[資源・新興国通貨6/22~26の展望] NZ、トルコ、メキシコの中銀政策会合に注目!!

著者:八代和也
投稿:2020/06/19 16:00

豪ドル

新型コロナウイルスの感染“第2波”への懸念が市場で高まっています。その懸念が後退しない限り、市場はリスクオフの動きになりやすいとみられます。リスクオフは豪ドルにとってマイナス材料です。

豪州と中国の関係にも注意が必要です。モリソン豪首相は4月、新型コロナウイルスの発生源について独立した調査を求めました。それをきっかけに両国の関係は悪化しており、中国は5月に豪州産牛肉の輸入を制限し、また豪州産大麦に80.5%の追加関税を課す措置を発表。さらに6月に入り、自国民に対して豪への留学や渡航を自粛するよう勧告しました。豪中関係がさらに悪化した場合、豪ドルの上値は一段と重くなる可能性があります。

NZドル

RBNZ(NZ中銀)は24日、金融政策を発表します。5月13日の前回会合では政策金利を過去最低の0.25%に据え置いたものの、“LSAP(大規模資産購入)プログラム”の規模を330億NZドルから600億NZドルへと拡大しました。

24日の会合では政策金利は据え置かれるとみられる一方、LSAPプログラムの規模は拡大される可能性もあります(拡大するとすれば100億NZドルか)。LSAPの規模が拡大された場合、NZドルの上値を抑える要因と考えられます。

市場では “RBNZはいずれマイナス金利政策を導入する”との観測があります。RBNZはマイナス金利政策について「選択肢の1つ」としつつも、「現時点ではLSAPの規模拡大の方が最善」との見方を示してきました。声明や議事録でマイナス金利政策の導入について慎重な姿勢が示され、かつNZドル高に対して懸念が示されなければ、NZドルは底堅く推移する可能性があります。足もとのNZドル/米ドルは0.65米ドル前後で推移、前回会合時は0.60米ドル前後でした。

カナダドル

カナダドルは引き続き、原油価格(米WTI原油先物など)の動向に注目です。

「OPECプラス(*)」の合同閣僚委員会は18日、イラクやカザフスタンなど自国に割り当てられた減産量を5月に守らなかった国に対し、減産量を順守するように要請。それに対し、イラクとカザフスタンは5月に未達成だった減産分を7-9月の割り当て量に上乗せするとの計画を提示しました。OPECプラスはナイジェリアやアンゴラ、ガボンなどにも22日までに減産の計画を示すように求めています。ナイジェリアなどがイランやカザフスタンと同様の計画を提示した場合、原油価格は堅調に推移する可能性があります。カナダは産油国のため、原油価格の上昇はカナダドルにとってプラス材料です。カナダドル/円については、米ドル/円の動き次第では80.000円(心理的な節目)に向けて上昇する可能性があります。

トルコリラ

トルコリラは今週(6/15- )、対米ドルや対円で約1カ月ぶりの安値を記録しました。他の新興通貨と同様、リスクオフが強まったことがリラの重石となりました。

来週(6/22- )は25日のTCMB(トルコ中銀)政策会合が材料になりそうです。TCMBは5月の前回会合まで9回連続で利下げを行っており、現在の政策金利は8.25%。一方、トルコの5月CPI(消費者物価指数)は前年比11.39%です。実質金利(政策金利から前年比のCPI上昇率を引いたもの)はマイナス3.14%と、実質金利の低さは新興国の中で際立っています。メキシコと南アフリカの実質金利はそれぞれ、2.66%とマイナス0.35%です(18日時点)。TCMBが25日の会合で追加利下げを踏み切れば、トルコの実質金利のマイナス幅は一段と拡大します。市場がそのことを意識した場合、リラに対する下押し圧力はさらに強まるかもしれません。

南アフリカランド

来週(6/22- )は南アフリカの経済指標が多数発表され、それらの結果にランドが反応する可能性があります。
<主な経済指標>
・23日:失業率(1-3月期)
・24日:CPI(消費者物価指数。4月)、小売売上高(3月)
・25日:PPI(生産者物価指数。4月)

低迷が続いてきた南アフリカ景気は、新型コロナウイルスの影響によって一段と落ち込むとみられます。特に失業率や小売売上高の結果に注目です。それらが景気の悪化を示唆すれば、ランドは軟調に推移する可能性があります。ただ、今回発表される失業率や小売売上高は、3月27日から実施されたロックダウン(都市封鎖)の影響はほとんど反映していないと考えられます(ロックダウンは6月1日に一部解除)。

メキシコペソ

メキシコペソは今週(6/15- )、対米ドルや対円で軟調に推移しました。リスクオフが強まったことが新興国通貨であるペソの重石となったほか、米国がメキシコの企業や個人を制裁対象としたこともペソにとってマイナス材料となりました。米財務省は18日、ベネズエラの石油取引に関与したとして、メキシコの企業など外国の8団体と3人(個人)を制裁対象とすると発表。制裁対象の団体や個人は米国資産が凍結され、また米国の団体や個人との取引も原則禁止されます。

米国による制裁は引き続きメキシコペソの上値を抑えそうです。ペソが上昇を続けるためには、新型コロナウイルスの感染第2波への懸念が後退するなどしてリスクオフが後退する必要があると考えられます。

25日、BOM(メキシコ中銀)の政策会合があります。BOMは5月の前回会合まで8回連続で利下げを実施しており、現在の政策金利は5.50%です。メキシコの5月CPI(消費者物価指数)は前年比2.84%と、上昇率は4月の2.15%から高まったものの、BOMのインフレ目標である3%を下回りました。一段の景気支援が可能になったと考えられ、BOMは25日に追加利下げに踏み切るとみられます。

BOMの追加利下げは本来、メキシコペソにとってマイナス材料です。ただ、利下げをしたとしても、BOMの政策金利水準の高さやメキシコの実質金利(政策金利から前年比のCPI上昇率を引いたもの)の優位性は維持されるとみられます。そのことを市場が意識すれば、追加利下げによってペソが大きく下がる状況ではないかもしれません。ペソ/円の目先の下値メドとして、4.500円(5月前半の高値水準)が挙げられます。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想