S&P500月例レポート(20年6月配信)<1>
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
THE S&P 500 MARKET: 2020年5月
グランドオープニング
グランドオープニング ―― ご来店、お買い上げをお待ちしています。懐が寂しいようでしたら、給付金をお使い下さい。レジでは6フィートのソーシャルディスタンスをしっかり守り、iPhoneでお支払い下さい。旧世代の皆さんは、しばらく使っていなかった懐かしいクレジットカードでどうぞ。もし咳が出そうになったら(アーロ・ガスリーが主演映画「アリスのレストラン」の中で言われたように)「顔を背けて下さい」。
米国は経済活動の再開に動き出しました。5月25日のメモリアルデー祝日は夏の始まりだけでなく、「ニューノーマル」(新しいですが、改善はしていません)の始まりも告げました。この新たな日常がどのようなものになるのかは誰にもわかりませんが、多くの人は少なくとも試してみたいと考えています。経済再開への期待から、株価は2020年3月23日の直近安値から36.06%上昇し、2月19日に付けた終値での高値から10.10%下落した水準まで戻りました。
相場格言の「期待で買って現実で売れ」の通りに期待は順調に膨らみましたが、これから現実が始まります。学習しながら前進する形で、経済活動の再開は緩やかなペースで(あるいは急速になるのか不明ですが)続きます。問題は「オープンすれば、お客様は来店してお金を落としてくれるのか?」、そして「来店したら、感染しないだろうか?」です。現時点では、開店、そしていかなるオープニングも歓迎です。ウォール街は2020年の利益をほとんど無視し、回復の兆候(下半期に見込まれる利益の好転)に目を向けています ―― そしてウォール街が本当に現実を把握するのはその時でしょう。株価は2020年予想EPSの27.7倍の水準にありますが、皆がマスクをしているのは当然でしょう。ウォール街は2021年の予想を織り込んでいるからです(その時点でも割高ですが)。下半期に利益が上向くなら、現在の水準は妥当かもしれませんが、利益が上向かなければ、ウォール街はリプライシングを迫られるでしょう。ちなみに、忘れっぽい皆さんのためにつけ加えると、前回3月23日のリプライシングでは、2月19日の高値から株価は33.9%下落しました。
一方、IPOの再開は「口先だけでなく行動で示されました」。米国で感染拡大が始まって以降初となる大型IPOは、保険代理店SelectQuote(SLQT)で、20ドルの公開価格に対して27.52ドルで月を終え、37.6%の上昇となりました ―― 古き良き時代です。
上海ディズニーランドの営業が5月11日に再開されましたが、入場者数は入場可能者数の30%(2万4,000人)に制限され、入場時の体温検査、ソーシャルディスタンスの確保、マスク着用が義務付けられました(「イッツ・ア・スモール・ワールド」ではなく、替え歌の「イッツ・ア・リアルワールド・アフターオール」が聞こえてきそうです)。来月は米国の番です。7月11日にフロリダのマジック・キングダム・パーク、7月15日にエプコット・センターの営業が再開される予定です(同じく制限付きで検温などを実施)。
消費者が外出を控えるようになってから、小売販売は落ち込み、4月の小売売上高は前月比で16.4%減、前年同期比で21.6%減となりましたが、さらなる悪化が予想されます。暫定推定値によるとクレジットカード支出が40%減少しており、その影響は小売業の破産申請に見て取れ、J.C. Penney、J. Crew、Neiman Marcusが連邦破産法の適用申請を行い、Lord & Taylorは清算を計画しています。
一方、テレワークの導入は効率向上と経費節減につながっているようで、企業や従業員の間では多くの人がオフィス勤務に戻る必要性を疑問視する声が上がっています。こうしたトレンドの先陣を切る形で、Twitter(TWTR)のJack Dorsey最高経営責任者(CEO)は従業員宛てのメールで、新型コロナウイルス感染拡大が終息した後でも、希望者には恒久的な在宅勤務を認める方針を示しました。
より身近な(私にとって)ニュースはニューヨーク証券取引所が立会取引を一部再開したことで、予防措置として通勤に市営地下鉄の使用を禁止しており、建物に入るための検温実施や、取引所を提訴しないという同意書への署名を求めるなどの対策を講じています。米国の都市封鎖の最後の砦ともいえるニューヨーク市の経済再開は段階的に進む予定で、6月8日にフェーズ1がスタートします。オフィス勤務の再開スケジュールはゆっくりと慎重に進められそうです(これは地下鉄利用の場合 ―― レンタル自転車のシティバイクのステーションは1ブロック先にあり、私のオフィスまで4.1マイルです)。
過去の実績を見ると、5月は57.6%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.15%、下落した月の平均下落率は4.68%、全体の平均騰落率は0.17%の下落となっています。2020年5月の上昇率は4.53%となりました(4月は12.68%と、1987年1月以降で最も高い上昇率でした)。また、6月は55.4%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.92%、下落した月の平均下落率は3.17%、全体の平均騰落率は0.76%の下落となっています。
今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、6月9日-10日、7月28日-29日、9月15日-16日、11月4日-5日(米大統領選は11月3日)、12月15日-16日、2021年1月26日-27日となっています。
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