■中長期の成長戦略
2. 海外事業による成長戦略
昭栄薬品<3537>は海外に2つの子会社を有している。中国・上海にある昭栄祥(上海)貿易有限公司と、タイにあるSHOEI TRADING (THAILAND) CO., LTD.の2社だ。同社は国内化学品事業で収益のベースを確保し、そこに海外2社における収益を上乗せする形で化学品事業全体ひいては同社全体の成長を実現することを目指している。
同社の中国とタイの子会社はそれぞれ、現地のローカル企業や日系企業を取引相手に、様々な取引を行っている。
(1) 中国における海外事業の状況
昭栄祥(上海)の現在の中心事業は、現地の日系企業に対して現地のローカル企業で調達した化学品を販売するというものだ。しかしながらこれは、それだけにとどまるものではなく、実はその先の取引拡大に向けた取っ掛かりという位置付けだ。同社の次のステップは「外-外」の取引で開拓した現地のローカル企業の化学製品を日本やタイに輸出することであり、これが当面のメインのターゲットと言える。さらにその先には、それら現地ローカル企業に対する日本の化学製品の輸出ビジネスの拡大が想定されている。
これらは必ずしも段階を追って順番に開始されるというわけではなく、現時点でも中国企業の化学品を日本国内の事業者向けに輸出することが行われている。具体的には新型殺菌剤IPMP(イソプロピルメチルフェノール)や漂白剤・除菌剤の主成分として使用される過炭酸ナトリウムなどを中国から日本に輸出している。海外商材の強化・拡販は同社の最重要取組事項であり、新商材の開拓も含めて、海外取引をさらに加速させる方針だ。
(2) タイにおける海外事業の状況
タイの子会社(SHOEI TRADING)では、現在、日本からタイへの輸入化学品を販売することが大きな比重を占めている。タイでは、日系自動車メーカーとその周辺を固める自動車部品メーカーの集積が進んでいる。そうした日系企業の現地工場に対して、同社は洗浄剤用途の化学品を日本から輸出して供給している。
タイ子会社はまた、中国の子会社同様、タイの現地企業に対する化学品の販売拡大にも取り組んでいる。日本からの輸入品、中国子会社を通じた中国国内での調達品及びタイ国内での現地調達品をタイの現地企業に販売するというものだ。
(3) 海外取引から期待される効果
前述のように、同社は中期成長戦略の数値目標として、海外売上高を早期に25~30億円程度(連結売上高の10%超)にすることを掲げており、現在はそれに向けてまさに取り組んでいる状況だ。
弊社では、海外事業の拡大の業績インパクトとして、もう1つ注目していることがある。それは、利益率の改善だ。国内品主体の事業だけでは利益率の改善は難しい。
そこで、海外品を取り扱うのであるが、海外品はQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)の面でバラツキがある。同社では、そこをしっかりと見極め取り扱っている。国内品に比べ、供給時に注意が必要となる。そのリスクを背負う分、生産メーカーと近い立場でビジネスを展開することで利益率の改善につなげている。同社の海外事業拡大が今後のカギになると弊社では考えている。
足元では、化学品売上高の約6%が輸入化学品となっているもようだ。同社自身、この比率を徐々に引き上げ、収益性の改善につなげていくことを目指すとしており、今後の進捗が注目される。
特化型商社としての強みを生かした市場の深堀りと、新規事業としての環境関連ビジネスにも成長エンジンとしての期待が高まる
3. その他の中長期成長への取り組み
同社は化学品事業の中の海外事業の拡充を成長戦略の核としているが、それ以外にも様々な成長への取り組みを行っている。
日用品事業や土木建設資材事業では、新規アイテム、新商品の開発・拡販に取り組んでいる。同社の強み・価値の源泉は、特定分野(オレオケミカルチェーン)に特化した事業展開で蓄積してきた知見と情報量だ。それを生かした、かつ、市場(消費者)ニーズに見合った新商品・新アイテムの開発を行い、市場の深堀を進める方針だ。
今後拡大が期待される領域として環境関連ビジネスがある。これまで同社の環境関連事業は、土木建設資材事業における汚染土壌改良工事のための薬液の供給がその中身だった。しかし同社が日常的にコンタクトしている化学業界では、しばしば水処理や悪臭対策について問題に直面する。それに対して同社は、商社としての豊富な情報量を生かして水処理装置や脱臭装置の取扱いを行っている。近年はこれらの需要が増加しつつあり、同社は今後、積極的な営業展開を行い拡販につなげていく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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2. 海外事業による成長戦略
昭栄薬品<3537>は海外に2つの子会社を有している。中国・上海にある昭栄祥(上海)貿易有限公司と、タイにあるSHOEI TRADING (THAILAND) CO., LTD.の2社だ。同社は国内化学品事業で収益のベースを確保し、そこに海外2社における収益を上乗せする形で化学品事業全体ひいては同社全体の成長を実現することを目指している。
同社の中国とタイの子会社はそれぞれ、現地のローカル企業や日系企業を取引相手に、様々な取引を行っている。
(1) 中国における海外事業の状況
昭栄祥(上海)の現在の中心事業は、現地の日系企業に対して現地のローカル企業で調達した化学品を販売するというものだ。しかしながらこれは、それだけにとどまるものではなく、実はその先の取引拡大に向けた取っ掛かりという位置付けだ。同社の次のステップは「外-外」の取引で開拓した現地のローカル企業の化学製品を日本やタイに輸出することであり、これが当面のメインのターゲットと言える。さらにその先には、それら現地ローカル企業に対する日本の化学製品の輸出ビジネスの拡大が想定されている。
これらは必ずしも段階を追って順番に開始されるというわけではなく、現時点でも中国企業の化学品を日本国内の事業者向けに輸出することが行われている。具体的には新型殺菌剤IPMP(イソプロピルメチルフェノール)や漂白剤・除菌剤の主成分として使用される過炭酸ナトリウムなどを中国から日本に輸出している。海外商材の強化・拡販は同社の最重要取組事項であり、新商材の開拓も含めて、海外取引をさらに加速させる方針だ。
(2) タイにおける海外事業の状況
タイの子会社(SHOEI TRADING)では、現在、日本からタイへの輸入化学品を販売することが大きな比重を占めている。タイでは、日系自動車メーカーとその周辺を固める自動車部品メーカーの集積が進んでいる。そうした日系企業の現地工場に対して、同社は洗浄剤用途の化学品を日本から輸出して供給している。
タイ子会社はまた、中国の子会社同様、タイの現地企業に対する化学品の販売拡大にも取り組んでいる。日本からの輸入品、中国子会社を通じた中国国内での調達品及びタイ国内での現地調達品をタイの現地企業に販売するというものだ。
(3) 海外取引から期待される効果
前述のように、同社は中期成長戦略の数値目標として、海外売上高を早期に25~30億円程度(連結売上高の10%超)にすることを掲げており、現在はそれに向けてまさに取り組んでいる状況だ。
弊社では、海外事業の拡大の業績インパクトとして、もう1つ注目していることがある。それは、利益率の改善だ。国内品主体の事業だけでは利益率の改善は難しい。
そこで、海外品を取り扱うのであるが、海外品はQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)の面でバラツキがある。同社では、そこをしっかりと見極め取り扱っている。国内品に比べ、供給時に注意が必要となる。そのリスクを背負う分、生産メーカーと近い立場でビジネスを展開することで利益率の改善につなげている。同社の海外事業拡大が今後のカギになると弊社では考えている。
足元では、化学品売上高の約6%が輸入化学品となっているもようだ。同社自身、この比率を徐々に引き上げ、収益性の改善につなげていくことを目指すとしており、今後の進捗が注目される。
特化型商社としての強みを生かした市場の深堀りと、新規事業としての環境関連ビジネスにも成長エンジンとしての期待が高まる
3. その他の中長期成長への取り組み
同社は化学品事業の中の海外事業の拡充を成長戦略の核としているが、それ以外にも様々な成長への取り組みを行っている。
日用品事業や土木建設資材事業では、新規アイテム、新商品の開発・拡販に取り組んでいる。同社の強み・価値の源泉は、特定分野(オレオケミカルチェーン)に特化した事業展開で蓄積してきた知見と情報量だ。それを生かした、かつ、市場(消費者)ニーズに見合った新商品・新アイテムの開発を行い、市場の深堀を進める方針だ。
今後拡大が期待される領域として環境関連ビジネスがある。これまで同社の環境関連事業は、土木建設資材事業における汚染土壌改良工事のための薬液の供給がその中身だった。しかし同社が日常的にコンタクトしている化学業界では、しばしば水処理や悪臭対策について問題に直面する。それに対して同社は、商社としての豊富な情報量を生かして水処理装置や脱臭装置の取扱いを行っている。近年はこれらの需要が増加しつつあり、同社は今後、積極的な営業展開を行い拡販につなげていく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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