S&P500月例レポート(20年6月配信)<2>
主なポイント
○5月も生き残りをかけた1カ月でした。新規失業保険申請件数は増加し始めた週(3月21日までの週)以降の合計が4,080万件となりました。5月の雇用統計(6月5日発表)では失業率が20%に達する見込みです。
○株式市場は4月に引き続き上昇しました。経済再開後の最初のデータが期待されていることを反映して、レンジ相場(当面は上昇)で推移しました。
→5月のS&P 500指数は4.53%上昇しました(配当込みのトータルリターンは4.76%)。過去3カ月では3.05%上昇(同3.59%上昇)、年初来では5.77%下落(同マイナス4.97%)、過去1年間では嬉しいことに10.62%上昇(同12.84%上昇)となりました。2019年5月の6.68%の下落が過去1年の期間から外れたためです。
→2016年11月8日の米大統領選当日以降の同指数の上昇率は42.29%(同プラス52.81%)、年率換算では10.43%(同プラス12.67%)となりました。
→弱気相場の中での反発局面が続き、市場は4月の上昇を織り込む動きを見せました。S&P 500指数は2020年3月23日に付けた底値から36.06%上昇しましたが、2月19日の終値での最高値を10.10%下回っています。
○米国の10年国債利回りは、4月末の0.62%から0.66%に上昇して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは4月末の1.27%から1.41%に上昇して月を終えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。
○英ポンドは4月末の1ポンド=1.2555ドルから1.2347ドルに下落し(同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは4月末の1ユーロ=1.0940ドルから1.1104ドルに上昇しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は4月末の1ドル=107.16円から107.82円に下落し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は4月末の1ドル=7.0623元から7.1373元に下落しました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。
○原油価格は(4月に一時マイナスに落ち込んだ後)4月末の1バレル=19.83ドルから反発して35.32ドルで月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、4月末の1ガロン=1.870ドルから2.049ドルに上昇して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。
○金価格は4月末の1トロイオンス=1,692.80ドルから1,743.00ドルに上昇して月を終えました(同1,520.00ドル、同1,284.70ドル、同1,305.00ドル)。
○VIX恐怖指数は4月末の34.15から27.31に低下して月を終えました。月中の最高は40.32、最低は25.92でした(同13.78、同16.12、同11.05)。
○企業業績に関しては、新型コロナウイルスの影響がどの程度続くかが注目される中、市場は企業業績が好転する時期を探るため、今年後半に関心を向け始めました。
→第1四半期の決算を見ると、時価総額で97.1%に相当する489銘柄が業績発表を終えました。第1四半期の利益予想はすでに今年スタート時点から51.2% 引き下げられていたため(半分以下になりましたが、1株を2株にする株式分割ではありません)、489銘柄中の323銘柄(66.1%という割合は過去平均をわずかに下回っています)で利益が予想を上回りました。現時点での予想は、2019年第4四半期から49.8%の減益、前年同期比では48.2%の減益です。売上高は484銘柄中290銘柄(59.9%)が予想を上回りましたが、前期比10.0%の減収が見込まれています。
→第2四半期の利益予想もすでに(2019年末時点から)46.6%下方修正され、第3四半期は32.0%、第4四半期は22.0%、さらに通年では37.4%引き下げられています。2020年の業績はほとんど重視されていない一方で、2021年の業績に対する希望はまだ失われていません(とはいえ、現時点で信頼できる数字はほとんど示されていません)。ただし、利益予想は2019年末時点から11.6%下方修正されています。
→株式数による影響は2020年第1四半期も続きましたが、株式数の減少によってEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄の割合は低下し、全銘柄のうち19.5%となりました(2019年第4四半期は20.7%、2019年第1四半期は24.9%)。企業が自社株買いを縮小(または保留)しているため、今後は前年同期比での影響は弱まる見通しです。自社株買いの縮小は、四半期ベースで発行済み株式数が減少した企業数を見ると明らかです。
○S&P 500指数構成銘柄の2020年第1四半期の配当額は四半期ベースで過去最高を記録しましたが、5月は悲惨な状況で、5銘柄が減配を決め(4月は12銘柄)、18銘柄は完全に配当支払いを停止しました(4月は12銘柄)。年初来では、155銘柄が増配、2銘柄が配当支払いを開始、19銘柄が減配、40銘柄が支払いを停止しました。年間配当額は差し引きで278億ドル減少しました。
○ビットコインは4月末の8,659ドルから上昇して9,388ドルで月を終えました。月中の最高は9,997ドル、最低は8,374ドルでした(2019年末は7,194ドル、2018年末は3,747ドル)。
○米国の新型コロナウイルス対応のための財政政策:
→第1弾:医療機関への財政支援やウイルス感染拡大防止に83億ドルを拠出。
→第1段階:2週間の疾病休暇および最長10週間の家族医療休暇の給与費用に対する税額控除。
→第2段階:労働者、中小企業、事業会社、病院や医療関連機関に対する直接支援、ならびに融資保証を提供する2.2兆ドルのプログラム。
→第3段階:(中小企業向け)給与保証プログラム(PPP)に3,100億ドルと医療機関に750億ドルを含む総額4,840億ドルの拠出。ただし、州政府および地方自治体に対する資金支援は行わない。
→第4段階:下院(民主党が支配)は3兆ドル規模の支援パッケージを可決(賛成208、反対199)しました。このパッケージには、州政府および地方自治体に対する支援(1兆ドル)、年収7万5,000ドル未満の人への現金1,200ドルの追加支給、この支給対象を子ども(扶養家族3人まで)と社会保障番号を持つ人に拡大(2,900億ドル)、失業保険給付の週600ドルの上乗せを2021年1月まで延長(2,600億ドル)が含まれます。この法案には政治的な思惑が強く反映されており、今後、上院(共和党が多数党)での討議でも政治的駆け引きが予想されます。何らかのイベント、あるいは6月5日発表の失業率の急上昇や週間新規失業保険申請件数の大幅な増加がなければ、夏期休会が近づくまで、法案は一切通過しないと思われます。米国経済の再始動も法案の行方に影響を与えるでしょう。従業員が職場に戻れば、支援の必要性は低下します。一方で、経済再開が順調に進まなければ、さらなる支援が必要となり、第3四半期の経済が打撃を受けることになるはずです。
○S&P 500指数の1年後の目標値は(相場が上昇したために)この1カ月で若干上昇し、3,228(現在値から6.02%上昇、4月末時点の目標値は3,182、3月末時点の目標値は3,237)、そしてダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)の目標値は26,871ドルとなっています(同5.86%上昇、同26,478ドル、同27,101ドル)。
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