■今後の見通し
3. 中期経営計画
ジャパンベストレスキューシステム<2453>は2018年11月に3カ年の中期経営計画を発表し、経営数値目標として2021年9月期に売上高で16,500百万円、営業利益で2,500百万円を掲げていたが、前述したように新型コロナウイルスの影響による新規提携案件の遅延もあって、2020年9月期の業績見通しを下方修正したこともあって、2021年9月期の業績目標値についても見直しの検討を進めているもようだ。ただ、会員基盤を持つ企業との提携による会員数の拡大、並びに保険事業の成長戦略そのものは変わっておらず、今後も継続していく方針となっている。以下、中期経営計画の概要について進捗状況なども含めて触れておく。
中期経営計画における経営ビジョンとして、「年間500万人へのサービス提供の実現」を掲げており、「駆けつけ」「会員」「保険」「リペア」の4事業を対象に、各業界でトップクラスの企業と業務提携を積極的に展開し、顧客基盤を効率的に拡大していくほか、取引先に対して新商品・既存商品のクロスセルを推進していくことで売上成長を目指していく。また、新サービス・新商品の創出についても会員事業や保険事業において、トライアルも含めて積極的に開発に取り組んでいく方針だ。
目標を達成していくための重点戦略として、「新たな企業とのアライアンス」「事業間/部門間の連携による重層営業」「新サービス、新商品の創出」「IoT、システム活用によるコスト抑制」の4点を挙げている。
(1) 新たな企業とのアライアンス
業界トップクラスの企業とのアライアンスを2019年9月期から積極的に推進しており、既にCasaとの提携で家財保険の契約件数が増加しているほか、ヤマダ電機や大手ハウスメーカーとの提携により「あんしん修理サポート」の会員数も大きく伸長している。今後についても大手分譲マンション管理会社との提携によるリペア事業の拡大、互助会グループとの提供による「あすかも」の会員拡大などが期待され、すべての事業セグメントを対象に、顧客基盤を持つ新たな提携先企業を開拓し、売上を拡大していく方針となっている。
(2) 事業間/部門間の連携による重層営業
延長保証と緊急駆けつけサービスをセットにした会員サービスを販売開始し、一定の成果は見せているものの、まだ充分な事業間連携までには至っておらず、今後の課題となっている。各事業間での顧客管理システムが統一されていないことも一因となっている。現在、開発中の次期ERPではこうした課題が解消される見込みとなっている。次期ERPでは、受注から販売、決済、顧客管理までグループのすべてのシステムが統一されるため、事業間連携による重層営業の効果も一段と上がるものと期待される。開発投資額は約3億円を見込んでいる。当初は2020年12月の稼働開始を予定していたが、新型コロナウイルスの影響もあって開発がやや遅れ気味となっており、稼働開始時期は2021年4~6月頃の見込みとなっている。
(3) 新サービス・新商品の創出
新サービス、新商品では、前述のとおり2020年に入っていくつかの新サービスの提供を開始している。また、レスキュー損害保険でも火災保険のほか、医療関連の少額短期保険の開発を進めており、火災保険については既に金融庁に申請済みで順調に審査が進めば2020年9月頃に販売が開始できる可能性がある。火災保険市場でシェア1~2%取るだけで年間売上高が数十億円規模となるため注目度は大きい。一方、少額短期保険についても2021年9月期の前半には商品化したい考えだ。こちらはレスキュー損保の株主(出資比率7.1%)でもある日本生命保険が販売していく予定となっている。業界初の商品となる模様で、今後の動向が注目される。また、レスキュー損保は(株)セブン銀行も株主(同7.1%)となっており、今後、コンビニエンスストアで販売できる少額短期保険の開発が進む可能性もあり、保険事業の成長ポテンシャルはさらに高まるものと予想される。
(4) IoT、システム活用によるコスト抑制
ICTの活用では、会員証のアプリ化(電子化)に取り組んでおり、2019年9月期より「安心入居サポート」会員向けに会員証アプリ「Living Link」の提供を開始している。同アプリではスマートフォンのカメラ機能を使って、コールセンターのオペレーターとのやり取りが可能となっており、緊急トラブルの入電の際にオペレーターは現場の状況を動画または写真で確認しながら、出動が必要なケースと不要なケースに切り分けることが可能となる。こうした取り組みにより無駄な出動費用の削減が図られるほか、会員証の発行コストも不要となるため、会員事業の収益性向上につながるものと予想される。また、同アプリは掲示板機能もあるため、集合住宅などでは住民向けの告知事項を同アプリで行うことが可能となり、不動産オーナーや管理会社にとってもメリットを享受できることになる。ダウンロード件数は累計で5万件とまだ少ないものの、今後は新規会員となるタイミングで一緒にアプリをダウンロードしてもらうようにし、いずれすべての会員をアプリ会員に転換していくことを目標としている。なお、「学生生活110番」もアプリの提供を既に開始しており、「あんしん修理サポート」についても2020年9月期中にアプリの提供を開始する予定となっている。
また、AIの活用についても2019年9月期より自社コールセンターで一部、チャットボットの導入を開始している。今後も業務効率の改善につながる技術を順次導入していくことで生産性向上につなげていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 中期経営計画
ジャパンベストレスキューシステム<2453>は2018年11月に3カ年の中期経営計画を発表し、経営数値目標として2021年9月期に売上高で16,500百万円、営業利益で2,500百万円を掲げていたが、前述したように新型コロナウイルスの影響による新規提携案件の遅延もあって、2020年9月期の業績見通しを下方修正したこともあって、2021年9月期の業績目標値についても見直しの検討を進めているもようだ。ただ、会員基盤を持つ企業との提携による会員数の拡大、並びに保険事業の成長戦略そのものは変わっておらず、今後も継続していく方針となっている。以下、中期経営計画の概要について進捗状況なども含めて触れておく。
中期経営計画における経営ビジョンとして、「年間500万人へのサービス提供の実現」を掲げており、「駆けつけ」「会員」「保険」「リペア」の4事業を対象に、各業界でトップクラスの企業と業務提携を積極的に展開し、顧客基盤を効率的に拡大していくほか、取引先に対して新商品・既存商品のクロスセルを推進していくことで売上成長を目指していく。また、新サービス・新商品の創出についても会員事業や保険事業において、トライアルも含めて積極的に開発に取り組んでいく方針だ。
目標を達成していくための重点戦略として、「新たな企業とのアライアンス」「事業間/部門間の連携による重層営業」「新サービス、新商品の創出」「IoT、システム活用によるコスト抑制」の4点を挙げている。
(1) 新たな企業とのアライアンス
業界トップクラスの企業とのアライアンスを2019年9月期から積極的に推進しており、既にCasaとの提携で家財保険の契約件数が増加しているほか、ヤマダ電機や大手ハウスメーカーとの提携により「あんしん修理サポート」の会員数も大きく伸長している。今後についても大手分譲マンション管理会社との提携によるリペア事業の拡大、互助会グループとの提供による「あすかも」の会員拡大などが期待され、すべての事業セグメントを対象に、顧客基盤を持つ新たな提携先企業を開拓し、売上を拡大していく方針となっている。
(2) 事業間/部門間の連携による重層営業
延長保証と緊急駆けつけサービスをセットにした会員サービスを販売開始し、一定の成果は見せているものの、まだ充分な事業間連携までには至っておらず、今後の課題となっている。各事業間での顧客管理システムが統一されていないことも一因となっている。現在、開発中の次期ERPではこうした課題が解消される見込みとなっている。次期ERPでは、受注から販売、決済、顧客管理までグループのすべてのシステムが統一されるため、事業間連携による重層営業の効果も一段と上がるものと期待される。開発投資額は約3億円を見込んでいる。当初は2020年12月の稼働開始を予定していたが、新型コロナウイルスの影響もあって開発がやや遅れ気味となっており、稼働開始時期は2021年4~6月頃の見込みとなっている。
(3) 新サービス・新商品の創出
新サービス、新商品では、前述のとおり2020年に入っていくつかの新サービスの提供を開始している。また、レスキュー損害保険でも火災保険のほか、医療関連の少額短期保険の開発を進めており、火災保険については既に金融庁に申請済みで順調に審査が進めば2020年9月頃に販売が開始できる可能性がある。火災保険市場でシェア1~2%取るだけで年間売上高が数十億円規模となるため注目度は大きい。一方、少額短期保険についても2021年9月期の前半には商品化したい考えだ。こちらはレスキュー損保の株主(出資比率7.1%)でもある日本生命保険が販売していく予定となっている。業界初の商品となる模様で、今後の動向が注目される。また、レスキュー損保は(株)セブン銀行も株主(同7.1%)となっており、今後、コンビニエンスストアで販売できる少額短期保険の開発が進む可能性もあり、保険事業の成長ポテンシャルはさらに高まるものと予想される。
(4) IoT、システム活用によるコスト抑制
ICTの活用では、会員証のアプリ化(電子化)に取り組んでおり、2019年9月期より「安心入居サポート」会員向けに会員証アプリ「Living Link」の提供を開始している。同アプリではスマートフォンのカメラ機能を使って、コールセンターのオペレーターとのやり取りが可能となっており、緊急トラブルの入電の際にオペレーターは現場の状況を動画または写真で確認しながら、出動が必要なケースと不要なケースに切り分けることが可能となる。こうした取り組みにより無駄な出動費用の削減が図られるほか、会員証の発行コストも不要となるため、会員事業の収益性向上につながるものと予想される。また、同アプリは掲示板機能もあるため、集合住宅などでは住民向けの告知事項を同アプリで行うことが可能となり、不動産オーナーや管理会社にとってもメリットを享受できることになる。ダウンロード件数は累計で5万件とまだ少ないものの、今後は新規会員となるタイミングで一緒にアプリをダウンロードしてもらうようにし、いずれすべての会員をアプリ会員に転換していくことを目標としている。なお、「学生生活110番」もアプリの提供を既に開始しており、「あんしん修理サポート」についても2020年9月期中にアプリの提供を開始する予定となっている。
また、AIの活用についても2019年9月期より自社コールセンターで一部、チャットボットの導入を開始している。今後も業務効率の改善につながる技術を順次導入していくことで生産性向上につなげていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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