18.36%上昇、年初来では1.83%下落、過去1年間では9.99%の上昇となっています。

  ⇒先進国市場は8月に6.38%上昇し(7月は4.54%上昇)、米国を除くと5.28%の上昇(同2.90%上昇)となっています。過去3カ月間では14.05%上昇(7月時点では12.43%上昇)、米国を除くと11.81%上昇(同10.95%上昇)、年初来では2.83%上昇(同3.34%上昇)、米国を除くと4.94%下落(同9.71%下落)、過去1年間では13.66%の上昇(同4.23%上昇)、米国を除くと5.52%の上昇(同2.56%下落)となりました。

 ○8月は11セクター中10セクターが上昇し、セクター間のばらつきは再び拡大しました(7月も同様に10セクターが上昇、6月は8セクターが上昇しました)。パフォーマンスが最高のセクター(一般消費財、11.77%上昇)と最低のセクター(公益事業、1.62%下落)の騰落率の差は13.39%と(過去1年間の平均は9.31%)、7月の9.38%と6月の8.25%から拡大しました。

 ○新興国市場は8月に2.53%上昇しました。7月は6.46%の上昇、6月は7.11%の上昇でした。過去3カ月間では18.36%の上昇、年初来では1.83%の下落となりました。過去1年間では9.99%上昇、過去2年間では5.47%上昇、過去3年間では1.68%上昇しています。

  ⇒8月は25市場のうち17市場が上昇しました。これに対して7月は18市場が上昇し、6月は22市場が上昇しました。エジプトのパフォーマンスが最も良好で、8月は8.48%上昇しました。ただし年初来では16.92%下落、過去1年間では18.20%下落にとどまっています。次いでパフォーマンスが良かったのはクウェートで、8月に7.13%上昇しましたが、年初来では16.70%下落、過去1年間では10.53%の下落となっています。3番目にパフォーマンスが良かったのはペルーで、8月は7.05%上昇し、年初来では24.54%下落、過去1年間では19.18%下落しています。パフォーマンスが最低だったのはトルコで、8月に9.34%下落し、年初来では25.66%の下落、過去1年間では15.28%の下落となりました。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはチリで、8月に8.42%下落し、年初来では23.92%下落、過去1年間では29.61%下落しました。3番目はブラジルで、8月に7.76%の下落、年初来では35.53%の下落、過去1年間では24.93%の下落となりました。

 ○先進国市場は6月の2.55%上昇、7月の4.54%上昇の後、8月も全体で6.38%上昇しました。米国の7.04%上昇を除くと、5.28%の上昇(6月3.21%上昇、7月は2.90%上昇)でした。先進国市場は過去3カ月間では14.05%の上昇(米国を除くと11.81%の上昇)、年初来では2.83%の上昇(同4.94%の下落)でした。過去1年間では13.66%の上昇(同7.04%の上昇)、過去2年間では9.88%の上昇(同2.02%の下落)、過去3年間では22.19%の上昇(同0.38%の上昇)となりました。

  ⇒8月は25市場全てが上昇し、6月の23市場、7月の24市場を上回りました。パフォーマンスが最高となったのはノルウェーで8.76%上昇し、年初来では9.33%の下落、過去1年間では1.00%の上昇となりました。2番目は日本で、7.88%上昇し、年初来では3.69%の下落、過去1年間では6.92%上昇しました。3番目はフィンランドで、7.49%上昇し、年初来では9.42%の上昇、過去1年間では20.19%の上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのはポルトガルで、0.22%上昇し、年初来では10.02%の下落、過去1年間では0.46%下落しました。これに続いたのがスペインで、1.84%上昇し、年初来では22.12%の下落、過去1年間では15.43%の下落となりました。3番目はベルギーで、2.56%上昇し、年初来で16.25%の下落、過去1年間では13.08%下落しました。

  ⇒注意すべき点として、ドイツは6.24%の上昇(年初来では1.28%の上昇、過去1年間では14.60%の上昇)、カナダは5.16%の上昇(同3.38%の下落、同2.86%の上昇)、英国は3.56%の上昇(同20.90%の下落、同9.01%の下落)でした。

S&P500指数

 S&P500指数の8月の終値は7月末の3271.12から7.01%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス7.19%)の3500.31となりました。7月は5.51%の上昇(同プラス5.64%)でした。過去3カ月間では14.98%の上昇(同プラス15.48%)、年初来では8.34%の上昇(同プラス9.74%)、過去1年間では19.61%の上昇(同プラス21.94%)となりました。ダウ平均は7月末の2万6428.32ドルから7.59%上昇(同プラス7.92%)の2万8430.85ドルで8月を終えました。7月は2.38%の上昇(同プラス2.51%)でした。過去3カ月間では12.00%の上昇(同プラス12.63%)、年初来では0.38%の下落(同プラス1.30%)、過去1年間では7.68%の上昇(同プラス10.27%)となりました。

 S&P500指数の8月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は7月の1.30%から0.76%に低下しました。年初来では1.93%、7月は1.30%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比26%減少した7月から9%減少した一方(営業日数調整後)、前年同月比では11%増と引き続き大きく増加し、過去1年間でも前年比26%増加しました。8月の前日比で1%以上変動した日数は21営業日中3日となり(上昇が3日、下落がゼロ。2%以上変動した営業日はゼロ)。年初来では77日(上昇が44日、下落が33日)となりました。8月は21営業日中3日(7月は22営業日中13日)で日中の変動率が1%以上となった一方、変動率が3%以上となった営業日はありませんでした(7月もゼロ)。年初来では106日(7月末時点は104日)で日中の変動率が1%以上、32日(同32日)で3%以上となっています。2019年はそれぞれ1%以上の変動が73日と3%以上の変動が1日、2018年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。

セクター間のリターンのばらつきは拡大し、上昇したセクターは11セクター中8セクターと、7月の10セクターは下回ったものの、6月の5セクターは上回りました。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、11.83%上昇)と最低のセクター(公益事業、3.13%下落)の騰落率の差は7月の14.32%(1年平均は12.98%)から14.96%に拡大しました。騰落率の差は年初来では76.44%(7月末時点は60.96%)、2019年は40.41%でした。

 8月は、Apple(AAPL、8月は21.4%上昇)が1対4の株式分割を実施し、時価総額が米国の上場企業として初めて2兆ドルを超える中で、情報技術が7月の5.56%上昇の後に11.83%上昇し、騰落率首位となりました。同セクターは年初来では34.82%上昇、2016年11月の米大統領選以降では171.66%上昇しています。コミュニケーションサービスも好調となり、7月の6.57%上昇に続いて9.05%上昇し、年初来で15.08%上昇しました。消費関連セクターは大半のセクターを上回るパフォーマンスを上げ、一般消費財は7月の8.98%上昇の後に9.43%上昇し、年初来の上昇率を27.13%とし、生活必需品も4.60%上昇し、年初来で3.80%の上昇と騰落率がプラスに転じました。ヘルスケアも2.55%上昇し、年初来で6.03%上昇した一方、金融は4.13%上昇したものの、年初来では18.74%下落しています。騰落率最下位は公益事業で3.13%の下落となり、年初来でも8.80%の下落となりました。エネルギーは2.06%と再度の下落となり(3カ月連続の下落)、年初来で41.62%の下落となりました(騰落率最下位)。

 値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は8月に拡大しました。8月の値上がり銘柄数は365銘柄(平均上昇率は7.62%)と7月の364銘柄(同8.32%)、6月の260銘柄(同6.45%)から増加した一方、10%以上上昇した銘柄数は7月の115銘柄(同16.22%。6月は46銘柄で同19.96%)から94銘柄(同16.12%)に減少し、9銘柄(7月は8銘柄、6月は6銘柄)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は139銘柄(平均下落率は4.32%)と、7月の140銘柄(同5.11%)と6月の244銘柄(同4.49%)を下回りました。10%以上下落した銘柄数も14銘柄(同13.10%)と、7月の19銘柄(同14.59%)と6月の46銘柄(同12.74%)を下回り、25%以上下落した銘柄はありませんでした(7月と6月は各1銘柄)。過去3カ月間では、383銘柄(平均上昇率は15.82%。7月末時点は381銘柄で同16.65%)が上昇した一方、122銘柄(平均下落率は6.76%。7月末時点は123銘柄で同7.04%)が下落しました。

 年初来でも値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は拡大し、値上がり銘柄数は7月末時点の190銘柄(平均上昇率は19.92%)から226銘柄(同21.22%)に増加し、10%以上上昇した銘柄数も7月末時点の125銘柄(同27.74%)から146銘柄(同30.34%)に増加し、67銘柄(7月末時点は51銘柄)が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は277銘柄(平均下落率は23.90%)と7月末時点の313銘柄(同24.00%)から減少し、10%以上下落した銘柄数も208銘柄(同30.14%)と7月末時点の232銘柄(同30.71%)から減少し、118銘柄(同40.14%。7月末時点は135銘柄で同40.42%)が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム