日本電気硝子(5214):日本証券新聞 伊藤 明

著者:伊藤明
投稿:2020/09/01 09:30

逼迫する医療用ガラスの増産効果期待

日本電気硝子 日足一目均衡表
日本電気硝子 日足一目均衡表出所:日本証券新聞Digitalテクニカルチャート

【豊富な材料】
先週8月26日に5G通信に関して信号の減衰が起きにくい特徴を持つ複合素材を開発し、販売を始めたとの発表をきっかけに動意づく。
昨今は材料浮上が目立ち、7月には、「正極に使うガラス材料の粒を小さくするなどして、全固体電池で取り出せる電流を従来の20倍に高めた」とか、「折り畳めるスマホ向けに業界最薄の化学強化専用ガラスを開発した」といった報道がなされた経緯もある。

【レーティング】
8月5日付で大和証券は投資判断を(5段階の)3から1に引き上げ、目標株価も1650円から2500円へと変更。その「主な理由」について、「LCDの生産性改善効果の顕在化」と「医療高度化需要に対応した医療用ガラスの増産投資効果を今年度後半から期待するため」の2点を挙げていた。

【逼迫するワクチン用ガラスボトル】
アンジェス創業者の森下竜一氏が25日配信の日経電子版のインタビューに出ていた。タイトルは「日本製ワクチンが必要なわけ」。非常に興味深い内容だったが、結構長いインタビューの最後の質問が「今後、ワクチンが供給段階に移る中で、障害となりそうなことはありますか」だった。これに対する回答は…。

「意外かもしれませんが、ワクチンを入れるガラスのボトルが全く足りていません。数が少なく、価格が高騰しています。マイナス70度の超低温冷凍庫も市場から消えています。ワクチンの製造量が、数十億回分になっているので、いろいろなところで買い占めが起こり、品不足になり、奪い合いになっています。こういったことは地味ですが、今後、響いてくるかもしれませんね」と結ばれている。

 さて、この「ワクチンを入れるガラスのボトル」とは何か。耐水性、耐酸性に優れ、急激な温度変化や外部からの衝撃にも強い、ホウケイ(硼珪)酸ガラス製容器のことで、ドイツのショット、米国のコーニング、そして日本の日本電気硝子など少数の世界的大手による寡占状態にあるとされる。大和証券言うところの「医療高度化需要に対応した医療用ガラス」とは、まさにこうしたものを言うのではないか。何より話題性十分。この先、ワクチンの話題が具体化、顕在化してくるごとに、折に触れて注目されることになりそうだ。

【テクニカル】
2月以来の戻り高値水準に上放れた格好。もう少し長いスパンで見ると、2017年11月高値4920円から今年3月安値1231円まで、ほぼ一貫して売られ続けてきた銘柄だけに、上昇したとは言え、これでようやく下落幅に対する戻り率が2割に届いた程度。ここから出直り本番が期待されてくる。

大和証券は来12月期3割強の営業増益予想を掲げている。何よりPBRが0.4倍。同業で、AGC0.6倍、日本板硝子0.86倍、セントラル硝子0.52倍に対しても、割安水準。

 当面、適度な調整を交えながらも、基本的には右肩上がり波動を描き、そのうちいずれかのタイミングで大きく上に放れる展開が訪れると考えられる。

伊藤明
株式会社日本証券新聞社 テクニカルアナリスト
配信元: 達人の予想

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