S&P500月例レポート(20年3月配信)<4>
S&P 500指数
市場は1月と同様に順調なスタートを切りましたが、2月末には1月よりもはるかに大きく売り込まれました。S&P 500指数は1月に取引初日に最高値を更新した後、更に5回の更新があったものの、新型コロナウイルスをめぐる懸念とボラティリティが高まる中で、0.16%の小幅安で月を終えました。2月も取引初日の高値更新こそなかったものの、3営業日目(2月5日、筆者の誕生日です)には高値を更新し、その後もウイルス感染の問題が再び大きな懸念材料となるまで、さらに6回高値を更新しました(最後は2月19日の3,386.15)。しかし、同指数が7日続落して12.76%値を下げ(S&P 500指数の時価総額3兆5,800億ドルが吹き飛び、世界全体で6兆9,900億ドルの時価総額が失われました)、月末の数日間に投資家が買い向かう場面でも売りが支配的となる中、2月の下落は1月よりも大幅となりました。最終的に同指数は2月に8.41%、年初来で8.56%下落(2月19日時点では4.98%の上昇)し、高値から12.76%安で調整局面入りし、弱気相場まで半ばを超えた水準にあります。
企業業績(2019年第4四半期)をめぐるファンダメンタルズも引き続き材料とされており、利益が予想をやや上回ったほか(2020年第1四半期については現在、減益となる兆候が示されていますが、ノイズが含まれています)、売上高も2019年第4四半期に四半期として過去最高を更新する見通しです。金価格は7年ぶりの高値を付け(その後反落し、前月末から下落して月を終えています)、米国10年国債利回りは月末時点で1962年以来の低水準となる1.15%、30年国債利回りも過去最低の1.68%を付けました(これにより、住宅ローン金利は低水準に抑えられるはずです)。
2月は、新型コロナウイルスの問題がどの程度長引くか、またどの地域に波及するか(そして、その度合い)が大きな疑問として浮上しましたが、問題が長期化するほど、経済、そして最終的に株式市場への影響は大きくなります。バーで盛んに議論されたのは、ウイルス感染が発生しなかったとしも、高値更新が続く(年初来で13回)市場で若干の調整局面に入るのは妥当で予想されたものであり、さらにしばらく調整が続くだろうということでした。この通りであれば、新型コロナウイルスは他の個別イベントと同様、米国市場全体に影響を及ぼすことなく、市場はウイルス感染に関連する一部業種の問題に反応しているに過ぎないことになります。
S&P 500指数は1月末の3,225.52から8.41%下落(配当込みのトータルリターンはマイナス8.23%)して2,954.22で月を終えました。1月は0.16%の下落(同マイナス0.04%)、12月は2.86%(同プラス3.02%)の上昇で終値は3,230.78でした。年初来では8.56%下落(同マイナス8.27%)、過去3ヵ月間では5.95%下落(同マイナス5.50%)、過去1年間では6.10%上昇(同プラス8.19%)しています。
ダウ平均は1月末の2万8,256.32ドルから10.07%下落し(同マイナス9.754%)、2万5,409.36ドルで月を終えました。1月は0.99%の下落(同マイナス0.89%)12月は1.65%の上昇(同プラス1.90%)で終値は2万8,551.53ドルでした。年初来では10.96%下落(同マイナス10.55%)、過去3ヵ月間では9.42%下落(同マイナス8.88%)、過去1年間では1.95%下落(同プラス0.44%)しています。
S&P 500指数の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除した算出)は1月の0.78%(12月は0.52%)から1.23%に上昇しました。年初来では0.99%、2019年は0.85%、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比で4%減少した1月から15%増加し(営業日数調整後)、過去1年間では前年比1%減少しました。前日比で1%以上変動した日数は9日(上昇が3日、下落が6日)と、1月の3日(上昇が1日、下落が2日)から増加しました。2月は19営業日中、1月の8日(4日で2%以上、3日で3%以上変動)に対して、5日で日中の変動率が1%以上となりました。変動率が1%以上だった日数は、2019年は73日、2018年は110日、2017年は10日でした。
セクター間のリターンのばらつきは縮小し、1月に6セクターが上昇、12月に10セクターが上昇したのに対して、2月は11セクター全てが下落しました。パフォーマンスが最高のセクター(コミュニケーション・サービス、6.34%下落)と最低のセクター(エネルギー、15.27%下落)の騰落率の差は、1月に12月の7.46%から17.79%に急拡大したのち、2月に7.93%に縮小しました(1年平均は9.15%)。騰落率の差は年初来では20.90%、2019年は40.41%となっています。2月は19日までは市場全体が上昇基調となり、全11セクターが値を上げ、S&P 500指数は4.98%上昇しましたが、同日の最高値更新を境に上昇基調は途絶え、S&P 500指数は12.76%下落し、市場は公式の調整局面入りしました。
2月は6.34%の下落で、コミュニケーション・サービスの下落率が最も小さくなりました。同セクターは年初来では5.72%下落しています。不動産も6.54%の下落で大半のセクターよりも下落率が抑えられました。同セクターは年初来では5.25%下落しています。消費関連セクターは総じてパフォーマンスが下位に沈み、一般消費財が7.69%の下落(年初来では7.15%の下落)、生活必需品は8.18%の下落(同8.00%の下落)となりました。
原油価格が1バレル当たり45ドルを割り込む中、エネルギーセクターが15.27%下落でパフォーマンス最下位となりました。同セクターは年初来で24.74%下落、2016年11月の米大統領選以降では32.71%下落(S&P 500指数は38.08%上昇)と、騰落率が唯一マイナスとなっています。金利が急低下する中、金融も11.34%下落でパフォーマンスが落ち込み、年初来では13.82%下落しました。情報技術は7.45%下落し、年初来でも3.84%の下落となりましたが、依然としてS&P 500指数のセクターの中でパフォーマンストップとなっています(下落しているものの)。ヘルスケアは6.79%下落しましたが、新型コロナウイルスの解決策と関連性があるとみなされる一部銘柄では下落幅が限定されたようです。同セクターは年初来で9.47%下落しています。
個別銘柄の騰落状況をみると、極めて弱気な状態が続き、投資家にとって避難場所はありませんでした。2月の値上がり銘柄数は26銘柄にとどまり(平均上昇率は5.69%)、1月の208銘柄(同5.50%)と、上昇の裾野が広がった12月の353銘柄(同4.86%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄も4銘柄(同18.59%)と、1月の24銘柄(同13.34%)から減少し、1銘柄が25%以上上昇しました(1月も1銘柄)。
一方、値下がり銘柄数は479銘柄(平均下落率は10.18%)と、1月の297銘柄(同7.01%)、12月の151銘柄(同2.48%)から増加しました。10%以上下落した銘柄も223銘柄(同14.56%)と、1月の79名柄(同13.87%)から増加しました。
年初来では、65銘柄が上昇し(平均上昇率は4.38%)、そのうち10銘柄(同14.66%)が10%以上上昇した一方、440銘柄(平均下落率は13.24%)が下落し、そのうち266銘柄が10%以上(同18.47%)、38銘柄(同31.35%)が25%以上下落しました。過去3ヵ月間では、87銘柄(平均上昇率は5.84%、1月末時点は336銘柄)が上昇し、そのうち17銘柄(同15.12%、同114銘柄)が10%以上上昇した一方、418(平均下落率は11.82%、同169銘柄)が下落し、そのうち223銘柄(同17.68%、同36銘柄)が10%以上、22銘柄(同30.17%)が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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