アンジェス Research Memo(1):HGF遺伝子治療用製品は国内で販売開始、米国でも臨床試験を開始する

配信元:フィスコ
投稿:2019/12/27 15:21
■要約

アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発の創薬ベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、将来的に「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目標にしている。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況等によって得られるマイルストーン収益、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。

1. HGF遺伝子治療用製品の状況について
主力パイプラインであるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」は、2019年3月に「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能として、厚生労働省から条件及び期限付製造販売承認を取得し、同年9月より提携先である田辺三菱製薬<4508>を通じて販売を開始した。今後5年内に120例の評価を行い、同結果を見て本承認の取得を目指す。また、国内で慢性動脈閉塞症の「安静時疼痛」の改善を確認する第3相臨床試験を開始し(予定症例数約40例、試験期間約2年間)、対象患者を拡大していく方針だ。米国でも同年11月に下肢切断リスクの低い閉塞性動脈硬化症患者を対象に、「潰瘍の改善」を主要評価項目とする第2b相臨床試験を開始することを発表している(予定症例数約60例)。

2. その他の開発パイプラインの動向
その他のパイプラインの進捗状況について見ると、米国で進めている椎間板性腰痛症を含む腰痛疾患を適応症としたNF−κBデコイオリゴの第1b相臨床試験は、当初の計画より若干の遅れがあるものの問題なく患者登録が進んでいる。また、オーストラリアで進めている高血圧DNAワクチンの第1/2相臨床試験は計画どおりに患者登録が進んでおり、いずれも終了見込みは2020年以降で、POCが取得されればライセンスアウト交渉を開始する予定にしている。なお、戦略的提携を結んでいた米Vicalが2019年8月に米Brickell Biotechに吸収合併されたが、今後も提携関係は継続していく方針となっている。

3. 業績動向
2019年12月期第3四半期累計(2019年1月−9月)の事業収益は前年同期比17.2%増の323百万円、営業損失は2,358百万円(前年同期は2,242百万円の損失)となった。ムコ多糖症6型治療薬「ナグラザイム®」の販売終了に伴い商品売上高が前年同期比38.5%減の170百万円となったものの、「コラテジェン®」の国内での条件及び期限付製造販売承認によるマイルストーン収入150百万円を第3四半期に計上し、増収要因となった。費用面では、研究開発費が前年同期比62百万円減少したが、販管費が同276百万円増加し営業損失の拡大要因となった。

2019年12月期の業績は、事業収益で前期比45.1%減の335百万円、営業損失で3,300百万円(前期は3,065百万円の損失)と期初計画(事業収益335百万円、営業損失2,800百万円)から修正した。国内での「コラテジェン®」の適応拡大に向けた第3相臨床試験の開始、及び米国での臨床試験準備費用等の増加が要因となっている。2020年12月期についてもこれら臨床試験の開始によって研究開発費は増加する見込みだ。

4. 財務状況
2019年12月期第3四半期末の現金及び預金は第33回新株予約権の行使完了により、前期末比4,987百万円増加の10,772百万円となっている。今後の研究開発費用や開発パイプラインの拡充に向けた資金として活用していく方針で、今後2〜3年程度の事業資金は確保されている。

■Key Points
・HGF遺伝子治療用製品は国内で2019年9月より販売を開始、米国でも臨床試験の開始を発表
・長期間の薬効が期待される高血圧DNAワクチンは、第1/2相臨床試験が順調に進捗、潜在市場規模が大きく注目度も高い
・新株予約権の行使により調達した資金で、開発パイプラインの拡充に取り組む

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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