IXナレッジ Research Memo(1):2020年3月期通期は、新規開発及び運用案件の受注が拡大

配信元:フィスコ
投稿:2020/07/13 15:21
■要約

アイエックス・ナレッジ(IKI)※<9753>は、独立系の中堅システムインテグレーターである。IT戦略提案、IT化推進などのコンサルティングからシステム開発、検証、保守・運用までのシステムのライフサイクルに対応しており、一貫したサービスを提供する。日立製作所<6501>やNTTデータ<9613>などの大手システムインテグレーターやみずほ情報総研(株)などのユーザー系の情報システム会社、KDDI<9433>などのエンドユーザーなどが主要取引先であり、安定している。顧客企業上位10社で売上高の約7割に達する。

※同社の略称はIKI(IX Knowledge Inc.)で、企業コンセプトのInformation & Knowledge Innovationともリンクしている。


1. 業績動向
2020年3月期通期の業績は、売上高が前期比1.7%減の17,456百万円、営業利益が同4.7%減の784百万円、経常利益が同5.9%減の827百万円、当期純利益が同7.7%減の540百万円となり、小幅な減収減益となるも堅調な決算となった。売上高は前期比1.7%減、期初計画比3.1%減と減収ではあったが、新型コロナウイルス感染症の影響もなく全体として堅調に推移した。大手通信事業者向けシステム検証案件、大手金融機関や重工業メーカー向けシステム開発案件などの大規模案件の収束期にあたり、プロジェクトが想定よりも順調に推移したことで収束タイミングが早まった面がある。一方で、金融機関向けシステム検証案件や車載組込みシステム開発案件が堅調に推移したことに加え、化粧品会社向けのシステム開発案件などの受注が拡大した。また、システム開発フェーズからシステム運用フェーズに進んだ案件が多かったため、運用設計や基盤・環境構築案件の受注が拡大した。営業利益は前期比4.7%減、期初計画比6.7%減となったが、減益に影響を与えたのは、販管費の増加(前期比207百万円増)である。販管費の増加の要因としては、次期成長事業創出に向けた技術者教育の推進や同社誕生20周年対応などに伴う活動費用が含まれる。

2021年3月期業績については、売上高で前期比3.1%増の18,017百万円、営業利益で同2.0%増の800百万円、経常利益で同1.8%増の842百万円、当期純利益で同3.6%増の561百万円と増収増益を見込んでいる。受注環境については、企業のIT投資は引き続き堅調であり、IT人材不足も継続するため、良好と考えられる。新型コロナウイルス感染症の影響も足元(2020年6月中旬)時点で顕在化しておらず、順調に推移している。システム開発に関しては、大型プロジェクトの収束を補完すべく、第三者検証サービスや車載組込みシステム開発などの受注拡大を目指す。また運用に関しては、技術者の育成・確保を通じて、基盤構築への案件対応力を強化し、受注拡大を行う。売上総利益を同4.0%増と伸ばし、売上総利益率も18.7%(同0.1ポイント上昇)とする計画だ。一方で、販管費は同4.7%増と増える見込みである。中期経営計画における「次期成長事業の創出」や「事業基盤の強化(人材投資、設備投資、事業投資)」にしっかり投資したい考えだ。弊社では、新型コロナウイルス感染症拡大が顧客企業のIT投資に影響を与える可能性はあるものの、足元は順調に推移しており、例年同様に予想値に近い業績を達成すると見込んでいる。

2. 成長戦略
同社では、中期経営計画を毎期ローリングし、経営計画及び重点取り組みポイントをアップデートしている。2023年3月期の業績目標は売上高20,000百万円、営業利益1,000百万円としている。中期経営方針についても、「中核事業の拡大」「次期成長事業の創出」「事業基盤の強化」を3本柱とすることに変更はない。「中核事業の拡大」で2021年3月期に新たに打ち出された点としては、「営業本部を新設し体制整備」である。2020年4月から営業本部を新設し、事業部横断的に新規営業を強化するモードに入った。「次期成長事業の創出」に関しては、存在感を増すまでに今後2~3年程度はかかると見て、じっくり育てる方針である。特に注目されるポイントとしては、「新たな先端技術を活用したプラットフォーム事業の創出」がある。ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティの実証実験による新ビジネスモデルの検証が進行しており、事業化されれば獲得できる潜在市場は大きい。「事業基盤の強化」は、これまで人材の採用や育成がクローズアップされてきたが、設備投資や事業投資にも注目したい。設備投資においては、「基幹システム再構築・情報基盤整備」を行う計画である。プロジェクト別にデータを一元管理し、稼働や原価などを見える化することで、タイムリーな意思決定につなげたい考えだ。

なお、新型コロナウイルス感染症は同社の事業に様々な影響をもたらしている。弊社では、現時点(2020年6月下旬)で、短期的には影響が軽微、中期的にはプラス・マイナス面の両面があるものの、ややプラス面が上回ると見込んでいる。

3. 株主還元
同社では、株主還元に関して経済環境の変動が激しいことから、安定配当を第一とし、業績や将来の見通し、配当性向、配当利回り等を総合的に勘案し配当を決定する方針である。過去に遡ると、減益となった年もあったものの、1株当たりの配当金は維持または増配を行ってきた。2020年3月期期末の配当は、計画どおり普通配当15円(前期比5円増)、配当性は27.6%となった。2021年3月期は、普通配当15円、配当性向26.6%を予想する。

■Key Points
・前身2社の経営統合から20年を超えた、中堅独立系システムインテグレーター
・2020年3月期通期は小幅な減収減益も堅調。大型開発案件収束等による売上減少を新規開発及び運用案件の受注拡大でほぼカバー
・中期経営計画の重点項目としては、営業本部新設や基幹システム再構築に注目
・安定配当優先。2021年3月期は普通配当を15円、配当性向26.6%を予想

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)


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配信元: フィスコ

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