■ワコム<6727>の中長期成長戦略の進捗状況
4. 『Extreme Focus』の取り組みと進捗
Extreme Focus(大胆な選択と集中)の意味について解説は不要だろう。ポイントは、テクノロジー・リーダーシップの推進に沿っているかという視点と、顧客との関係深化につながるかという視点の2つを基準として経営資源の投入の可否判断を行い、大胆な選択と集中を進めていくとしている点だ。
2019年3月期においては、引き続き技術・製品開発のロードマップについてアップデートを進めた。前述のようにブランド製品事業においてはペンタブレット製品の中低価格帯モデルの市場浸透が遅れる等の要因から収益が計画を下回った。こうした失敗例について背景や要因を子細に分析し、マーケットの実情に応じたロードマップへと見直す作業をダイナミックに進めている(状況変化に応じた動的な対応)。前述のディスプレイ製品におけるエントリーモデルの投入はこうした作業からの1つの成果といえよう。
販管費の最適化もまた重要な取り組み事項の1つだが、ここでも明確な進捗があった。前述のようにテクノロジー・リーダーシップの推進に不可欠な研究開発費について前期並みを維持した一方、販管費総額では前期比7%削減し、売上高販管費比率を5期ぶりに30%以下の水準に引き下げることに成功した。売上高販管費率については当面のゴールを27%前後に設定しているため、2019年3月期の29.4%という値はまだ道半ばと言えるが、着実に進捗していると評価して良いであろう。
取締役会の十分な議論を経て経営判断を行う体制が狙い通りに機能。さらなる強化に向けて改善を継続
5. 経営の質向上の取り組みと進捗
同社は『Wacom Chapter 2』における重要取り組み事項の一つに、『取締役会改編による経営の質向上』を掲げている。井出社長は2018年4月の就任後、取締役会の改革に着手し、2018年6月の株主総会を経て取締役会を8名(うち4名が社外取締役)体制とした。
井出社長はガバナンスのありかたについて、個人に依存するのではなく、取締役会の十分な議論を経て経営判断を行う体制が不可欠という考えを表明している。“テクノロジーカンパニー”である同社において質の高い戦略議論を行うためには、各取締役が技術的なものも含めて多面的で深い見識を有することが重要となってくる。現在の取締役会メンバーは社外取締役4名のうち弁護士出身者を除く3名はシステム開発やソフトウェア開発などの領域でのマネジメント経験を有していることから、井出社長が目指す質の高い議論を実現してきたとみられる。
同社は2019年6月の株主総会に諮る新たな取締役(新任監査等委員である取締役)候補者に細窪 政(ほそくぼ おさむ)氏を選任した。細窪氏は日本の信託銀行からキャリアをスタートしたのち投資・資産運用業界に転じ、投資会社の経営に長く携わってきた。現在は自身でコンサルティング会社を経営するほか、複数の企業の社外取締役を務めている。金融・投資業界を初め、様々な業種に精通した細窪氏の就任で取締役会の一段の活性化が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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4. 『Extreme Focus』の取り組みと進捗
Extreme Focus(大胆な選択と集中)の意味について解説は不要だろう。ポイントは、テクノロジー・リーダーシップの推進に沿っているかという視点と、顧客との関係深化につながるかという視点の2つを基準として経営資源の投入の可否判断を行い、大胆な選択と集中を進めていくとしている点だ。
2019年3月期においては、引き続き技術・製品開発のロードマップについてアップデートを進めた。前述のようにブランド製品事業においてはペンタブレット製品の中低価格帯モデルの市場浸透が遅れる等の要因から収益が計画を下回った。こうした失敗例について背景や要因を子細に分析し、マーケットの実情に応じたロードマップへと見直す作業をダイナミックに進めている(状況変化に応じた動的な対応)。前述のディスプレイ製品におけるエントリーモデルの投入はこうした作業からの1つの成果といえよう。
販管費の最適化もまた重要な取り組み事項の1つだが、ここでも明確な進捗があった。前述のようにテクノロジー・リーダーシップの推進に不可欠な研究開発費について前期並みを維持した一方、販管費総額では前期比7%削減し、売上高販管費比率を5期ぶりに30%以下の水準に引き下げることに成功した。売上高販管費率については当面のゴールを27%前後に設定しているため、2019年3月期の29.4%という値はまだ道半ばと言えるが、着実に進捗していると評価して良いであろう。
取締役会の十分な議論を経て経営判断を行う体制が狙い通りに機能。さらなる強化に向けて改善を継続
5. 経営の質向上の取り組みと進捗
同社は『Wacom Chapter 2』における重要取り組み事項の一つに、『取締役会改編による経営の質向上』を掲げている。井出社長は2018年4月の就任後、取締役会の改革に着手し、2018年6月の株主総会を経て取締役会を8名(うち4名が社外取締役)体制とした。
井出社長はガバナンスのありかたについて、個人に依存するのではなく、取締役会の十分な議論を経て経営判断を行う体制が不可欠という考えを表明している。“テクノロジーカンパニー”である同社において質の高い戦略議論を行うためには、各取締役が技術的なものも含めて多面的で深い見識を有することが重要となってくる。現在の取締役会メンバーは社外取締役4名のうち弁護士出身者を除く3名はシステム開発やソフトウェア開発などの領域でのマネジメント経験を有していることから、井出社長が目指す質の高い議論を実現してきたとみられる。
同社は2019年6月の株主総会に諮る新たな取締役(新任監査等委員である取締役)候補者に細窪 政(ほそくぼ おさむ)氏を選任した。細窪氏は日本の信託銀行からキャリアをスタートしたのち投資・資産運用業界に転じ、投資会社の経営に長く携わってきた。現在は自身でコンサルティング会社を経営するほか、複数の企業の社外取締役を務めている。金融・投資業界を初め、様々な業種に精通した細窪氏の就任で取締役会の一段の活性化が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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