DX推進のネックはどこに~Reスキル化に挑戦

著者:鈴木 行生
投稿:2020/07/13 11:17

・5月に、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」という報告書を公表した。その内容からいくつか取り上げ吟味してみたい。

・ITエンジニアが足らない、DXを推進する企業内の組織も人材も十分でない、という点はすでに分かっていた。いろいろ手は打たれているが、未だ遅れを取り戻すには至っていない。

・ITが分かるマネジメントが増えているといっても、目指す中心は業務の効率化による生産性の向上である。①既存製品・既存サービスの高付加価値化、②新製品・新サービスの創出、③現在のビジネスモデルの抜本的な変革、となるにしたがって、成果は十分出せていない。

・DX推進のトリガーはどこにあるのか。課題として、1)強いリーダーがいないので、事業創造の検討が進まない、2)PoC(概念実証)まで行っても、新規事業が具体的に立ち上がらない、ということも多い。

・報告書では、先行事例として、富士フイルム、ヤマハ、東京海上、日清食品、ブリヂストン、パーソルキャリア、パルコ、日本航空、住友商事、ふくおかフィナンシャルグループなどを取り上げている。

・DX推進をどうすればよいか。何よりも、10年先のビジョンを、ビジネスモデルとしてイメージすることである。そんな先のことより、今日の課題に取り組むことを最優先する姿勢では、ますます後れを取ってしまう可能性が高い。

・次に、現場が問題意識を共有できるところまで、噛み砕いていけるリーダーを立てる。その上で、できるところからではなく、やるべきことを実行するようなフォーメーションを組む。

・マネジメントは、「組織は戦略に従う」という考えをベースに、戦略を固めてから組織を作るべきであろう。多くの場合、とりあえず何らかの組織を作って、そこに考えさせようとする。それでは思うように進まないことが多い。

・社長が本気になり、資金を投じ、人材を出し、組織に権限を与え、外部と組むことを大いに奨励してほしい。DXが大事だと分かっていても、下に任せきりで、十分な投資をしなければ、組織横断的な横串のDXを実行できるはずもない。

・経産省の調査によると、2030年に向けて、今のままでは先端IT人材が50万人足らず、従来型の人材は10万人ほど余ってくるという。実際はもっと大きなギャップが生じよう。IoTやAIを活用できる先端IT人材はいくらでも欲しい。これまでの受託開発や保守・運用サービスに従事するITエンジニアは相当いらなくなろう。

・大事なことは、従来型IT人材を先端IT人材に転換することである。この「Reスキル化」をいかに進めるか。今やどんな分野でも、学びなおしは生涯続く。適性や能力の限界という前に、年齢に関係なく挑戦してみることである。

・重要なことは、上も下も周りも、脱年齢思考を常態化することである。年だからできそうにない、年なので任せられない、という風潮の企業は一様に活気がない。

・IoTやAIの中身をよく見ると、開発する人と使う人がいる。それが明確に分かれているわけではなく、各々の現場で使いこなしていくことが当たり前になってくる。今のPCやスマホのアプリのように、だれでも使えるレベルがどんどん上がってこよう。

・課題は、スキルアップする側、受け入れる側の双方にありそうだ。多くのIT人材はスキルアップに時間もお金もかけない、というアンケート結果が出ている。スキル習得に消極的である。同時に、転職についてもさほど考えていない。

・なぜか。現状をよしとして、学習の必要性を感じていないようにみえる。とりあえず今は忙しく、新しいスキルを習得しても活かす場がないという。現在のスキルで、将来も通用すると思っているのであろうか。そんなはずはない。

・IT人材を使うサイドから見ると、1) 今の人材でもやることは多いので、とりあえず使い倒せばよい、2)教育などして転職されたのではたまったものではない、3)New IT、DXは新しい人材でやればよいのであって、既存の人材には期待していない、ということであろうか。もしこのような企業があったとすれば、DXに後れを取ることは必至であろう。

・筆者の経験においても、自分の仕事のうち、チームのメンバーでできることはどんどんおろしていった。部下に任せて、手柄は部下、責任は自分に、というようにした。任せるには教える必要がある。これを手間と思ってはならない。任せると人は育つ。その分、自分の時間ができるので、新しい仕事に挑戦できよう。

・組織全体が楽になるようにIT投資を行う。そのための研修にはかなり時間を使う。生産性は上がるはずである。今のDXどうであろうか。新しいビジネスモデルがDXで生み出せるか。新規事業までもっていくことができるか。

・外部人材のパートナー化、M&Aは当然として、社内の人材育成に力を入れない企業は、やはり価値創出力が落ちて、競争優位性を低下させよう。人を育てない会社に、いい人材はそもそも入ってこないであろう。

・人材を育てると何が起きるか。伸びてきた人材にチャンスを与えて、登用していく必要がある。人を育てるとやめてしまうという会社は、その会社の構造に何か問題があるのかもしれない。自社も外部から新しい人材が採れる会社に変えていく必要があろう。自社に魅力がなければ、人は寄ってこない。

・一方で、外部から人材が入ると、今までそれなりに評価されていた人の評価が相対的に下がることもある。結果として、学びなおして新しいことに挑戦しないとサバイブできないという社風になっていこう。本人にとっては大変かもしれないが、それが当たり前になってほしい。

・投資家としては、そのような人材活用企業を高く評価する。今やDXで変革する企業が脚光を浴びている。まさにデジタルを生かす経営で変身する企業(DX銘柄)に脱皮できるか。この視点で企業評価を行うと、新しい投資機会が次々に見えてくる。大いに期待したい。

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配信元: みんかぶマガジン
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