[資源・新興国通貨5/13-17の展望]トルコ中銀がリラ下支えに動く
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は5月9日、1週間物レポ入札を中止し、ROM(準備選択メカニズム)の外為ファシリティーの上限を40%から30%に引き下げると発表。トルコリラの下支えに動きました。
1週間物レポ金利(現在24.00%)を用いた資金供給が中止されることによって、市中銀行はより金利水準の高い翌日物貸出金利(25.50%)を利用して資金調達を行う必要があり、事実上の利上げと見なすことができます。
外為ファシリティーの上限が引き下げられることによって、市場からトルコリラが吸収される一方、外貨が市場に供給されます。TCMBによると、この措置によって72億トルコリラが吸収され、28億米ドルが供給されるとのことです。
1週間物レポ入札の中止や外為ファシリティーの上限引き下げによって、トルコリラはいったん下げ止まるかもしれません。ただ、米国とトルコの関係悪化やTCMBの外貨準備高減少への懸念、イスタンブール市長選の再選挙(6/23実施)など、足もとのトルコリラ安の背景となっている材料は残存しています。それらが残存する限り、トルコリラはいずれ下落する可能性があります。
豪ドル
RBA(豪中銀)は5月7日、政策金利を過去最低の1.50%に据え置きました。声明では、「経済には依然として余剰生産能力があり、インフレが目標と一致するには労働市場のさらなる改善が必要」との認識が示されました。
RBAは利下げが適切になる条件として、これまで「インフレ率が低水準にとどまり、失業率が上昇を続けるなら」としていました。利下げの条件は“失業率が悪化すれば”から“失業率が改善しなければ”へと変化したため、利下げのハードルは下がったと言えそうです。
豪州の4月雇用統計が5月16日に発表されます。失業率が3月の5.0%から悪化した場合、市場ではRBAの早期利下げ観測が高まり、豪ドルに対して下落圧力が加わる可能性があります。
米中貿易協議の結果も豪ドルに影響を与えそうです。両国の貿易摩擦の激化は、豪ドルにとってマイナス材料です。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は5月8日、0.25%の利下げを決定。政策金利を1.75%から過去最低の1.50%へと引き下げました。利下げは2016年11月以来です。
RBNZはまた、四半期に一度の金融政策報告を公表。OCR(政策金利)は2020年1-3月期に1.4%へ低下した後、2021年7-9月期から上昇に転じるとの見方を示しました。政策金利は今回の利下げによって1.50%になったため、RBNZは来年にかけてさらに1回の利下げを想定していると見なすことができそうです。市場では利下げ観測が今後も残るとみられます。
豪ドルと同様、米中貿易協議の結果がNZドルに影響を与えそうです。両国の貿易摩擦の激化は、NZドルにとってマイナス材料です。
カナダドル
ポロズBOC(カナダ中銀)総裁は5月1日、「カナダ経済がさらされている逆風が後退すれば、政策金利は上昇する」と述べ、「現在の政策金利は依然として低い」と語りました。BOCは4月24日の会合で利上げバイアスを撤回し、政策金利を当面据え置くことを示唆しました。ただ、ポロズ総裁は“次の政策変更は、利上げの可能性の方が高い”と考えているようです。
カナダの4月雇用統計が5月10日、4月CPI(消費者物価指数)が15日に発表されます。それらが堅調な結果になったとしても、BOCがただちに利上げに動くことはなさそうですが、市場では“BOCの次の一手は利上げ”との見方が高まる可能性があります。その場合、カナダドルの上昇要因となり得ます。
カナダドルについては、 原油価格の動向にも目を向ける必要があります。米WTI先物は足もと1バレル=60米ドル台前半で上下動を繰り返し、方向感を失いつつあります。原油価格に方向感が生まれた場合、カナダドルに影響を与える可能性があります。原油高はカナダドルにとってプラス材料です。
南アフリカランド
南アフリカの総選挙が5月8日に行われました。開票率約70%(日本時間10日午前7時頃)の時点で、得票率は与党ANC(アフリカ民族会議)が約57%、野党第1党のDA(民主同盟)が約23%、第2党のEFF(経済的解放の闘士)が約10%となっています。ANCの議席は前回の249から減少するものの、過半数(201議席)は維持するとみられます。選挙の公式結果は11日にも発表される見込みです。
ANCが余裕をもって過半数を維持すれば、政治の先行き不透明感が払しょくされそうです。その場合、南アフリカランドにとってプラス材料と考えられます。
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