アクセル Research Memo(1):2020年3月期業績が急回復、新規事業の育成により高成長を目指す

配信元:フィスコ
投稿:2020/08/06 16:01
■要約

アクセル<6730>は、遊技機器(パチンコ、パチスロ)向けグラフィックスLSI(以下、G-LSI)市場で約50%のシェアを握るファブレス半導体メーカー。新たな成長ステージに向けて、AI、ミドルウェア、セキュリティ、ブロックチェーン領域にM&Aなども活用しながら事業領域の拡大を図っている。子会社の設立及び取得を行ったことにより、2020年3月期より連結決算を開始している。

1. 2020年3月期業績実績
2020年3月期の連結業績は、前期の単独業績と比較して、売上高で85.2%増の9,265百万円、営業利益は393百万円(前期は1,672百万円の損失)となった。同社の市場規模の目安となる遊技機器の出荷台数が前期の179万台から175万台と減少傾向が続くなか、G-LSIの新製品となる「AG6」の販売が本格的に立ち上がったこと、また、メモリモジュールの採用機種数が増加し、当該機種がヒットしたこと等により、売上高は大幅増収となった。利益面では増収に伴う売上総利益の増加(+1,240百万円)に加え、研究開発費の減少(-964百万円)が増益要因となっている。なお、当期は新規事業の成長を加速していくため、2019年5月にax(株)を設立したほか、同年6月にソフトウェア開発を行うbitcraft(株)、同年8月に画像認識・処理技術の開発を行うモーションポートレート(株)を相次いで子会社化した。M&Aによる業績への影響額は、みなし取得日を2019年9月30日としたことから売上高で1億円程度の増収要因に留まり、利益面での影響は軽微であった。

2. 2021年3月期業績見通し
2021年3月期の業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症の影響を合理的に算定することが困難なことから未定としている。遊技機器向けG-LSIの需要は現時点では堅調に推移しているものの、遊技ホールの経営が休業要請で大打撃を受けていること、旧規則機の撤廃期限(2021年1月末)が新型コロナウイルス感染症の影響で1年程度先送りされたことから、需要の先行きが見通し難くなっている。ただ、業界団体が発表した自主ルールでは射幸性の高いパチスロ機については設置基準を当初の予定通りとし、そのほかの機種についても計画的に入れ替えを進めていく自主ルールを制定していることから、230~240万台あると言われている旧規則機の入れ替え需要が出ることは間違いなく、比較的堅調に推移するものと弊社では見ている。一方、新規事業に関しては売上高で前期比2倍程度の増加を目標としている。ゲーミング市場向けミドルウェア製品「AXIP」の販売拡大に加えて、ブロックチェーン技術や暗号技術を活用した製品・サービスの拡大、独自開発したディープラーニング・フレームワーク「ailia(アイリア)」の販売拡大に注力する。

3. 今後の事業展開と新規事業について
遊技機器市場は参加人口の減少傾向が続いており、今後も回復は限定的なものにとどまると見ている。このため、遊技機器市場向けに関してはグラフィックスLSI以外のデバイスのラインナップを拡充して、遊技機器1台当たりの収益を拡大していく方針となっている。新規事業では、「ailia」などのAI技術や「AXIP」、ブロックチェーンなどの技術を基に、ソリューションサービスの開発やIPによるロイヤリティ収益の獲得を目指していくほか、セキュリティデバイスの開発販売も進めていく。当面の目標として、2023年3月期に売上高16億円強を目指す。また、自動運転用ソフトウェア「Autoware」を開発する(株)ティアフォーと共同で自動運転向けAIチップの開発を進めている。2021年末までに試作チップの製造を開始し、2022年以降の実証実験開始と製品化を目指しており、今後の展開が注目される。

■Key Points
・遊技機器向け半導体の利益回復と研究開発費の減少により2020年3月期の業績は急回復
・2021年3月期の業績見通しは新型コロナウイルス感染症の影響を見極め発表する予定
・パチンコ主体のファブレス半導体企業から、世の中の革新に貢献する先端テクノロジー企業を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ

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