プロスペクト Research Memo(4):2019年3月期は子会社の評価損計上で大幅営業損失だが現金の流出は少ない

配信元:フィスコ
投稿:2019/06/03 15:04
■業績動向

● 2019年3月期の業績概要(実績)
(1) 損益状況
プロスペクト<3528>の2019年3月期業績の連結業績は、売上高4,937百万円(前期比57.8%減)、営業損失8,041百万円(前期は1,543百万円の損失)、経常損失8,167百万円(同1,098百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失9,833百万円(同1,483百万円の利益)となった。

大幅な営業損失となった最大の理由は、2017年7月に子会社化したTPJFが株式市場の下落により大幅な評価損(2017年12月末と2018年12月末の比較)を計上し、それらが連結決算としてマイナスの売上高さらに営業損失として計上されたことによる。それ以外にも、抱えている様々な含み損等の整理を進めるためいくつかの評価損、減損損失、貸倒引当金の積増しなどを計上したことにより、当期純損益はさらに大幅な損失となった。しかしこれらの損失の多くは現金の流出を伴う損失ではなく、あくまで評価損(非現金性)なので手元資金への影響は少なかった。またアセットマネジメント事業以外の各事業セグメントはおおむね計画どおり推移した。ただし、配当は無配となった。

(2) セグメント別状況
(a) マンション分譲
2019年3月期においては、111戸を竣工(前期120戸)し、103戸(同115戸)、4,271百万円(同4,379百万円)の新規契約を行い96戸(同137戸)を引渡した。その結果、売上高は3,829百万円、セグメント利益は321百万円となった。

(b) 土地建物
2019年3月期には、マンション1棟(全37戸、総専有面積1,508.01m²)1,950百万円の契約を行ったが販売実績はなかった。(前期は契約実績及び販売実績はなし)。

(c) 注文住宅
山形県を主な事業エリアとして、戸建住宅の建築請負やリフォーム工事等を行っているが、2019年3月期においては、78棟、2,104百万円の新規契約(前期は58棟、1,659百万円)を行い、58棟(同40棟)を引渡し、売上高は2,098百万円、セグメント利益69百万円を計上した。

(d) アセットマネジメント
日本株式の運用及び調査業務、不動産投資助言代理業務及び不動産投資を行う事業で、2019年3月期は、株式市場の下落により保有有価証券に評価損が発生、その結果、売上高は-7,273百万円、セグメント損失は7,543万円を計上した(前期は158百万円の売上高、122百万円のセグメント損失)。ただし、あくまで評価損であり現金の流出を伴う損失ではない。

(e) 建設事業
推進工事及びプレストレスト・コンクリート(PC)工事等を行う事業で、2019年3月期は、売上高は6,226百万円、セグメント利益は327百万円を計上した。なお、この事業を行う機動建設工業株式会社の全株式を2019年3月に売却したため、2020年3月期からは当該事業セグメントは廃止される。当該株式の譲渡に伴う売却益49百万円を特別利益に計上している。

(f) 再生可能エネルギー事業
自社で運営する太陽光発電設備で発電した電気を電力会社に販売する事業で、売上高は569百万円、セグメント利益は65百万円を計上した。

2019年3月末の稼動数は7ヶ所(朝来PJ、香取PJ、牛久PJ、熊本八代PJ、陸前高田PJ、仙台PJ、宇都宮徳次郎PJ)となり、同社持分の発電量は20.5MWとなった。また2020年3月期中に新たに2ヶ所(山武南J、成田神崎PJ)が建設中で、今後完成次第順次稼動を開始する予定だ。

(g) その他
同社が所有しているマンション等を一般顧客向けに賃貸する事業が主で、売上高45百万円、セグメント利益16百万円を計上した。

(3) 評価損、減損損失などについて
今回の決算は各種評価損等によって大幅損失となったが、その主なものは以下のようであった。またこれらの損失の多くは非現金性である点は留意すべきだ。

(a) 子会社TPJFが保有する日本株式の評価損(TPJFの決算期の関係で2018年12月末の評価):約72億円、マイナスの売上高として計上(非現金性)
(b) 同社株価の下落に伴い子会社が保有する同社の新株予約権評価損:約9億円、特別損失(非現金性)
(c) 海外プロジェクトへの貸付金に対する貸倒引当金の積増し:第3四半期までに約50%を引き当てていたが、通年で100%引当てた。約6.6億円と営業外費用として計上(非現金性)
(d) 海外でのM&A事業で「正ののれん」を積んでいたものを全額減損処理:約7億円を特別損失に計上した(非現金性)

(4) 財務状況
大幅な損失を計上したことから、財務状況はやや悪化しているが懸念される水準ではない。2019年3月期末の資産合計は30,780百万円となり、前期末に比べ9,760百万円減少した。流動資産は16,784百万円となり同10,868百万円減少したが、主な要因は現金及び預金の減少5,631百万円、有価証券の減少3,659百万円などによる。一方で固定資産は13,996百万円となり、同1,107百万円増加したが、有形固定資産の増加2,201百万円、無形固定資産の減少695百万円、投資その他の資産の減少398百万円による。

負債合計は15,030百万円となり、前期末に比べ292百万円減少した。主な要因は、支払手形及び買掛金の減少966百万円、工事未払金の減少742百万円、短期借入金等の減少458百万円、長期借入金の増加3,259百万円などによる。純資産合計は15,750百万円となり、同9,468百万円減少となったが、主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が7,296百万円のマイナス(前期末比9,833百万円減)となったことによる。

(5) キャッシュ・フローの状況
2019年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは4,523百万円の支出であったが、主な支出は税金等調整前当期純損失の計上9,604百万円、出資運用益470百万円、売上債権の増加413万円など、一方で主な収入は減価償却費336百万円、減損損失729百万円、自己新株予約権評価損895百万円、棚卸資産の減少661百万円、営業投資有価証券の減少3,360百万円など。

投資活動によるキャッシュ・フローは2,634百万円の支出であったが、主な支出は有形固定資産の取得4,390百万円などで、主な収入は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入764百万円、出資金の回収による収入1,251百万円などであった。

財務活動によるキャッシュ・フローは1,624百万円の収入であったが、主な収入は長短借入金の増加2,870百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入546百万円などで、一方で主な支出は配当金の支払い1,723百万円など。この結果、期間中の現金及び現金同等物は5,601百万円の減少となり、期末の現金及び現金同等物の残高は5,049百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)


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